1970年初版 大島かおり/訳
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
家族の問題は大なり小なりみんな共通してあるよね
母の死で終わるんじゃなくて、そこから家族関係を見直して
1人1人が自立していく過程に見ごたえがある物語
【内容抜粋メモ】
登場人物
マリアンネ・ハルトマン
クリスチアン 長兄 工場勤め
ベアート 次兄 教師になるために勉強している
ヒルデ 女中
ヨーゼフ 下男
祖父 母エルゼの父 元教師
エメネガー ウァルデック農場を乗っ取ろうと画策している
ペーター 息子
ハルダー先生 園芸学校の校長 恩師
マリアンネは16歳で園芸学校に入り、1年間過ごしたが
父から電話があり、母の具合が悪いから
すぐウァルデックに帰って来いと言われる
2年前と同様、手術になるかもしれない
母は慣れない農家の厳しい生活で体を壊して長い
父はストレスからアルコール依存症になっている
マリアンネ:ハルダー先生、私怖いんです 母が死ぬようなことになったら・・・
ハルダー先生
(若い人はぐずぐずしないものだ
心は重くても、一段おきにのぼっていく 絶えず前へ!
*
ウァルデックに着いて、まず祖父の家に寄る
この魔法のような庭がなかったら園芸家になろうとは思わなかっただろう
祖母はたくさんの喪服の人たちの夢を見たと繰り返してマリアンネをさらに不安にさせる
祖父:エメネガーはキツネだ もっと注意しなくてはいかん
母が惨めにやつれ果てて見えて愕然とする
母:
お父さんとクリスチアンを手伝うのよ
みんなで力を合わせて、仲良くね
ベアートに勉強を続けさせて
お父さんには忍耐が必要なのよ
そう言ってクルマに乗って病院に運ばれる
女中ヒルデ:死んでしまうんだわ! と号泣する
寝室で寝ていると、父や兄が起きて動いているのが聞こえる
ウァルデックには呪いがかかっている、という噂は昔からあった
最初の定住者は元ナポレオン軍兵士のカスパー
人の住めない荒れ地にわざわざ住み
周りは悪魔が手を貸しているに違いないと噂した
カスパーが脳卒中で死んでからは、彼の亡霊が出ると言われた
母はそんな噂は本当じゃないと笑い飛ばした
畜産農家のほかに、酒場兼食堂をやり、町からの行楽客が来るが
その収入ではマリアンネを学校に上げるのが精一杯だった
*
母は亡くなる
葬列が通ると人々の好機の視線が怖くなるマリアンネ
マリアンネ(人も花も、育ち、咲きほこり、そして散る いつも同じ繰り返し
クリスチアン:おまえにずっと家にいてもらうしかないと思うよ
マリアンネ:できないわ!
ベアート:僕はもう学校へは戻らないさ
クリスチアン:おまえじゃ2日ともたないよ
クリスチアン:
オレは百姓だ 親父が年をとったら、俺が農場を引き受ける
それまでは工場で働いて金を貯めるんだ
父はベアートの学費をびた一文出さなかったため、母が調達していた
母はベアートを立派な教師にするのが悲願だった
マリアンネが自分の学費をベアートに譲ると話すと、それも断るベアート
父とクリスチアンはまったく肌が合わない
*
マリアンネが荒れたクリスチアンの部屋を掃除していると
ヒルデはふくれる
マリアンネは苦しい事情を手紙に書いて、ハルダー先生に出すと
「苦しみを通して、その中で自分をもう一度見出すのです」と返事が来る
祖父が訪ねて来て、事情を話すと、孫たちが相続するはずのお金の一部を使って
ベアートとマリアンネの学費にあてると言ってくれる
叔母が手伝いに来てくれることになり、5月には園芸学校に戻れると喜ぶマリアンネ
だが、父は「ウァルデックの主人はオレなんだぞ!」と意地を張り
クリスチアンが農場を手伝うのを頑として断る
父は借金の足しに大事な牛を勝手に売ってしまい
クリスチアンと一触即発の状態になる
クリスチアン:
あんたは借金で首が回らなくなった!
あんたの友だちのエメネガーは、息子のペーターを主に据えると村で喋ってる
父が息子に無残に敗北したのを見て大きなショックを受けるマリアンネ
家も土地も抵当に入ってると分かり、安心していたことすべてが崩れはじめた
なにもかも儚いものだ
うつろわぬものは何一つない
追い出されるかもしれない今になって、初めて故郷の真の美しさに気づく
ウァルデックの夏祭りで、ペーターは「君と踊るのでなくては楽しくない」と言った
あれは嘲笑だったのか?
ペーターはかつてクリスチアンと友だちだったが
兄が工場勤めを始めてから会わなくなった
マリアンネ:私はこの家が好きなの、クリスチアン
クリスチアン:自分で農場を譲り受ける 父が承知しなければ非常手段をとる
マリアンネ:忘れないで、私たちのお父さんなのよ!
祖父が間に入り、クリスチアンが農場をしきることに決まる
神よ、父を救いたまえ!
*
学校に行く日、ヒルデは教会に行くと言って仕事を休んだ
4人分のランチの注文が入り、呼びに行くと家を出た後だった
隣家のエリカが来て、2人で急いで料理を作り急場をしのぐ
クリスチアン:
オレは自分に誓ったんだ 抵当に入った農地を取り返すまでは休まない
お前が協力してくれないとどうにもならないんだ
マリアンネは退学手続きをして荷物を取りに学校に戻る
ハルダー先生:
あなたの家族にはあなたがどうしても必要ですよ
あたながここで勉強したことは、けしてムダになりません
大庭園だろうと、古い農家の軒先だろうと、花の美しさに変わりはありません
夏と冬、雨と太陽、夜と昼、いずれも代わる代わるやってきます
歓びと苦しみも同じですよ
ハルダー先生に言われて、生徒たちは自分の好きな花の苗をマリアンネにプレゼントする
*
干し草作りのためにクリスチアンは1人で夜明けまで働く
ヒルデは工場勤めをして、あることないことハルトマン家の悪口を言いふらした
父も「子どもたちは親を親とも思わない」と息子の悪口に一役買っていた
雌豚が6匹のばら色の子豚を産んだ
それまで無関心だったが、可愛い姿に感動し、情がわくマリアンネ
だが、農家では常に予測不能なことが起きるのを覚悟している必要がある
豚の耳に斑点を見つけ、慌てて獣医を呼ぶと、すぐと殺して
全部に予防接種を打ち、他の豚を隔離するよう言われる
父はまったく協力せず、息子より下男を優遇する
かつては頼もしい庇護者であり、友だった父
あの頃は幸せだった
*
役所から手紙が来て、届けた牛乳が不潔だったため罰金をかするとある
細心の注意をはらっているマリアンネは下男ヨーゼフを疑う
仕事をさぼってばかりいるヨーゼフをクリスチアンは解雇する
ヨーゼフ:村にいい口がある
ヨーゼフの仕事はマリアンネに周り、毎朝、村まで牛乳を馬車に運ぶ
ペーター:
君たちの下男がおとといからうちにいるよ
なぜ追い出したんだい?
ヨーゼフが戻ってきて、エメネガーはこれまでよりいい給料を払うと約束したのに守らなかったと話す
牛乳の異物混入も、ブタの病気もエメネガーの指示だったと分かり呆然とする父
クリスチアン:お前に用はない!
*
ペーターの友人から今年はウァルデックのダンスはないのかと聞かれる
マリアンネはクリスチアンから父に聞いてみるよう促す
最初は断った父だが、次第に態度が和らぐ
父:ダンスをやれば金が入る 夏祭りには賛成だよ
ベアートも帰省し、友人らが楽団員を務める
ペーターの友人たちは舞台の設置を手伝う
席は満席になり、ペーターは父親を連れて来て、マリアンネをダンスに誘う
ペーター:僕は親父の意図は知ってるが、友だちの不幸を利用するような人間じゃない
夏祭りは大成功
クリスチアンとエリカが親密なのを見かけて、自分だけ孤独に感じる
母の言った忍耐とは何だろう?
母は忍耐の連続だった
私はこの世に生まれてこのかた、ただひたすら待っていた
子どもの頃は大きくなるのを待ち、学校を卒業するのを待ち
大人になるのを待ち、職業を身につけるのを待ち、、、
待つということは、何もしなことではない
自分の力のすべてを尽くし、なお希望を捨てないことだ
私はペーターと踊りたい!
ペーターはマリアンネの父が家に来て、エメネガーと口論になったと話す
ペーター:僕が少しも変わっていないと証明したかった
マリアンネは来年はダンスすると約束する
その日から父は農場を手伝うようになる
麦刈りは父と息子、イズラー家も手伝った
ペーター:
トラクターを持ってくる
昨日、親父と話したんだ
ペーターとクリスチアンの友情も戻り、父の笑い声が戻る
■あとがき
ゲルトルート・ホイザーマン
スイスの女流作家
『河畔のふるさと』
『イレーネ』
『アンネとルート』ほか、十代の少女たちの作品が多数
無心な子ども時代に決別して、未知の人生に歩み出す精神の葛藤と成長の過程を描く
学業の中断、将来の断念、家族の経済的精神的崩壊、親子の不信や離反など
私たちの多くが経験する問題を瑞々しく描いている
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
家族の問題は大なり小なりみんな共通してあるよね
母の死で終わるんじゃなくて、そこから家族関係を見直して
1人1人が自立していく過程に見ごたえがある物語
【内容抜粋メモ】
登場人物
マリアンネ・ハルトマン
クリスチアン 長兄 工場勤め
ベアート 次兄 教師になるために勉強している
ヒルデ 女中
ヨーゼフ 下男
祖父 母エルゼの父 元教師
エメネガー ウァルデック農場を乗っ取ろうと画策している
ペーター 息子
ハルダー先生 園芸学校の校長 恩師
マリアンネは16歳で園芸学校に入り、1年間過ごしたが
父から電話があり、母の具合が悪いから
すぐウァルデックに帰って来いと言われる
2年前と同様、手術になるかもしれない
母は慣れない農家の厳しい生活で体を壊して長い
父はストレスからアルコール依存症になっている
マリアンネ:ハルダー先生、私怖いんです 母が死ぬようなことになったら・・・
ハルダー先生
(若い人はぐずぐずしないものだ
心は重くても、一段おきにのぼっていく 絶えず前へ!
*
ウァルデックに着いて、まず祖父の家に寄る
この魔法のような庭がなかったら園芸家になろうとは思わなかっただろう
祖母はたくさんの喪服の人たちの夢を見たと繰り返してマリアンネをさらに不安にさせる
祖父:エメネガーはキツネだ もっと注意しなくてはいかん
母が惨めにやつれ果てて見えて愕然とする
母:
お父さんとクリスチアンを手伝うのよ
みんなで力を合わせて、仲良くね
ベアートに勉強を続けさせて
お父さんには忍耐が必要なのよ
そう言ってクルマに乗って病院に運ばれる
女中ヒルデ:死んでしまうんだわ! と号泣する
寝室で寝ていると、父や兄が起きて動いているのが聞こえる
ウァルデックには呪いがかかっている、という噂は昔からあった
最初の定住者は元ナポレオン軍兵士のカスパー
人の住めない荒れ地にわざわざ住み
周りは悪魔が手を貸しているに違いないと噂した
カスパーが脳卒中で死んでからは、彼の亡霊が出ると言われた
母はそんな噂は本当じゃないと笑い飛ばした
畜産農家のほかに、酒場兼食堂をやり、町からの行楽客が来るが
その収入ではマリアンネを学校に上げるのが精一杯だった
*
母は亡くなる
葬列が通ると人々の好機の視線が怖くなるマリアンネ
マリアンネ(人も花も、育ち、咲きほこり、そして散る いつも同じ繰り返し
クリスチアン:おまえにずっと家にいてもらうしかないと思うよ
マリアンネ:できないわ!
ベアート:僕はもう学校へは戻らないさ
クリスチアン:おまえじゃ2日ともたないよ
クリスチアン:
オレは百姓だ 親父が年をとったら、俺が農場を引き受ける
それまでは工場で働いて金を貯めるんだ
父はベアートの学費をびた一文出さなかったため、母が調達していた
母はベアートを立派な教師にするのが悲願だった
マリアンネが自分の学費をベアートに譲ると話すと、それも断るベアート
父とクリスチアンはまったく肌が合わない
*
マリアンネが荒れたクリスチアンの部屋を掃除していると
ヒルデはふくれる
マリアンネは苦しい事情を手紙に書いて、ハルダー先生に出すと
「苦しみを通して、その中で自分をもう一度見出すのです」と返事が来る
祖父が訪ねて来て、事情を話すと、孫たちが相続するはずのお金の一部を使って
ベアートとマリアンネの学費にあてると言ってくれる
叔母が手伝いに来てくれることになり、5月には園芸学校に戻れると喜ぶマリアンネ
だが、父は「ウァルデックの主人はオレなんだぞ!」と意地を張り
クリスチアンが農場を手伝うのを頑として断る
父は借金の足しに大事な牛を勝手に売ってしまい
クリスチアンと一触即発の状態になる
クリスチアン:
あんたは借金で首が回らなくなった!
あんたの友だちのエメネガーは、息子のペーターを主に据えると村で喋ってる
父が息子に無残に敗北したのを見て大きなショックを受けるマリアンネ
家も土地も抵当に入ってると分かり、安心していたことすべてが崩れはじめた
なにもかも儚いものだ
うつろわぬものは何一つない
追い出されるかもしれない今になって、初めて故郷の真の美しさに気づく
ウァルデックの夏祭りで、ペーターは「君と踊るのでなくては楽しくない」と言った
あれは嘲笑だったのか?
ペーターはかつてクリスチアンと友だちだったが
兄が工場勤めを始めてから会わなくなった
マリアンネ:私はこの家が好きなの、クリスチアン
クリスチアン:自分で農場を譲り受ける 父が承知しなければ非常手段をとる
マリアンネ:忘れないで、私たちのお父さんなのよ!
祖父が間に入り、クリスチアンが農場をしきることに決まる
神よ、父を救いたまえ!
*
学校に行く日、ヒルデは教会に行くと言って仕事を休んだ
4人分のランチの注文が入り、呼びに行くと家を出た後だった
隣家のエリカが来て、2人で急いで料理を作り急場をしのぐ
クリスチアン:
オレは自分に誓ったんだ 抵当に入った農地を取り返すまでは休まない
お前が協力してくれないとどうにもならないんだ
マリアンネは退学手続きをして荷物を取りに学校に戻る
ハルダー先生:
あなたの家族にはあなたがどうしても必要ですよ
あたながここで勉強したことは、けしてムダになりません
大庭園だろうと、古い農家の軒先だろうと、花の美しさに変わりはありません
夏と冬、雨と太陽、夜と昼、いずれも代わる代わるやってきます
歓びと苦しみも同じですよ
ハルダー先生に言われて、生徒たちは自分の好きな花の苗をマリアンネにプレゼントする
*
干し草作りのためにクリスチアンは1人で夜明けまで働く
ヒルデは工場勤めをして、あることないことハルトマン家の悪口を言いふらした
父も「子どもたちは親を親とも思わない」と息子の悪口に一役買っていた
雌豚が6匹のばら色の子豚を産んだ
それまで無関心だったが、可愛い姿に感動し、情がわくマリアンネ
だが、農家では常に予測不能なことが起きるのを覚悟している必要がある
豚の耳に斑点を見つけ、慌てて獣医を呼ぶと、すぐと殺して
全部に予防接種を打ち、他の豚を隔離するよう言われる
父はまったく協力せず、息子より下男を優遇する
かつては頼もしい庇護者であり、友だった父
あの頃は幸せだった
*
役所から手紙が来て、届けた牛乳が不潔だったため罰金をかするとある
細心の注意をはらっているマリアンネは下男ヨーゼフを疑う
仕事をさぼってばかりいるヨーゼフをクリスチアンは解雇する
ヨーゼフ:村にいい口がある
ヨーゼフの仕事はマリアンネに周り、毎朝、村まで牛乳を馬車に運ぶ
ペーター:
君たちの下男がおとといからうちにいるよ
なぜ追い出したんだい?
ヨーゼフが戻ってきて、エメネガーはこれまでよりいい給料を払うと約束したのに守らなかったと話す
牛乳の異物混入も、ブタの病気もエメネガーの指示だったと分かり呆然とする父
クリスチアン:お前に用はない!
*
ペーターの友人から今年はウァルデックのダンスはないのかと聞かれる
マリアンネはクリスチアンから父に聞いてみるよう促す
最初は断った父だが、次第に態度が和らぐ
父:ダンスをやれば金が入る 夏祭りには賛成だよ
ベアートも帰省し、友人らが楽団員を務める
ペーターの友人たちは舞台の設置を手伝う
席は満席になり、ペーターは父親を連れて来て、マリアンネをダンスに誘う
ペーター:僕は親父の意図は知ってるが、友だちの不幸を利用するような人間じゃない
夏祭りは大成功
クリスチアンとエリカが親密なのを見かけて、自分だけ孤独に感じる
母の言った忍耐とは何だろう?
母は忍耐の連続だった
私はこの世に生まれてこのかた、ただひたすら待っていた
子どもの頃は大きくなるのを待ち、学校を卒業するのを待ち
大人になるのを待ち、職業を身につけるのを待ち、、、
待つということは、何もしなことではない
自分の力のすべてを尽くし、なお希望を捨てないことだ
私はペーターと踊りたい!
ペーターはマリアンネの父が家に来て、エメネガーと口論になったと話す
ペーター:僕が少しも変わっていないと証明したかった
マリアンネは来年はダンスすると約束する
その日から父は農場を手伝うようになる
麦刈りは父と息子、イズラー家も手伝った
ペーター:
トラクターを持ってくる
昨日、親父と話したんだ
ペーターとクリスチアンの友情も戻り、父の笑い声が戻る
■あとがき
ゲルトルート・ホイザーマン
スイスの女流作家
『河畔のふるさと』
『イレーネ』
『アンネとルート』ほか、十代の少女たちの作品が多数
無心な子ども時代に決別して、未知の人生に歩み出す精神の葛藤と成長の過程を描く
学業の中断、将来の断念、家族の経済的精神的崩壊、親子の不信や離反など
私たちの多くが経験する問題を瑞々しく描いている