メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

少年少女SFアポロシリーズ 7 『月こそわが故郷』 福島正実 岩崎書店

2021-04-25 11:34:33 | 
1970年初版 定価450円

ブックデザイン/金森達
表紙・口絵・挿絵/中山正美
写真提供/USIS


「ジュヴェナイル」カテゴリーに追加します



せっかくハードカバーのジュブナイルなのに
読み始めて途中でぷっつりと終わる短編集だと分かってガッカリした

文庫のショートショートのようで
ルナシティなどの設定や登場人物が
若干かぶっていて、それならなおさら
1冊の長編にどっぷり最後まで引き込んで欲しかったなと思う

尻切れトンボのようなまとめ方で
小説とも言い難いほど短いものもある

でも、福島さんと言えば、眉村卓さんとともに共作した方では?

ヴェルヌやウェルズらとともに並んで
シリーズに1人だけの日本人作家として加わるくらいだから相当だ

このアポロシリーズも8冊全部
きっとどれも面白いのだろう






タイトルからして探検ものかと思ったら
謎のウイルスとの戦い

その情報が大国の政府によって秘密にされたり
突然変異で死者が拡大し、ワクチンを作る件など

思いきり今とリンクして
せっかく冒険の旅に行こうと思ったのに
すっかり現実に引き戻された感じ

他にも大地震で原発が壊れるなんて
3.11を予言するような展開にゾッとした

原発が増えるに従って、地震大国の日本で
十分起こりうると分かっていたのに

いまだ懲りずに利用して、増やそうとまでしている
21世紀の未来の世界にもガッカリだ



 



1960年代に月に到達し
今ごろはもう月に移住していると書かれているのに
そうならなかったのには何か理由があったのでは?
と都市伝説的なことも考えてしまう

月の裏側か地下に都市があるとか
なんらかの秘密があるから一度行ったきりのままで
実は交信は続けているとか

それらのたくさんの謎もそろそろ市民に明かされる日が近いかも


【内容抜粋メモ】












月こそわが故郷(ふるさと)
50年前の7月21日、初めて人間は月に到着

今では人口5000人のルナ・シティ、ソユーズ市、ヨーロッパ市ほか
7つの都市や数えきれないほどの無人観測所があり
「不毛の地」と言われた月は科学技術の最前線となった






星島一郎、ボブ・オハラ、リーダーのジム・ハリソンは
月を故郷とする月二世のため身長が2m超える細身

今日も地球からの観光客が宇宙船でやって来て
ボブ:不潔なビールスのたかったブタどもが!

他にも7人ほどの仲間が集まる
月では人種の違いは問題ではない

月着陸50周年記念祭は1週間後
月を地球の植民地支配から取り戻す革命計画を立てている

ルベリエは昨夜から保健センターに入った
悪性の地球風邪にかかって、高熱にかかった様子は見ていられないほど酷い

2001年に起きた悲劇を思い出す
ハリソンの家族も地球から持ち込まれたビールスで一家が全滅した
ワクチンが間に合わず、600人が死んだ大事件だ

1週間を待たず行動を起こそうと決起し
ヨーロッパ市に向かうボブ、作業ドームに向かう星島らの二手に分かれる


自動管制システムで走るモノレールに細工して停車させ
車掌を襲い、通信機を銃で破壊
「月世界解放委員会」と名乗り占拠する

乗客を捕虜にし、抵抗すれば、零下120度の外に
宇宙服なしで放り出すと脅す

ジェトロ電機のエーブル副社長:
月は地球の援助なしではどうにもならないじゃないか
月開発に尽くした、これがお返しか?

カート:
月が有利な投資と分かると、利権を貪った
お前たちから月っ子の手で解放するんだ!

そう言うカートも月ビールスに感染していることが分かる


月医学研究所の秦博士は、まさにそのビールスのワクチンについて
誰も知らないアイデアを伝えるためにルナ・シティに行くところだった

月インフルエンザは放っておけば1か月で月を全滅させる脅威のため
モノレールがドームに入ればシティ中に蔓延してしまう


ハリソンはそれをも革命に利用しようとする

ルナ・シティに月インフルエンザのことを警告し
解放を成功させる計画に変えて
エーブルに無人観測所まで案内させる

真空の宇宙では光が散乱しないため
影と光がくっきり分かれて、距離感が狂う

気密服が少しでも破れれば、空気が漏れて窒息死するか
極寒にさらされて凍傷になる世界


途中で隕石嵐に遭う
地球では空気の層で燃え尽きるが、月ではそのまま落下してくる
だだっぴろい平原には隠れる所もない

機関銃のような攻撃を危機一髪で避けて
ようやく無人観測所に着くが、隕石嵐で破壊され
予備の酸素ボンベも散乱して補給が出来ない
革命も失敗だと絶望する星島





秦は赤い塗料でワクチンの製法を書き始める
秦:修理班が来て見つけてくれるだろう

ハリソンは自分もろとも月世界も道ずれにしようと文字を消すよう銃を向ける


そこに観光船セレーヌ号が来て、美しい女性の声がする
助けを叫ぶエーブルを射殺するハリソン

自分の命より、月世界のためを思う姿に胸を打たれた星島は秦に味方して
父から習った柔道の背負い投げをして、ハリソンの酸素ボンベを抜く


観光船に乗り、ハリソンを縛ってから圧縮空気を吸わせるが
もう月インフルエンザの症状が出ている





ハリソンが反乱軍と知ると、観光客は
「そんな連中は精神病院にぶちこめばいいんだ」
「僕たちまで感染してしまう 放り出せ!」
と言い

無理解、偏見にカっとなる星島だが
秦は星島を反乱軍の一味とは言わずにかばう

急いでルナ・シティに連絡するよう言うが応答がない

ボブらが占拠してしまったに違いないと思うが
ソユーズ市も月インフルエンザの猛烈な勢いで感染したと分かる

秦は月と地球に放送を流し
国連月世界開発委員会、世界保健機関、ルナ・シティ評議委員会に
すべての争いを一時休戦して協力して欲しいと呼びかける


観光船の客は月二世のせいだと星島に襲い掛かる
身のこなしは月人のほうが軽いが、腕力は地球人のほうがはるかに強い

運転手にぶつかり、そのまま垂直の斜面を転げ落ちる

運転手は即死、セレーヌ号は転倒しそうに傾く
秦はタンクの下敷きになり、腰骨を折る


無電気も壊れたため、動ける星島とガイドのキャシィがルナ・シティまで歩くことになる

太陽光線を浴びて熱くなり朦朧としていると

キャシィ:
あなたもビールスにヤラれたのよ
私は月人
月ビールスは侵略者のあなたたちを地球に追い返すための武器よ

宇宙服を脱ぐと昆虫人間に変わる
ルナ・シティにもうじゃうじゃと地底世界にいた昆虫人間がいて
死体を山積みにして焼いている


ルナ・シティの保健センターで目が覚める
月インフルエンザを発症して悪夢を見ていた星島

秦も入院していて、腰の骨折でもう歩けない
ワクチンが製造され、出来るそばから急送し
星島も助かったが、他のメンバーは捕らえられた

革命は不発に終わり、月二世には警察の見張りがついている
星島は秦の擁護で保護監視になった

国連は月を宇宙病汚染地帯に指定したため
ルナ宇宙空港には地球に逃げようとする人々でごった返し
ケンカも起きるパニック状態となる





電気や空気清浄をする人々もストを起こして
空気が濁り、食料不足となる

鎮まると思われた月インフルエンザも勢いをぶりかえす

都市の大エレベーターが運転中に事故を起こし
ギュウギュウ詰めの観光客がそのまま窒息死した
(だから密閉空間はイヤなんだよ/汗

地球人と月二世が入り乱れてケンカとなりけが人も続出


秦:
君はなんとも思わないのか?
今こそ先頭に立ってルナ・シティの秩序を回復すべきだ

しかし星島は、月はどうせ地球のものだ
どうにでもなればいいと投げやり


キャシィがテレビをつけると
オーストラリアの宇宙飛行学校の生徒が
月を救おうと志願したというニュースが流れて
地球人の青年に負けてはいられないという気持ちがおき起こる

月はまだ自給自足システムが整っていない
金属、化学薬品、土木の機材などを大量に地球から送らないと
日常生活にも困ってしまう

月を救うのは月っ子なのだ!


久しぶりにアパートに帰り、父母と会う
父は原子力発電の技師、母は合成食品工場の栄養管理士

父:私たちが計画している特別作業隊に志願しないか?

星島はやる気を出して、電話で友人をかき集める

月解放委員も作業隊に加わることが許され
その活躍ぶりが人々に認められる


作業隊が結成されて5日後、ルナ・シティは激しい月震に襲われる
全市内が停電、原子力発電は大爆発しそう
放射能に晒されていると聞き、作業隊が出動する





中に入るとガイガーカウンターが高い数値を出し
月面服でも2時間以上いたら命の危険となる
体の細胞を変え、原子病で死ぬのだ

原子炉のボイラーが爆発し、制御装置を分解し
手作業で直すしかない

父が真っ先にトンネルに入る
みんな時間も忘れて1本1本ハンドルを回して制御棒を炉心に押し込むと
炉の熱は下がり始める

「月植民地ばんざい」の声があがる


国連は月植民地に特別予算を出すと決定
中止された記念祭もやることになった

秦は無重力状態のほうが動けるため
宇宙ステーション勤務につくと聞き

どんな運命にも負けず、仕事に打ち込む秦にまた感動する星島
自分もいつかそうなりたいと誓う



執念
国連宇宙局は、来年秋、土星に第一回遠征隊を送る計画
着くのに2年、滞在に6か月、帰りに木星を周り
6年後に地球に帰る大計画

乗員は12名 うち2名は伊志井やすしら宇宙アカデミー学生から選ばれると決まり
それ以来、みんな成績を張り合い険悪な空気になる


イシイらは第三宇宙ステーションのドッキングを完了させる
コントロールを失った作業艇が回転し
命綱が切れ、イシイは宇宙の深淵に猛スピードで飛び出してしまう大事故が起きる








気づくと大きな月が見える 通信も故障
酸素の残りは2時間40分
やがては宇宙塵となるのか

宇宙ステーションから作業艇、宇宙タクシー、宇宙バスまで動員して捜索隊が出る

事故の原因は想像できるが、はたして本当に事故か?
誰かが仕組んだのでは?

きょうだいのような仲間を疑い始めるイシイ
とくにマックは1年生の時からのライバルだ

このまま死ぬものか
地球に戻り、なぶり殺してやる

イシイは地球に向けてジェットガスを全力噴射する

いよいよ死が近づくと恐怖や怨みも消える


「死にやがったら承知しないぞ!」と罵倒するマックの声で
作業艇の中で意識が戻る





マック:
お前は迷子のまま死ぬ奴じゃない
僕は他の連中と離れて地球の近くを捜索したんだ
探し出せなかったら一緒に死ぬ覚悟だった

イシイは呪い殺すつもりだったとは言えず、心配かけたなと言い
ライバルを疑ったことを申し訳なく思う



月への転校




親友のタカシが急に月のムーン・シティに転校することになった
お父さんがムーン・シティの宇宙通信技師になるからだ

21世紀の今では南極へも数時間で行けるが
月は用のある人しか行けない規則がある

リョウタはタカシを学校の屋上にあるエアバスまで送った


帰宅すると父が仕事で正月に帰れないと聞いてガッカリする
宇宙人の出す電波をキャッチして調べるため
リョウタの父は宇宙ステーションに勤めている

太平洋の海底都市に住む叔父が遊びに来ていて
宇宙人は宇宙を飛び回るくらいだから高い知能を持っていて
侵略戦争なんてとっくにやらないに違いないと話す

リョウタは宇宙人の大宇宙船団が
宇宙ステーションを攻撃するニュースを見る悪夢を見る

母はリョウタのために月移住をためらっていると聞いて
やがて月でタカシと地球を訪れる宇宙人を迎えるんだと嬉しさでいっぱいになる



SOSセレーヌ号
ルナ・宇宙空港ロビーは地球行き定期宇宙船の乗り降りで混む
木越は地球人を「地もぐら」と呼び軽蔑している
(この後の作品でもやたらとこの言葉が出て来る

途中で同じルナ高校のサリー・オハラを見かける
背が高く、美しい生粋の月っ子だ

サリーの兄とその妻と一緒で、地球人の妻は金切り声で怒っている

妻:
私、月なんかで暮らすなら死んだほうがましだわ
重力も、変な臭いの人工空気もみんなイヤ
早く帰りたいのよ!

ここではよく見られる光景だ
地球に帰りたいと泣き喚く地球人は珍しくない


木越は空港のパーラーで1人座っているとサリーが来る
木越:バイト料が入ったから、合成じゃなく化学農園の生ジュースをおごらせてくれよ





サリー:
地球人を奥さんにするからいけないんだわ
ごめんなさい、あなたも地球人だったわね

月ではまだ人口1万人未満で人手不足のため
高校生は義務としてバイトをしなければならない
サリーは観光月面バス「セレーヌ号」のガイドの仕事を見つけたと言う

20世紀末、地球-月間の定期便が開設して以来
運賃は安くなったが、まだまだ月旅行は金持ちの政治家や
技術者などに限られている


ジム・ラッセル:地球人は大抵ろくでなしばかりだ

ジムは同級生で、父母は月の裏側の銀河観測用電波天文台に勤めている

木越:地球には60億人もいる 本当に知るには見てこなきゃ分からない

ジム:
お前もなにかと言うと地球自慢する低能か
あの重力地獄に行ったら跳ぶことも出来ない
空気は汚染され、ウイルスがうようよしてたちまち伝染病にかかる
なにが青い空、青い海だ

自由な考え方が出来るはずの若い世代同士で言い合うのは残念だと思う木越


木越は、心理学の謝先生と月に多い閉所恐怖症の話をする

地下都市の月には空も外もない
性格の弱い人はよく閉所恐怖症にかかり
ひどいと入院して精神療法を受けねばならず
半分は地球に戻らなければ治らない

(地球ですら息苦しいのに、私も耐えられないな↓↓↓


セレーヌ号が消息を絶ったとニュースが入り驚く
大規模な隕石嵐が起きて遭難したと思われる
酸素はあと10時間足らず

ジム:父が言うように観光客なんか全面的に禁止すべきなんだ!

先生:ルナ高校にも練習ロケット船が1隻あるから捜索に参加しよう

木越もジムも志願する


月の昼間は太陽が照りつけ
コロナやプロミネンスまではっきり見えて
まともに見たら目が潰れる

月の塵は水の分子ほど小さい粒子のため
車が通った跡もキレイに消えてしまう

数年前、1台の月観光車が月塵に落ち
全員が窒息死する悲劇も起きた(地獄!

ロケットの燃料も減り諦めかけた時
クレーターの山裾を探してみようと提案する木越

ジムはすぐにジェット・フライヤーをつけてエアロックから出て行き
木越も後を追う
上昇限度は500m

谷底に巨大な氷を見つけて驚く
40億年前に月が誕生した時、地核の水は岩に閉じ込められ
地表に出た水はすぐに蒸発した

ジム:
これは大発見だ
月世界のなにより大切な水と酸素がどれだけとれるか分からない

そこに横転したセレーヌ号も見つけて、サリーらを救う



金星あらし
良平は自分との約束を破って地球に行った親友の明夫に怒る

地球の日本にいる叔父が東京の高校に入れと言ったが
高校卒業したら2人でビーナスバーグの大学に入ろうと約束していたのに

ヨーロッパ系の青年ユーリも妹を見送りに
空港ドームに来ていて良平に声をかける

ユーリ:
君は金星生まれか? 一度も地球に行ったことがないのか
とても景色がいいぜ


金星にあるのは、砂漠、沸騰する泥沼、有毒ガス
永遠に晴れない赤黄色の雲だけだ


ドームを地下へ降りると、原子力発電所、空港管制本部
各植民市に向かうモノレールへの通路がある

ここ数年でかなりの移民が金星を見限って地球に引き上げた

地球連邦政府が決めたルールで電力節約のため
5人以上乗客がいないとモノレールを動かさないと言う所員に
ユーリがなにか証明書を見せると渋々ゲートを開ける

どこかのお偉方の息子かと思い、構わずモノレールに乗る良平


途中から金星あらしの前触れが現れる
風速計は110m 地球なら頑丈な建物でも倒壊するレベル

金星の自転が遅く、昼から夜に向かい大気が大移動するため
朝と夕方の2回、この強風が吹く

ユーリは異変を感じて、急ブレーキをかける
電子頭脳が狂い、ガイガーカウンターが鳴る





ユーリ:
近くに放射性物質が埋蔵されている すごい量だ
金星は太陽系中の最大の資源の宝庫になるんだ!

僕は金星移民の子だ
最近、地球・金星合同資源調査委員会になって帰ってきたんだ

僕らは同じ人類なんだよ



金星からきたロボ
2か月前、水星航路の宇宙船が隕石嵐に襲われ
監視艇は太陽へ落下し、艇長である新平の父も亡くなった

それ以来、学校一の元気者の新平は無口になり
宇宙航空高校の試験が近いのに勉強もしないで
学校にも行かず、ブラブラするようになった

ロボだけが毎日訪ねてきて話し相手になってくれた





2人でロケット置き場に来る
祖父はここの管理人で父の死後、新平を育ててくれている

ここはロケットの墓場
水星探検に出たマーキュリアン7号
木星に人間を運んだジュピター105号などがある


地球連邦警察が立入禁止にしているのに火星タバコを見つけるロボ

太陽系中を荒らす宇宙ギャングの大幹部の脱獄囚2人が現れ
ロケットで逃亡するため、新平に点火キイのありかを聞く

ロボ:
キイのある金庫には警報ビームがあり、警察に通報される
僕たちを一緒に連れてってくれると約束すれば取ってくるよ
新平もそうしたいんだよな?
僕が管理人の所に行ってくる

ロボの大胆な行動に
彼は本当に金星の中学から転校してきたのかと疑う新平

このままではいけないと、体当たりしてキイを奪い取るが
ロボが殴りかかり、新平もロボもケンカとなる間にロケットは発射してしまう

だがロボは笑って、キイに誘導ビームをつけたから
すぐ手配されると報告する

ロボ:
僕は金星警察の少年隊員
やつらの組織を壊すために働いていたんだ

新平:
僕も心を入れ替えて勉強して
父さんのように立派なパイロットになるよ



奇跡の小惑星
原子力宇宙船テラ号は、人類史上初の大宇宙探検に出た(やっと冒険もの!

目標は木星で、火星の基地から片道200日かかる
火星から5000万kmはなれ、木星までは5億kmある

人類は1960年代の終わり、月を征服、その後も金星、火星を征服してきた
今度は、ソ連、アメリカ、日本で木星に行く

(ヒトは知らない場所があるとどこも“征服”したがる生き物なんだな
 未来になっても先進国が同じなのも可笑しい設定

テラ号は危険な小惑星地帯に来る
ここを通る宇宙船は遭難することが時々起きる

これまでにない巨大彗星が近づいてきたことに気づく
避けるために進路をかえると帰る燃料がなくなる

尾をかすめるくらいなら大丈夫だろうと思うが
彗星の引力に負け、放射能を帯びていたため電子機器も故障する

このままだと彗星とともに宇宙の果てまで行き
戻るには100年かかる





大佐はメインエンジン全開で脱出するよう命令
恐ろしいショックが襲い潰されそうになるが
テラ号の原子力エンジンが彗星に勝つ

だがそのお蔭で無限の宇宙空間を彷徨うことになる

セキヤマ小惑星を見つけて喜ぶ博士
博士:あれに着陸すれば、自然に木星まで連れていってもらえる

元気が出た隊員らは小惑星に向かう



救助はまだか
アキラは宇宙パトロールのパイロットだが
3年前、エンジン故障で地球をはるかに離れたウォルフ第六惑星に不時着し
まだ地球からの救助が来ない

ウサギに似た小動物を銃で狙うが逃がしてしまい
召使のマイクが捕り怒る

アキラ:お前は俺の言う通りにしていればいいんだ!

マイクは忠実で、怪獣に襲われた時も体中に傷を負いながら助けてくれた
底なしの砂に落ちた時も自分が沈むのも構わず引き上げてくれた

アキラ:召使なんだから当然だ 地球に帰ったらお払い箱にしてやる


その時、ようやく宇宙パトロール艇が降りてきた
アキラは救われ、隊員はマイクに銃を向けたため慌てて止める





隊員:
なぜ止める? 艇にはロボットを乗せる余裕はない
残しておいてもムダだから壊すのさ

アキラ:マイクは僕のために何でもしてくれたんだ

隊員:ロボットだから当然だ

アキラ:
僕もそう思っていたが、マイクは僕の友だちだったんだと今気づいた
マイクがいなかったらとっくに孤独で狂っていただろう
マイクが行けないなら僕も残る

マイク:
あなたはまだ地球でたくさん仕事がある
僕は残って、動力エネルギーが切れるまでこの惑星の調査を続ける
アキラ、行きなさい

アキラ:僕は必ずまたこの惑星に帰ってくるぞ!

(このロボットとヒトの友情の話が一番良かったなあ





【おわりに 福島正実】





1969.7と10月にアポロ11号、12号が4人のアメリカ人を月面に下してから
「月は天文学の領域から地球物理学の領域にうつった」と言われた

「月はいよいよSFの舞台ではなくなった」とも言われた

30~40年前は月は当時のSFの一番の活動範囲だった
秘密基地があり、正義の英雄と宇宙人の“華々しい戦い”が繰り広げられる
宇宙冒険小説がたくさん書かれた

今ではかなりバカバカしく見えてくる

でも、むしろこれまでのどんちゃん騒ぎではなく
これからの人類が未来を築いていく舞台として重要となった

アメリカもソ連も今後、月に南極基地のようなものを設けるだろう
21世紀には都市が出来るかもしれない

月は地球文明の最前線となり、地球との間に問題も起こるだろう

そういうことを思って書いたのが本書をはじめとする
月が舞台のSFでした

今後もどしどし書かれればいいと思っています






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