今かく、 すこし人数にもなりはべるにつけて、 はかばかしからぬ者どもの、かたがたにつけてさまよひはべるを、かたくなしく、見苦しと見はべるにつけても
昔の頭中将もいまは立派になってしまい、その結果「あなたの子です」と名乗り出てくる者も多かったらしい。あまりにでてくるので、頭中将はなんだこりゃと見苦しく思うのであった。――しかしながら、その見苦しいの子どもの顔は、お前の顔にそっくりなんだよボケッ
またさるさまにて、数々に連ねては、あはれに思うたまへらるる
確かに、気をつけ前へならえっ、と並んでみると子どももなかなかかわいく見えることがあるようだ。桃太郎が「海の神兵」で動物たちに命令を下しているときの気持ちの如くか。しかしこのような状況でも気になるのは夕顔と自分の子どものことが、
まづなむ思ひたまへ出でらるる
だそうである。嘘をつけ。いま、源氏に玉鬘は夕顔と君の娘だと言われたからいってみただけであろうが……。
星一徹のいわゆる「男一匹、安っぽく狂うな」という感じである。
とのたまふついでに、かのいにしへの雨夜の物語に、いろいろなりし御睦言の定めを思し出でて、泣きみ笑ひみ、皆うち乱れたまひぬ。
語り手はよく分かっていて、直ぐさま品定めのことを懐かしがる頭中将に対して「とのたまふついでに」とアイロニカルである。
とまれ、最近は確かに安っぽく狂う奴が多すぎる。安っぽいもんだから、周りも傷ついたり寄り添ったり気持ちを込めたり出来るわけである。
「失敬なことを言うな。うちにいる時は裸だけど、外に出る時にゃちゃんと三角の紙の着物を着て行くんだ。第一貴様の名前が生意気だ。キャラメルなんて高慢チキな面をしやがって、日本にいるのならもっと日本らしい名前をつけろ」
「こん畜生、横着な事を言う。キャラメルが悪けりゃあカステイラは西班牙の言葉だぞ。シュークリームでもワッフルでも良いが、菓子にはみんな西洋の名前が付いているんだ。あめだのせんべいなぞ言うのはみんな安っぽい美味くないお菓子ばかりだ」
――夢野久作「キャラメルと飴玉」
考えてみると、みんなが安っぽくなったのは、自らの値段のことを横目でちらちら気にしているからではないだろうか。成金がする品定めほど嫌らしいものはない。源氏も頭中将もお金持ちだったのがイケナイ。