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「以長物忌の事」(『宇治拾遺物語』)は、以長が物忌を理由を出仕をことわったら、その上司の左大臣殿に「物忌みなんて関係ねえダロが、さっさと出勤せえ」と言われたので、今度は左大臣殿の物忌みの時に、無理矢理門を破って出勤し
「されば物忌と云ふ事は候はぬと知りて候ふなり」
とか言ったので、感心した左大臣は処罰しなかった、という話である。
不思議なのは、左大臣も以長も物忌の禁忌を破ることをどこまで怖れていたのであろうか、ということである。こんなことは現代でもある。
大学生が正月に全く卒論をすすめてきてないので、「正月みたいな土人の習俗より卒論だボケッ」と指導教官がしかり飛ばしたところ、その指導教官が「クリスマスイブだから休講にします。世界を平和に」とか言ったときに、学生が勝手に教室に来て「教授が授業サボってます問題だプンプン」と事務に怒鳴り込むみたいな話であろう。違うか……
だいたい、人の揚げ足をとることなど、比較的簡単なのである。それに、物忌とか正月とかクリスマスなんかにかこつけて、本当の欲望や問題から逃走するというのが我々なのではないのか。だから、物忌にどれだけの威力が本当に感じられていたのかが問題だと思うのであった。
いずれにせよ、こういうエリートどもの才気争いより、多くの人々が「さあ今日は物忌だ」とある種うきうきしてのかもしれないことの方にわたくしの興味はある。甘いのかもしれない。