
――そう、まあ知り合いですね。……江戸川の立派なお邸のお嬢さんだよ、お父さんは男爵でね。電話をかけましょう。――君は不良少女なぞと云ったことを、勿論みんなの前でお詫びする気でしょうね。」
井深君は、この少女の身元を証明するために本物の恋人の兄のところへ電話をかけよう、そしてあとで訳を云ってあやまればいいと思ったのである。井深君はこの思いつきに嬉しくなって水兵服の少女の方をみた。しかし、少女は井深君と顔を合せることを恐れでもしているように、部屋の隅っこの方へ体を向けて顔をふせていた。
――渡辺温「少女」
最近の学生はテレビを見ないという都市伝説があるが、すごく見てる奴も当然居るので注意が必要である。のみならず、――出勤前に朝顔の植えているあたりから「今日は見ないの?」という空耳が聞こえるようになってからが人生の本番だと思っている。
若者じみて、聖悠紀の『ファルコン50』読んだが、けっこうよかった。しかし、この漫画を夢中に読んでいた者はたぶんいま還暦ぐらいではなかろうか。
宮台真司氏も退職したが、一方のヒーローであった大澤真幸氏の「世界史の哲学」を少し読んでみると、案外文体が今時で、――文体から言ってもはやく生まれた東浩紀氏みたいなところがあると思った。そういえばむかし予備校や塾で働いていたときに大澤真幸のファンが結構いた。案外東氏も大澤氏も、そういえば内田樹氏も入試問題に使われることがおおい。彼らの文体は、もう少しのところで粘らない。試験時間を守るという感じがする。
それは試験時間を守っているのではないが、働き方改革が大事な話し合いを打ち切る手段になっている場合がどうせある。アレントじゃないが労働にも短縮すりゃいいものばかりじゃなくいろいろあるのだ。