1999年初版 南洋一郎/文 藤田新策/装丁 朝倉めぐみ/画家
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
『怪盗ルパン全集』は、ルパンの魅力を熟知した冒険作家・南洋一郎が
子どものために心血をそそいで書きあらためたもの
この装丁もいいなあ
21世紀を迎えるにあたり、装いも新たに『シリーズ怪盗ルパン』全20巻を刊行
イギリスとフランスは昔から仲が良くないと聞いたことがある
その両国の英雄の対決をルブラン側から書けば
ルパンに有利な展開になるのでは?
私はホームズを先に読んだからか
推理小説としてドイルのほうが好みだからか
ルブランの描くホームズのらしくなさに
モヤモヤしながら読んだ
世界中のホームズファンも同じでは?
前半のいくつものヘマも、ホームズらしくなく
頭脳派というより、肉体派に描かれている
むしゃくしゃして酔っ払いを殴るなんて
イギリス紳士らしくないし
ホームズにとってはなんでもないトリックに引っかかるし
ワトソンが腕の骨を折られて助手役を果たせないのも
物語の脇に追いやられた感じ
ホームズは本家以外にもあらゆる形で利用されてきた
ドイルはルブランにも採用されたことを
どう思っただろうか?
この2人の対決は2回目?
となると1回目も気になる 第1巻の『怪盗紳士』
ルパンとホームズの決定的な違いは
女性、恋愛好きなフランス人のルパンには
必ず女性が伴うため、時に足手まといになること
出てくる女性がみなルパンを愛してしまうのもフシギw
前半はホームズに花を持たせて
後半はルパンが勝利するように
等分に書いたのかな
ルパン逮捕に人生を捧げるガニマール警部は銭形警部ぽい
ルパンからの手紙を読んで
怒ってくしゃくしゃにするのもおかしい
ホームズなら、その便せんがどこ製だとか
どこから発送されたか当てたり
なんなら、ルパンからの復讐がすぐあるはずだと
あらかじめ予想して事前に周到な準備をしているはず
先の先を読んでいるのがホームズなんだ
【内容抜粋メモ】
登場人物
アルセーヌ・ルパン 変装自在の怪盗紳士
ジェルボア老教授 宝くじ券を盗まれる
シュザンヌ 老教授の娘
ドウトレック老将軍
クロゾン伯爵夫人 青ダイヤを盗まれた
デタンジュ 有名な建築家
クロチルド デタンジュの娘
ガニマール警部
シャーロック・ホームズ
ワトソン
■古デスク
古道具屋でジェルボア教授は愛娘シュザンヌの誕生日祝いに
マホガニー製の古いデスクを買う
一歩遅れて買いそびれた青年紳士が追いかけてきて
もっと高値で買うとしつこく交渉するが
ガンコな教授は断る
シュザンヌはとても喜んで、いとこフィリップからの手紙をしまう
持参金なしでお嫁にはやれない、というのが口グセの教授
フィリップは貧乏でいつ結婚できるか分からず、父にも言えない
メイドが出かけている間に白昼堂々馬車に積んでデスクは盗まれる
■宝くじ
夕刊に宝くじの当選番号が載り、100万フランが当たった
その券は箱に入れ、シュザンヌに渡し、デスクに入れたと分かる
ルパンから、その宝くじは私が持っていると電報が来る
砲兵少佐ベッシイが親友ジェルボアに売りつけたのだが
その証明書も箱の中
ルパンは自分こそ親友だと言い張る
■シュザンヌの誘拐
新聞『エコー・ド・フランス』の大株主はルパンで御用新聞!
2人で等分して50万フランずつで解決しようと出るが
教授はあくまで自分のものと主張して無視したため
シュザンヌは誘拐された
見事な金髪女性に連れて行かれたことが分かる
教授は100万をうけとり、ドテナン弁護士の事務所に来る
シルクハットに片メガネの紳士姿のルパンが来て
誘拐事件はシュザンヌが自ら考えた
フィリップと結婚する持参金があれば解決するだろうと考えたため
デスクはナポレオンの愛人マリー・ワレウスカに献上されたもので
ナイフで削った「マリーにおくる」という文字が入っている
宮殿の拝観者が見れるのは、後に皇后ジョセフィーヌに贈られた同じデスク
ルパンは黄金よりも、古美術品や歴史上のものを集めるのが道楽
家は警官に包囲されていたのに、ルパンと金髪美人は忽然と消えてしまう
■青色ダイヤ
ドウトレック男爵に本を読み聞かせる小間使いのアントワネット
召使のシャルルが寝て1時間もしないのにベルが鳴り
行ってみると将軍が短剣で刺されて死んでいて
家具はめちゃくちゃ
警察を呼び、部屋に戻ると、なぜか家具はきちんと直されていた
修道女オーギュストはいるが、アントワネットがいない
ガニマール警部はこれにもルパンと金髪美人が絡んでいるに違いないと睨むが
青いダイヤの指輪は将軍の指にはまったまま
凶器の短剣はアントワネットのものだから、容疑者と断定
■ダイヤの競売
大資本家のエルシュマンと女富豪クロゾン伯爵夫人が争い
とうとう35万フランで夫人が落札
その時、エルシュマンにダイヤは呪われているという手紙が渡されていた
■ダイヤの盗難
クロゾン伯爵夫人は豪華な屋敷でパーティーを開き
ピアノを弾く時に青いダイヤの指輪を外して置く
一瞬明かりが消えて、つくとダイヤは消えていた!
一番近くにいたブライヒェン氏が怪しい
領事夫人の化粧箱にある歯磨き粉からダイヤが出てきて驚く
日本喫茶店(!)で話し合う
クロゾン伯爵夫人にダイヤを買うよううながしたド・レアル夫人は
ダイヤの商人だが、金髪美人と同一人物だろうと怪しむガニマール警部
ところが本人を呼び出すと本当の商人と分かり
ルパンからのこばかにした手紙を持っている
ガニマール警部の失敗により、ホームズに解決してもらおうということになる
「ルパンと戦うのは、年来ののぞみ」と返事が来る
■シャーロック・ホームズとワトソン
ルパンが親友ルブランと食事をしていると
テーブルの後ろにホームズとワトソンがいて、正体がバレてると分かる
2人はかたく手を握りライバル心を燃やす
ホームズ:私は10日で宝くじ、ダイヤ事件の謎を解き、あなたを捕らえよう
■ニセモノのダイヤ
ホームズは化粧箱から出たダイヤはニセモノで
ホンモノはルパンが持っていると話す
ルパンらが消えたドテナン弁護士の家、ドウトレックの屋敷を見て周る
ルパンの部下と思って捕まえたらワトソン
ルパンがホームズのふりをして室内の見取り図を描くよう指示していた
鉄門は閉ざされ、2人は動けず、丁寧に夕食まで用意される
ホテルに戻ると、旅行かばんごと盗まれて部屋を引き払われていた
ルパンと取っ組み合いになり、ワトソンは右腕を骨折する
■建築家デタンジュ
ルパンらが消えた屋敷はすべてデタンジュが建てたものと分かる
秘密の通路があるに違いないと、ホームズは老人に変装して
デタンジュの図書室で蔵書目録を作る仕事をしながら様子をさぐる
娘クロチルドは人嫌いで滅多に外出しない
■マキシム・ベルモン
ルパンはベルモンという名を語ってデタンジュと関わりがあり
クロチルドはベルモンを愛していると分かる
■ルパンの隠れ家
ルパンの隠れ家を突き止めて、ガニマール警部を呼ぶと
親友の兄弟刑事ルルウの家と分かる
ホームズはフランス国民も警察もルパンが好きで
自分をバカにしている空気の中で苦戦する
地下室でガーネットを拾い、宝石商レオナールを訪ねると
金髪美人が壊れたブローチを修理させていた
尾行したアパートの羽目板が動いて、秘密の出入口を見つける
女はクロチルドが髪を栗色に染めた姿
デタンジュの設計図を調べて、他にも各区にルパンの隠れ家があると突き止める
■事件の真相
将軍は時々発作(?)が起きて、しずめられるのはオーギュストだけ
あの夜、彼女が帰った後に発作が起きて、襲われ、争った挙句殺してしまった
ベルを鳴らして、ダイヤを盗まず秘密の通路からルパンの部下に話し
部屋を元通りに戻した
ガニマール警部に渡すつもりが、クロチルドが連絡したせいで
運転手がルパンに代わり、つばめ号に乗せられ
両足を縛られてイギリスに返される
ルパンが隠れ家を引き払おうとすると警察に取り囲まれる
ホームズはダイヤを返せば、クロチルドを自由にすると条件を出す
ホームズは船長と船の時計を1時間進めて、とんぼ返りでパリに着く
ステッキに埋めたダイヤが戻ると、クロチルドはガニマール警部に任せて
ホームズは約束を守ってロンドンに帰る
ルパンは屋根裏から隣りの家に移り、まんまと脱走
カレー行き急行列車に乗ったホームズに別れの挨拶に来る
ルパン:
手紙をあげますよ
あんたもくれるでしょう
宛名はパリ市ルパンで届きます
■ユダヤの古ランプ
なにか素晴らしい冒険はないかとヒマなホームズのもとに
ビクトール・ダンブルバール男爵から古いランプが盗まれたと事件依頼が来る
同時にルパンから惨めな目にあいたくなければ事件に関わるなと手紙が来て
くしゃくしゃにして床に叩きつける(そんなキャラじゃないが?
ドーバー港行きの急行列車に乗り、連絡船でカレー港
再びパリへ着くと、白バラのように美しい少女に
このままロンドンに帰って欲しいと頼まれる
■事件
窓は外から開けられた はしごの跡がある
ランプには秘密の隠し場所があり
黄金に怪獣を彫刻した宝石細工が隠してあった
ホームズ:はしごの跡などは真犯人が嫌疑をそらすためにつけたトリック とすぐに見破る
2人の子どもたちの家庭教師アリス・ドマンは
駅で2人を呼び止めた少女だった
その夜、また賊が入り、宝石などを盗み
ワトソンは今度は胸を刺される(とんだ災難だな/汗
ホームズは犯人は別だと推理
■切り抜き文字
娘の1人アンリエットは、先生の真似だと言って
新聞から文字を切り抜いて遊んでいる
ホームズは切り取られた文字から「REPONDEZ(返事せよ)」という文章をつくる
アリスが訪ねた屋敷には男女が住んでいるが、いろいろと怪しい
ブレソンを尾行すると、セーヌ川になにかの包みを捨てた
2人が追い詰めると銃声がして自殺していた
■釣りの老人
釣りをしている老人に変装したルパンがホームズに切り抜き文字を見せる
ボートの上で格闘して、ホームズは泳いで帰る
ランプも宝石も取り返し、切り抜き文字の謎を明かす
ルパンの御用新聞でやりとりしていたのはアリスとルパン
ワトソンを刺し、盗品を川に隠したのはブレソン
アリスがランプを盗んだ罪をかぶるが、夫人が自供する
ブレソンは少女時代に交際していた
とはいっても手紙を2、3度やりとりしただけ
(そんなことでスキャンダルになる!?
ブレソンが夫に話すと脅されて、ランプなどを渡していた
■怪盗と名探偵の握手
カレー港とドーバー港の定期連絡船シティ・オブ・ロンドン号に乗って
帰るホームズとワトソン
アリスはずっとワトソンの看病をして
ロンドンのホームズの家でしばらく預かり
ワトソンと2人で観光するといいとすすめる
同じ船にルパンも乗っている
ルパン:敵同士だが、親友以上の気がするな
ルパンは夫人とアリスを助けようとしていただけだった
たまに探偵みたいな仕事もするんだな
また戦う約束をする2人
でもイギリスに着くまでたしか9時間とか言ってなかった?
その後、どうしたんだろう?w
■解説 文芸評論家・二上洋一
ルパンは冒険家タイプの探偵泥棒として世界のミステリーファンを魅了した
最初の登場は1905年の短編『アルセーヌ・ルパンの逮捕』
それほど話題にならず、当時イギリスで有名なホームズを敵役として登場させたのが本書
その頃は著作権も今ほど難しくなかった
日本でも江戸川乱歩が『黄金仮面』でルパンを登場させている(!
・少年探偵シリーズ27『黄金仮面』(ポプラ社)
ルブランは当時の人気作家ガストン・ルルーにライバル意識を持った
『黄色い部屋』と『奇岩城』には共通点がある
南洋一郎
明治26年東京生まれ
小学校の教員を24年勤めた
教員生活に裏づけられた「子どもたちへの熱い思い」
大正15年、少年月刊誌「少年倶楽部」に池田宣政というペンネームで
感動小説『懐かしき丁抹(デンマーク)の少年』でデビュー
『怪盗ルパン全集』は亡くなる間際まで執筆していた
少年時代に『ロビンソン漂流記』『小公子』を愛読
南の翻訳は厳密にいえば翻案
面白くするために、エピソードを削ったり、追加している
(カットはあっても、追加はまずくないか? すごい勇気だな/驚
面白かった人は、少し退屈でも、ぜひ完訳で『ルパン全集』を読んでください
(退屈てw
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
『怪盗ルパン全集』は、ルパンの魅力を熟知した冒険作家・南洋一郎が
子どものために心血をそそいで書きあらためたもの
この装丁もいいなあ
21世紀を迎えるにあたり、装いも新たに『シリーズ怪盗ルパン』全20巻を刊行
イギリスとフランスは昔から仲が良くないと聞いたことがある
その両国の英雄の対決をルブラン側から書けば
ルパンに有利な展開になるのでは?
私はホームズを先に読んだからか
推理小説としてドイルのほうが好みだからか
ルブランの描くホームズのらしくなさに
モヤモヤしながら読んだ
世界中のホームズファンも同じでは?
前半のいくつものヘマも、ホームズらしくなく
頭脳派というより、肉体派に描かれている
むしゃくしゃして酔っ払いを殴るなんて
イギリス紳士らしくないし
ホームズにとってはなんでもないトリックに引っかかるし
ワトソンが腕の骨を折られて助手役を果たせないのも
物語の脇に追いやられた感じ
ホームズは本家以外にもあらゆる形で利用されてきた
ドイルはルブランにも採用されたことを
どう思っただろうか?
この2人の対決は2回目?
となると1回目も気になる 第1巻の『怪盗紳士』
ルパンとホームズの決定的な違いは
女性、恋愛好きなフランス人のルパンには
必ず女性が伴うため、時に足手まといになること
出てくる女性がみなルパンを愛してしまうのもフシギw
前半はホームズに花を持たせて
後半はルパンが勝利するように
等分に書いたのかな
ルパン逮捕に人生を捧げるガニマール警部は銭形警部ぽい
ルパンからの手紙を読んで
怒ってくしゃくしゃにするのもおかしい
ホームズなら、その便せんがどこ製だとか
どこから発送されたか当てたり
なんなら、ルパンからの復讐がすぐあるはずだと
あらかじめ予想して事前に周到な準備をしているはず
先の先を読んでいるのがホームズなんだ
【内容抜粋メモ】
登場人物
アルセーヌ・ルパン 変装自在の怪盗紳士
ジェルボア老教授 宝くじ券を盗まれる
シュザンヌ 老教授の娘
ドウトレック老将軍
クロゾン伯爵夫人 青ダイヤを盗まれた
デタンジュ 有名な建築家
クロチルド デタンジュの娘
ガニマール警部
シャーロック・ホームズ
ワトソン
■古デスク
古道具屋でジェルボア教授は愛娘シュザンヌの誕生日祝いに
マホガニー製の古いデスクを買う
一歩遅れて買いそびれた青年紳士が追いかけてきて
もっと高値で買うとしつこく交渉するが
ガンコな教授は断る
シュザンヌはとても喜んで、いとこフィリップからの手紙をしまう
持参金なしでお嫁にはやれない、というのが口グセの教授
フィリップは貧乏でいつ結婚できるか分からず、父にも言えない
メイドが出かけている間に白昼堂々馬車に積んでデスクは盗まれる
■宝くじ
夕刊に宝くじの当選番号が載り、100万フランが当たった
その券は箱に入れ、シュザンヌに渡し、デスクに入れたと分かる
ルパンから、その宝くじは私が持っていると電報が来る
砲兵少佐ベッシイが親友ジェルボアに売りつけたのだが
その証明書も箱の中
ルパンは自分こそ親友だと言い張る
■シュザンヌの誘拐
新聞『エコー・ド・フランス』の大株主はルパンで御用新聞!
2人で等分して50万フランずつで解決しようと出るが
教授はあくまで自分のものと主張して無視したため
シュザンヌは誘拐された
見事な金髪女性に連れて行かれたことが分かる
教授は100万をうけとり、ドテナン弁護士の事務所に来る
シルクハットに片メガネの紳士姿のルパンが来て
誘拐事件はシュザンヌが自ら考えた
フィリップと結婚する持参金があれば解決するだろうと考えたため
デスクはナポレオンの愛人マリー・ワレウスカに献上されたもので
ナイフで削った「マリーにおくる」という文字が入っている
宮殿の拝観者が見れるのは、後に皇后ジョセフィーヌに贈られた同じデスク
ルパンは黄金よりも、古美術品や歴史上のものを集めるのが道楽
家は警官に包囲されていたのに、ルパンと金髪美人は忽然と消えてしまう
■青色ダイヤ
ドウトレック男爵に本を読み聞かせる小間使いのアントワネット
召使のシャルルが寝て1時間もしないのにベルが鳴り
行ってみると将軍が短剣で刺されて死んでいて
家具はめちゃくちゃ
警察を呼び、部屋に戻ると、なぜか家具はきちんと直されていた
修道女オーギュストはいるが、アントワネットがいない
ガニマール警部はこれにもルパンと金髪美人が絡んでいるに違いないと睨むが
青いダイヤの指輪は将軍の指にはまったまま
凶器の短剣はアントワネットのものだから、容疑者と断定
■ダイヤの競売
大資本家のエルシュマンと女富豪クロゾン伯爵夫人が争い
とうとう35万フランで夫人が落札
その時、エルシュマンにダイヤは呪われているという手紙が渡されていた
■ダイヤの盗難
クロゾン伯爵夫人は豪華な屋敷でパーティーを開き
ピアノを弾く時に青いダイヤの指輪を外して置く
一瞬明かりが消えて、つくとダイヤは消えていた!
一番近くにいたブライヒェン氏が怪しい
領事夫人の化粧箱にある歯磨き粉からダイヤが出てきて驚く
日本喫茶店(!)で話し合う
クロゾン伯爵夫人にダイヤを買うよううながしたド・レアル夫人は
ダイヤの商人だが、金髪美人と同一人物だろうと怪しむガニマール警部
ところが本人を呼び出すと本当の商人と分かり
ルパンからのこばかにした手紙を持っている
ガニマール警部の失敗により、ホームズに解決してもらおうということになる
「ルパンと戦うのは、年来ののぞみ」と返事が来る
■シャーロック・ホームズとワトソン
ルパンが親友ルブランと食事をしていると
テーブルの後ろにホームズとワトソンがいて、正体がバレてると分かる
2人はかたく手を握りライバル心を燃やす
ホームズ:私は10日で宝くじ、ダイヤ事件の謎を解き、あなたを捕らえよう
■ニセモノのダイヤ
ホームズは化粧箱から出たダイヤはニセモノで
ホンモノはルパンが持っていると話す
ルパンらが消えたドテナン弁護士の家、ドウトレックの屋敷を見て周る
ルパンの部下と思って捕まえたらワトソン
ルパンがホームズのふりをして室内の見取り図を描くよう指示していた
鉄門は閉ざされ、2人は動けず、丁寧に夕食まで用意される
ホテルに戻ると、旅行かばんごと盗まれて部屋を引き払われていた
ルパンと取っ組み合いになり、ワトソンは右腕を骨折する
■建築家デタンジュ
ルパンらが消えた屋敷はすべてデタンジュが建てたものと分かる
秘密の通路があるに違いないと、ホームズは老人に変装して
デタンジュの図書室で蔵書目録を作る仕事をしながら様子をさぐる
娘クロチルドは人嫌いで滅多に外出しない
■マキシム・ベルモン
ルパンはベルモンという名を語ってデタンジュと関わりがあり
クロチルドはベルモンを愛していると分かる
■ルパンの隠れ家
ルパンの隠れ家を突き止めて、ガニマール警部を呼ぶと
親友の兄弟刑事ルルウの家と分かる
ホームズはフランス国民も警察もルパンが好きで
自分をバカにしている空気の中で苦戦する
地下室でガーネットを拾い、宝石商レオナールを訪ねると
金髪美人が壊れたブローチを修理させていた
尾行したアパートの羽目板が動いて、秘密の出入口を見つける
女はクロチルドが髪を栗色に染めた姿
デタンジュの設計図を調べて、他にも各区にルパンの隠れ家があると突き止める
■事件の真相
将軍は時々発作(?)が起きて、しずめられるのはオーギュストだけ
あの夜、彼女が帰った後に発作が起きて、襲われ、争った挙句殺してしまった
ベルを鳴らして、ダイヤを盗まず秘密の通路からルパンの部下に話し
部屋を元通りに戻した
ガニマール警部に渡すつもりが、クロチルドが連絡したせいで
運転手がルパンに代わり、つばめ号に乗せられ
両足を縛られてイギリスに返される
ルパンが隠れ家を引き払おうとすると警察に取り囲まれる
ホームズはダイヤを返せば、クロチルドを自由にすると条件を出す
ホームズは船長と船の時計を1時間進めて、とんぼ返りでパリに着く
ステッキに埋めたダイヤが戻ると、クロチルドはガニマール警部に任せて
ホームズは約束を守ってロンドンに帰る
ルパンは屋根裏から隣りの家に移り、まんまと脱走
カレー行き急行列車に乗ったホームズに別れの挨拶に来る
ルパン:
手紙をあげますよ
あんたもくれるでしょう
宛名はパリ市ルパンで届きます
■ユダヤの古ランプ
なにか素晴らしい冒険はないかとヒマなホームズのもとに
ビクトール・ダンブルバール男爵から古いランプが盗まれたと事件依頼が来る
同時にルパンから惨めな目にあいたくなければ事件に関わるなと手紙が来て
くしゃくしゃにして床に叩きつける(そんなキャラじゃないが?
ドーバー港行きの急行列車に乗り、連絡船でカレー港
再びパリへ着くと、白バラのように美しい少女に
このままロンドンに帰って欲しいと頼まれる
■事件
窓は外から開けられた はしごの跡がある
ランプには秘密の隠し場所があり
黄金に怪獣を彫刻した宝石細工が隠してあった
ホームズ:はしごの跡などは真犯人が嫌疑をそらすためにつけたトリック とすぐに見破る
2人の子どもたちの家庭教師アリス・ドマンは
駅で2人を呼び止めた少女だった
その夜、また賊が入り、宝石などを盗み
ワトソンは今度は胸を刺される(とんだ災難だな/汗
ホームズは犯人は別だと推理
■切り抜き文字
娘の1人アンリエットは、先生の真似だと言って
新聞から文字を切り抜いて遊んでいる
ホームズは切り取られた文字から「REPONDEZ(返事せよ)」という文章をつくる
アリスが訪ねた屋敷には男女が住んでいるが、いろいろと怪しい
ブレソンを尾行すると、セーヌ川になにかの包みを捨てた
2人が追い詰めると銃声がして自殺していた
■釣りの老人
釣りをしている老人に変装したルパンがホームズに切り抜き文字を見せる
ボートの上で格闘して、ホームズは泳いで帰る
ランプも宝石も取り返し、切り抜き文字の謎を明かす
ルパンの御用新聞でやりとりしていたのはアリスとルパン
ワトソンを刺し、盗品を川に隠したのはブレソン
アリスがランプを盗んだ罪をかぶるが、夫人が自供する
ブレソンは少女時代に交際していた
とはいっても手紙を2、3度やりとりしただけ
(そんなことでスキャンダルになる!?
ブレソンが夫に話すと脅されて、ランプなどを渡していた
■怪盗と名探偵の握手
カレー港とドーバー港の定期連絡船シティ・オブ・ロンドン号に乗って
帰るホームズとワトソン
アリスはずっとワトソンの看病をして
ロンドンのホームズの家でしばらく預かり
ワトソンと2人で観光するといいとすすめる
同じ船にルパンも乗っている
ルパン:敵同士だが、親友以上の気がするな
ルパンは夫人とアリスを助けようとしていただけだった
たまに探偵みたいな仕事もするんだな
また戦う約束をする2人
でもイギリスに着くまでたしか9時間とか言ってなかった?
その後、どうしたんだろう?w
■解説 文芸評論家・二上洋一
ルパンは冒険家タイプの探偵泥棒として世界のミステリーファンを魅了した
最初の登場は1905年の短編『アルセーヌ・ルパンの逮捕』
それほど話題にならず、当時イギリスで有名なホームズを敵役として登場させたのが本書
その頃は著作権も今ほど難しくなかった
日本でも江戸川乱歩が『黄金仮面』でルパンを登場させている(!
・少年探偵シリーズ27『黄金仮面』(ポプラ社)
ルブランは当時の人気作家ガストン・ルルーにライバル意識を持った
『黄色い部屋』と『奇岩城』には共通点がある
南洋一郎
明治26年東京生まれ
小学校の教員を24年勤めた
教員生活に裏づけられた「子どもたちへの熱い思い」
大正15年、少年月刊誌「少年倶楽部」に池田宣政というペンネームで
感動小説『懐かしき丁抹(デンマーク)の少年』でデビュー
『怪盗ルパン全集』は亡くなる間際まで執筆していた
少年時代に『ロビンソン漂流記』『小公子』を愛読
南の翻訳は厳密にいえば翻案
面白くするために、エピソードを削ったり、追加している
(カットはあっても、追加はまずくないか? すごい勇気だな/驚
面白かった人は、少し退屈でも、ぜひ完訳で『ルパン全集』を読んでください
(退屈てw