メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ジュニア版 世界の名作推理全集 4 『黄色いへやの秘密』 ガストン・ルルー著

2022-08-14 15:13:00 | 
昭和58年 初版 平成2年 再版 中島河太郎/監修 秋田書店
表紙デザイン:岩尾収蔵 表紙・口絵・挿絵:斎藤寿夫

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください

「ジュニア版 世界の名作推理全集」は全16巻
『グリーン家殺人事件』が気になる






表紙のイラストがあまりにも怖かったので
再生紙で簡単にカバーを作ってつけたほど

(最近のAmazonの梱包材は立派な再生紙で
 メルカリで冊子などを包んでそのまま送れて便利v

探偵、推理小説は面白いんだけれども
ほとんどが血生臭い殺人事件なんだよね
なんかもっとトリックを使った
他の犯罪事件もあればいいのになあ


冒頭にもあったようにこれまで読んだどの推理小説よりも
最も手の込んだ密室での殺人未遂事件とトリック

読者にこの秘密が解けるだろうかという
作者からの挑戦状を叩きつけられている

これまでと違って1人の探偵ではなく
名刑事と若い有能記者が競って別のやり方で別の犯人を探している
それを記者の友人である男性が読者に説明しているという構成


私も早速、真犯人を当てるゲームに参加した

最初に疑ったのは、マチルドともうすぐ結婚が決まっていたという教授
彼女に急に結婚を断られてモメたとかで
密室ではなく普通に2人で部屋にいて犯行に至った

けれども記者がパーティーで聞いた2人の謎の会話と
教授は「罪を犯していない」と誓っているから犯人から外した

とするとマチルドの自作自演?
それともまさかの父親が自分の研究のために娘を襲ったとか?

第三者の男が現れて、赤い髪や髭が変装だったとしても
あまりにも不可能な形で部屋から消えたので
謎は深まるばかり・・・


【内容抜粋メモ】

■はじめに 山村正夫
本格推理小説で一番重要視されるのはトリック 中でも密室トリック
世界的名トリックとして今なおベスト10の上位にあるのが本書



■第一章
1892年 奇怪な殺人未遂事件の記事が載った
グランディエ館に住むスタンガースン博士が実験室で研究中に
隣りの黄色い部屋にいた娘マチルドが襲われ重傷







老僕ジャックじいさんの供述
近くに住む占い師の老婆アジュヌーばあさんの飼うネコに怯えていた
「人殺し! 助けて!」というマチルドの声がして銃声が響いた

門番ベルニエ夫婦と4人でドアをぶち破ると
小さな部屋は荒らされ、マチルドはノドに爪痕があり
こめかみから血を流して倒れていた

壁やドアには男の血みどろの手の跡
血に染まったハンカチ、ベレー帽が落ちていた
大男の足跡もたくさんある

ジャックじいさんのピストルが見つかり、それで2発撃ったと分かる
1発は天井、もう1発は犯人の手を貫通した
部屋に抜け穴はない







史上最年少の事件記者・ジョゼフ・ルレタビーユ
ルレタビーユとはフランス語でゴムマリ小僧の意味
頭が丸くふくれていることから

難事件を見事に解決して話題になり
史上最年少の事件記者となり、18歳の今も有名

愛用のパイプをふかしてマチルドの事件について話す(ホームズぽいな
マチルドは誰かを怖れて、ジャックじいさんの銃を用意していた
婚約者で近く結婚する予定のロベール・ダルザック教授を紹介してほしいと頼む

マチルドと父は未来の科学を研究するために移住してきた
アメリカ帰りの科学者として世界的に有名
莫大な財産もある

マチルドは亡き母似の絶世の美人で
プロポーズする男性はたくさんいたが断って研究を続けていた


名刑事フレデリック・ラルサン




館の周りの足跡を丁寧に調べているラルサン
50歳くらい、ごましお頭、スマートで上品、顔色はくすんでいる

ルレタビーユはとても尊敬している
迷宮入りの事件を解決し、世界で有名なため
この事件でもわざわざロンドンから呼び出された



ルレタビーユの親友でパリで弁護士をしているサンクレール
今作の話し手
ラルサンから門番夫婦が逮捕されたと聞いて驚く

ルレタビーユは教授にいきなり「牧師館の楽しき夢よ!」
という詩のような謎の一節を口走り、激しいショックを受ける教授



■第二章
ダルザック教授が手袋をはめているので、握手を求めると
その手に銃弾の跡はないが、なにか深い事情を隠していることが分かる

現場は窓のない密室だから最初から殺す気で部屋にいたのだろうと推理
凶器がヒツジの骨って変わってるな






実験室の暖炉の中から便せんの燃えかすが見つかり
あの「牧師館の楽しき夢よ!」という文句が書かれていた!

犯人はベッドの下に隠れていて、マチルドに手を撃たれて
部屋が暗いために壁をつたって血の手形がついたと推理

ルレタビーユはマチルドの金髪を見つけて証拠とする



■第三章
予審判事が意識が戻ったマチルドの尋問を始める





父と娘は実験の合間に散歩した
ジャックじいさんのいない間、窓が開いていた時間があった

当日の夜、父と娘は珍しく実験室で夕食をとり
マチルドが先に部屋に戻った
父は森番に話しかけられて少し遅れた

その後も研究と続け、マチルドが部屋に戻ったのは夜の0時
以前から夜中に何度も妙な音がしていた

事件前夜、エリーゼ宮殿のパーティーから帰った時
怪しい人影を見たから怖くてジャックじいさんの銃を借りて隠しておいた

寝ていた時に首を絞められ、ハンマーのようなもので殴られそうになり
同時に銃を撃ち、気を失ったため、後のことは覚えていない







池の周りに女性のような華奢な足跡があるため、パリへ逃げたと推理
現場の男の足跡は警察を誤魔化すためにドダ靴を履いていたが途中で脱いだ

もうラルサンとルレタビーユは別々の方法で密室のからくりを見破っている様子

ラルサン:
直観に頼る推理は気をつけたほうがいいな
犯人は負傷したのではなく、鼻血を出したんだよ それをハンカチでふいた

ダルザック教授の足跡が、華奢な足跡と同じと気づいて驚くルレタビーユとサンクレール



実験室に関係者を集めて判事の前で検討会を開く
門番ベルニエは銃声は1発しか聞いてないと言う

博士:娘は事件の2日前、ダルザック教授と結婚しないと言い出した

そこに「犯人の動機の1つはモノを盗むためだった」
ルレタビーユが書いたメモを渡して、会議に加わる

ルレタビーユ:
ホコリをかぶった洗面所の床になにかの跡がある
その包みを盗んでここに隠して置いた
どだ靴と一緒に持って逃げるつもりだった
ジャックじいさんがいない間に家に入って
ベッドの下に隠れてマチルドを待った

実験室で博士の悲鳴がして、大事な実験の秘密書類が盗まれたと言う

ラルサン:
どだ靴、ハンカチ、ベレー帽はジャックじいさんのモノ
犯人はジャックじいさんに罪をかぶせようとした
犯行後は博士が1人だけの時に堂々とドアから出た
マチルドは自分でドアを閉めた
博士とマチルドは犯人を知っているが隠している

博士はそれを否定するが、ラルサンの推理を疑う者はいなかった

ルレタビーユ:僕だけは博士を信じていますよ


ラルサンが事件の翌日からステッキを持って歩いていることに気づく
人からプレゼントされたと答えるラルサン
調べると、ステッキを買ったのはダルザック教授と分かる





ラルサンはダルザック教授こそが犯人だと追っている



■第四章
ルレタビーユから「銃2丁持って館に来てくれ」と電報を受け取ったサンクレール
ダルザック教授はステッキなど買っていないと言う

ルレタビーユもエリーゼ宮殿のパーティーにいて
マチルドとダルザック教授が例の文句が書かれた便せんを読み

教授は「あなたと結婚するために、罪をおかせとおっしゃるんですか?」と言って
泣いたのを見ていた

2人の結婚を邪魔するライバルがいて、脅されているのでは?と推理するが
教授は「自分は絶対罪をおかしてない」と誓う



3日前の怪事件
ルレタビーユは老眼用の鼻めがねを出して見せ
門番のおかみさんが拾って渡したと言う

ルレタビーユ:
今夜こそ犯人が現れる
ラルサンはダルザック教授を追ってパリに行ったはず
フシギとダルザック教授が留守にしている時に事件が起きている

マチルドの部屋でなにかを探す犯人を暗がりで見たルレタビーユ
パリから戻っていたラルサンに話しても信じない






すべての廊下、出入口にそれぞれを見張りに立たせて
袋のネズミにしたはずが、煙のように消え失せた!
その後、変身用の赤毛のつけヒゲとカツラが見つかる





ルレタビーユ:
今夜に限って召使に暇を出したマチルドも怪しい
犯人が書いていた手紙も彼女が隠し持っているに違いない

あなたは事件の秘密を知っている
それを話してくれれば救えるかもしれない
魔術のような怪事件でも理詰めで解けないことはあり得ない!



アメリカ人の客 アーサー・ランス
宮殿のパーティー出席者で、博士一家とはアメリカで親しかった
馬車が嫌で毎回歩いて駅から館まで来る

ルレタビーユ:
「どんなことがあってもクビにしないと保証する」と
博士にサインさせると、門番夫婦は密猟をしていたことがバレたが
その代わりに協力してくれる

ダルザック教授がいない今夜、絶対、犯人が来る
マチルドが部屋に入れる工作をしていたんだ

サンクレールをランスの部屋に隠れさせ
ルレタビーユは廊下を見張り
誰かを見たら、カーテンをおろして知らせるよう約束する

マチルドは博士の飲み物に睡眠薬を入れるのを見る
ラルサンも眠ってしまう
みんなで夕食を食べた飲み物にも睡眠薬が入っていたのか






ランスのドアが開き、森番がスーツケースを持って行くのを見て
カーテンをおろすサンクレール

だが、ルレタビーユも眠らされていた
食事中飲み物を飲まないサンクレールだけが起きている状態

マチルドの悲鳴が聞こえ、男が飛び出したため
ルレタビーユを起こして、裏庭に追い詰めて銃で撃つと
死体は森番で、死因はナイフで心臓を刺されていた!


ダルザック教授の逮捕
マチルドはさらに重傷を負う
森番はランスのスーツケースを駅まで運ぼうとしていただけだった

エピネーシュール駅の駅員はダルザック教授を見たと証言し
殺人容疑で逮捕されそうになっても逆らわない教授

ルレタビーユ:
教授は犯人の名前しか知らない
マチルドはもう一方の名前しか知らないが
僕はどちらも知っている!


ルレタビーユとサンクレールは館を出て
ルレタビーユはアメリカに出かける



■第六章

重罪裁判所
法廷は超満員

ラルサン:マチルドの事件と森番殺害犯人は同じくダルザック教授です

ルレタビーユがアメリカから戻ったばかりの姿でそれに反論して裁判に参加する







ルレタビーユ:
真犯人はラルサンだったんです!
ラルサンは証言後、用があるといって逃げた

4年前、刑事として名声を上げたが
その正体は狂暴な大詐欺師で有名な悪漢バルメイエです

夕食で僕に睡眠薬を飲ませたのもラルサン
彼は眠るフリをしていただけ

4人で追い詰めた時、消えたのは、その中に犯人がいたからと気づいた
この鼻めがねは彼のもの

彼はマチルドを深く愛していた
事件の夜、ベッドの下に隠れ、マチルドを襲ったが弾丸が手に当たり
その後、ステッキを持って隠していた

気丈なマチルドは父に秘密にするため、研究に戻ったが
夜中にうなされて悲鳴を上げ、天井に銃を暴発し
ナイトテーブルに頭を打って倒れた
その時の血痕とブロンドの髪がある

ラルサンはダルザック教授との結婚を邪魔しようとして
犯人に仕立てるため、事件のたびにどこかに呼び出していた



十数年前の恋
ルレタビーユはアメリカで調べた事件の発端を話す

フィラデルフィアに住んでいた博士とマチルド
マチルドはジャン・ルッセルと名乗るフランス人に恋をして
ジャンはプロポーズした

博士が身元を調べると詐欺師と分かり
マチルドを叔母の家に預けた

バルメイエは彼女を連れ去って結婚
ある朝、バルメイエは逮捕され
マチルドは初めて大悪党と知って自死未遂するほどのショックを受けた

バルメイエが死んだという噂を聞き
すべてをダルザック教授に打ち明けた矢先、生きていることが分かった
宮殿で見せた文面はバルメイエからのもの

バルメイエは秘密をバラすと教授とマチルドを脅していたため
事件があるたび、教授は呼び出されて留守にしていた
大事な研究書類も盗んで脅しの材料にしていた

裏庭で森番を殺したのもバルメイエ
急いで部屋に戻り、ラルサンとして声をかけた








十数年前とはいえ、結婚して一緒に暮らしてたのに
刑事として現れて、家に泊めるほど近くにいても
全然気づかないっておかしくないか?!
気づいていて泊めていたのか???



あとがき 山村正夫
ルルーは1868年パリの郊外、中流階級の家に生まれた
弁護士となり、新聞に裁判記事や犯罪記事を寄稿して人気を得た
(それは個人情報漏洩ではなくて?

処女作が本書

エドガー・アラン・ポーが「推理小説」という形式を考えたのが1841年
その25年後にエミール・ガボリオは「ルルージュ事件」などでルコック探偵で功績を残した

ガボリオの影響を最も受けたのはシャーロック・ホームズを生み出した
アーサー・コナン・ドイルで『緋色の研究』は1887年

1907年にモーリス・ルブランが「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」を発表
ルルーのわずか1年前

イギリスのホームズ、フランスのルパン
2人の作家に強いライバル意識をもっても不思議ではない


ルルーは本書について「ルレタビーユはホームズの再来である」と言ったほど
挑戦したのは密室犯罪

他にも数多く発表したが、評判にならず
だが、この1作は永遠にミステリーファンに愛されるに違いない

ルルーは1927年、南フランスのニースで59歳で亡くなった(早いな





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