2016年初版 絵/nakaban
※「作家別」カテゴリー内「宮沢賢治」に追加します
青空文庫
ヴィーガンもどきな私には、改めて肉食は止めようと思う話
読んでいて気分が悪くなった/汗
ひとり殺すのもこうなのに
工場化されているところではもう
人々の感情は完全に麻痺しているんだろう
「有難く食べる」と言っても
こうして動物が言葉を話せるとなると
やっぱりひとつの大切な命には変わりない
賢治も仏教の観点から描いたのだろう
冒頭の失われた原稿にはなにが書かれていたのか?
賢治の物語には完成してないものも多いが
それでも物語にどっぷり浸かることが出来る
それを絵本にしてくれて有難い
【内容抜粋メモ】

フランドン農学校の生徒:
豚は水やスリッパ(!?)や藁を食べて
上等な脂肪や肉にこしらえる
豚の体は生きたひとつの触媒だ
ブタは白金と比べられたことに気をよくする
1匁30円として、自分が20貫だと60万円になる
第一流の紳士なのだとにやにや喜ぶ
ところが豚の幸福も、あまり永くは続かなかった。。。
ラクダ印の歯磨き楊枝を見て、体中の毛が
風に吹かれた草のようにザラッザラッと鳴った
(こういう言い回しにいちいち心打たれるなあ!
豚はけして自分が魯鈍とか、怠惰とかは考えない
豚はずんずん肥り、先生は亜麻仁をあげるよう指示する
豚
あいつらは俺に食べ物はよこすが
時々まるで北極の空のような眼で俺の体をじっと見る
実になんともたまらない
ああ、恐い
殺される前の月
「家畜撲殺同意調印法」が王から発令され
家畜から死亡承諾書の調印が必要になった
牛も馬も主人に無理に強いられて印を押した
(殺す許可を本人からとるってヒドイ話だ・・・
豚は流暢な人間語で校長に挨拶した
豚:このごろは気がふさいで仕方ありません
校長は今日は証書は諦めて行ってしまう

畜産学の教師がまたやって来て
するどい目つきで豚の頭から尻尾まで眺める
教師:
も少し室を暗くして
やる前の日には、なんにも飼料をやらんでくれ
豚:
やる前の日って何だろう
どこか遠くへ売られるのか
これはつらいつらい
生徒:早くやっちまえばいいな
生徒:早いといいな 葱だって、あんまり永いと凍っちまう
豚
一体オレと葱と何の関係があるだろう
ああつらいなあ

とうとう校長が話をきり出す
校長:
この世界に生きてるものは、みんな死ななけぁいかんのだ
そこで実は相談だがね、私たちの学校では、お前を今日まで養ってきた
私の処ぐらい、待遇のよい処はない
ここにお前の前肢の爪印をひとつ押してもらいたい
それだけのことだ
明日なんてそんな急でもないだろう
ごくあいまいなことなんだ
豚:いやです、そんならいやです どうしてもいやです
豚は泣いて叫んだ
校長:
お前もあんまり恩知らずだ
犬猫にさえ劣ったやつだ
校長は怒って出て行った
豚:どうせ犬猫なんかには、はじめから劣っていますよう
豚はあらんかぎり泣き出した

助手:
すてきに肉が落ちたじゃないか
品評会へも出せぁしない
校長がすてきなぶま(不間 間抜けなこと)をやったんだな

教師:
少し運動させるんだ
気分が直ったらキャベジのいい処を少しやれ
助手:少しご散歩はいかがです
ピシッと鞭をあてて、豚は仕方なく歩く

助手はチッペラリーの口笛を吹いている
チッペラリー:
It's a long way to Tipperary
はるかなチッペラリー イギリスの歌
豚
この世はほんとうにつらい
本当に苦の世界なのだ
教師:
こいつは神経性栄養不良なんだ
骨と皮だけにならないうちに決めなくちゃ
肥育器を使うとしよう

校長:
その身体はみんな学校のお陰で出来たんだ
いい加減に判をつかないか
豚は泣きながら印を押した

足を縛り、ズックの管を咽喉に押し込み
バケツの中のものを漏斗で胃に送る
これが強制肥育だった
豚の気持ちの悪いこと、まるで夢中で一日泣いた
(今でもこんな風に無理やり太らせているのかなあ?汗
豚:
これはあんまりひどい
ひとの体を枡ではかる
教師:
ちょうど明日がいいだろう
今日はもう餌をやらんでくれ
豚は肥り、歩くごとに息がはあはあした
小使がブラシをかけ、豚の毛でできているのを見て
馬鹿のように叫んだ
生徒がたくさんやって来た
ピカッと白光のようなものがちらばり
赤い火が水のように横に流れ出した
助手が大きな小刀で豚の咽喉をザクッと刺しました

その晩、空はよく晴れて、金牛宮(占星術における呼び名でいうとおうし座)もきらめき
つめたく光る弦月が雲にそそぎかけ
雪の底に豚はきれいに洗われて
八きれになって埋まった
夜はいよいよ冴えたのだ

※「作家別」カテゴリー内「宮沢賢治」に追加します
青空文庫
ヴィーガンもどきな私には、改めて肉食は止めようと思う話
読んでいて気分が悪くなった/汗
ひとり殺すのもこうなのに
工場化されているところではもう
人々の感情は完全に麻痺しているんだろう
「有難く食べる」と言っても
こうして動物が言葉を話せるとなると
やっぱりひとつの大切な命には変わりない
賢治も仏教の観点から描いたのだろう
冒頭の失われた原稿にはなにが書かれていたのか?
賢治の物語には完成してないものも多いが
それでも物語にどっぷり浸かることが出来る
それを絵本にしてくれて有難い
【内容抜粋メモ】

フランドン農学校の生徒:
豚は水やスリッパ(!?)や藁を食べて
上等な脂肪や肉にこしらえる
豚の体は生きたひとつの触媒だ
ブタは白金と比べられたことに気をよくする
1匁30円として、自分が20貫だと60万円になる
第一流の紳士なのだとにやにや喜ぶ
ところが豚の幸福も、あまり永くは続かなかった。。。
ラクダ印の歯磨き楊枝を見て、体中の毛が
風に吹かれた草のようにザラッザラッと鳴った
(こういう言い回しにいちいち心打たれるなあ!
豚はけして自分が魯鈍とか、怠惰とかは考えない
豚はずんずん肥り、先生は亜麻仁をあげるよう指示する
豚
あいつらは俺に食べ物はよこすが
時々まるで北極の空のような眼で俺の体をじっと見る
実になんともたまらない
ああ、恐い
殺される前の月
「家畜撲殺同意調印法」が王から発令され
家畜から死亡承諾書の調印が必要になった
牛も馬も主人に無理に強いられて印を押した
(殺す許可を本人からとるってヒドイ話だ・・・
豚は流暢な人間語で校長に挨拶した
豚:このごろは気がふさいで仕方ありません
校長は今日は証書は諦めて行ってしまう

畜産学の教師がまたやって来て
するどい目つきで豚の頭から尻尾まで眺める
教師:
も少し室を暗くして
やる前の日には、なんにも飼料をやらんでくれ
豚:
やる前の日って何だろう
どこか遠くへ売られるのか
これはつらいつらい
生徒:早くやっちまえばいいな
生徒:早いといいな 葱だって、あんまり永いと凍っちまう
豚
一体オレと葱と何の関係があるだろう
ああつらいなあ

とうとう校長が話をきり出す
校長:
この世界に生きてるものは、みんな死ななけぁいかんのだ
そこで実は相談だがね、私たちの学校では、お前を今日まで養ってきた
私の処ぐらい、待遇のよい処はない
ここにお前の前肢の爪印をひとつ押してもらいたい
それだけのことだ
明日なんてそんな急でもないだろう
ごくあいまいなことなんだ
豚:いやです、そんならいやです どうしてもいやです
豚は泣いて叫んだ
校長:
お前もあんまり恩知らずだ
犬猫にさえ劣ったやつだ
校長は怒って出て行った
豚:どうせ犬猫なんかには、はじめから劣っていますよう
豚はあらんかぎり泣き出した

助手:
すてきに肉が落ちたじゃないか
品評会へも出せぁしない
校長がすてきなぶま(不間 間抜けなこと)をやったんだな

教師:
少し運動させるんだ
気分が直ったらキャベジのいい処を少しやれ
助手:少しご散歩はいかがです
ピシッと鞭をあてて、豚は仕方なく歩く

助手はチッペラリーの口笛を吹いている
チッペラリー:
It's a long way to Tipperary
はるかなチッペラリー イギリスの歌
豚
この世はほんとうにつらい
本当に苦の世界なのだ
教師:
こいつは神経性栄養不良なんだ
骨と皮だけにならないうちに決めなくちゃ
肥育器を使うとしよう

校長:
その身体はみんな学校のお陰で出来たんだ
いい加減に判をつかないか
豚は泣きながら印を押した

足を縛り、ズックの管を咽喉に押し込み
バケツの中のものを漏斗で胃に送る
これが強制肥育だった
豚の気持ちの悪いこと、まるで夢中で一日泣いた
(今でもこんな風に無理やり太らせているのかなあ?汗
豚:
これはあんまりひどい
ひとの体を枡ではかる
教師:
ちょうど明日がいいだろう
今日はもう餌をやらんでくれ
豚は肥り、歩くごとに息がはあはあした
小使がブラシをかけ、豚の毛でできているのを見て
馬鹿のように叫んだ
生徒がたくさんやって来た
ピカッと白光のようなものがちらばり
赤い火が水のように横に流れ出した
助手が大きな小刀で豚の咽喉をザクッと刺しました

その晩、空はよく晴れて、金牛宮(占星術における呼び名でいうとおうし座)もきらめき
つめたく光る弦月が雲にそそぎかけ
雪の底に豚はきれいに洗われて
八きれになって埋まった
夜はいよいよ冴えたのだ
