メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

怪談えほん 8 『くうきにんげん』 綾辻行人/作 岩崎書店

2021-03-16 12:36:32 | 
「絵本・児童書」カテゴリー内に追加します

綾辻行人
1960年 京都生まれ
学生・院生時代は京都大学推理小説研究会に在籍
1987年『十角館の殺人』で作家デビュー
新本格ミステリームーブメントの契機となる
2009年 学園ホラー『Another』でも人気を博す


牧野千穂
1965年生まれ
ステーショナリーメーカーの商品企画デザイナーを経て画家となる
パステルによる独特の深みのある絵で
書籍の装画や挿絵を数多く手がける


東雅夫
1958年 神奈川生まれ
アンソロジスト、文芸評論家
1982年『幻想文学』を創刊し、2003年まで編集長を務める
現在は怪談専門誌『幽』編集顧問
監修書に「怪談えほん」「京極夏彦の妖怪えほん」シリーズなどがある



SNS かどこかで見つけた牧野千穂さんのイラストを見て
私の大好きなミヒャエル・ゾーヴァに似て
動物をモチーフとした不思議な感覚の絵にひと目惚れ

Instagram でも様々な本の絵を描いていたり
絵本もたくさん出しているようなので
少しずつ掘ってっていきたい






「怪談えほん」シリーズは
他にもたくさん出ていて
私の好きな宮部みゆきさんも書いている





児童書が好きな私としては
絵本とは心を豊かにして
読むと心温まるものであってほしいと思っているが
こんなに可愛い絵で怪談って変わった試み


空気人間は世界中どこにでも大勢いて
近くにいても空気みたいに目に見えない
小さな隙間があったらどこにでも入っていける


うさぎの被り物をしたような小学生くらいの女の子が
ちょうどこの本を借りた私の近所の図書館にそっくりな
絵本コーナーで絵本を読んでいる






俯瞰した構図

他にもいろんな可愛い動物の被り物をした子供達、大人達…
彼らも皆空気人間なのだろうか?


少女は何棟も並ぶ集合住宅に一人で帰宅して
郵便受けから鍵を出して家に入る
いわゆる鍵っ子









大型冷蔵庫から母親が用意したと思われるブドウを出して
メモには「食べていいよ」と書かれている






なにか飲みながらベランダから外を見ている
その隣にもうひとつの手の影が映っている
これが空気人間の手?






左右のほっぺたに同時にそっと触ると
空気人間に変えられてしまう

空気人間に変えるには2人の力が必要だという
一体何のことを示唆しているのか?
本人とその心の中の自分ということだろうか


最後のページは
いくつもある同じ形をしたベランダから
少女が消えて、カーテンが風で舞い上がっている





少女はとうとう空気人間になってしまったのか?
それともこの高さから飛び降りて消えてしまったのか

怪談というよりも
現代に生きる人々の心の隙間や影について描いている気がする

どうやら黒猫2匹だけが空気人間も見えるようで
玄関までついてきている


生きているのに誰からも見えない
声を出しても誰にも聞こえない
泣き叫んでも誰にもわかってもらえない


そんな気持ちは誰でも一度は陥ることがあるんじゃないだろうか


核家族の生活になり
両親は共働き
子供は一人でご飯を食べることが多くなったと聞く


こうした画一化したアパートでの
何気ない日々のくらしから
子供の豊かな心が育つだろうかと心配になる


思い返すと私も鍵っ子だったが
周りには自然があふれ
時間を忘れて遊ぶ友達がいた

春にはいろんな所にオオイヌノフグリが咲いて
草花のベッドに寝転んでいろんな話をした


特に子供時代のそうした体験は
大人になっていろいろな場面で思い悩む時にも
ふと思い返して、心の平安を保つ大事な鍵になっていると思う


学校、塾、習い事に追われる今の子供達には
そうゆう遊びの時間がどれだけあるだろう

これは大人にも言えること
心も体も空気のように空っぽになってしまう前に
もう一度よく考えてみたい




コメント    この記事についてブログを書く
« topics~柴犬のコタロウくん... | トップ | ATP500 ドバイDuty Freeテニ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。