上田真而子・佐藤真理子/訳 初版 1982年(1989年 第33刷)
ロスヴィタ・クヴァートフリーク/装画
※「作家別」カテゴリーに「ミヒャエル・エンデ」を追加します
ミヒャエル・エンデ(ウィキ参照
『モモ』のほうが先なのか/驚
ノートから「読書感想メモリスト」シリーズを入力していた時に
肝心の名著の感想メモほどないことに気づいた 本作もそのうちの1冊
『モモ』も読んだ記憶があるのに、なぜメモ魔の私が記録を残さなかったのだろう???
児童文学だけじゃなく、同じ時期に読んだ名作シリーズの『風と共に去りぬ』などの大作ほどないのは
読後に相当感動しただけに残念すぎる
もう一度読むには長いし・・・
今作はどうしてもまた読みたくなって、調べたら、今は上下巻に分かれていたりするのか
私が昔買った、箱に入っていて、あかがね色に蛇2匹が描かれた布地の表紙のが欲しくて
神保町で尋ねたが、児童文学を取り扱っている本屋は少ないとのこと
amazonで調べたら、手頃な値段で、探していた装丁のものを運良く見つけたので買ってしまった
¥642+配送料=¥947 当時も今も3000円くらいだからお得な買い物をしたv
この画像はお借りしました
さほど傷んでもなくて、ちょうど、私があのまま持っていたら、これくらいじゃないかなという雰囲気
読む前からワクワク 初めて読んだ時の興奮が甦る
物語の中の少年同様、ストーリーに巻き込まれ、時間も空腹も忘れてのめりこみ
自分の持っている本が特別に思えた時と同じだ
バスチアンが幼ごころの君に会う前半の記憶はあるのに、
少年が新しい物語を作るたびに記憶を失うという設定だけは覚えていて、
肝心な後半の記憶がなぜか思い出せないのがずっと心にひっかかっていたのも、
ようやく思い出すことが出来る
最近は、エンデのbotもあり、作品以外の話の端々に深い深い哲学を持っていたことが分かり
本作にはそれが噛み砕かれ、すべて詰め込まれている気がする
私は1度読んだら、ほとんどリピートすることがないため、今度はしっかりストーリーをメモっておこうと思う
なので、また長くります
それぞれのキャラクターが、その後、またまったく別の物語を紡いでゆくが
「それはまた別の話」と置いておくのも粋なはからいだと当時も思った
これこそ、はてしなく続く物語
まるで、時空を超えた、パラレルワールドを描いたSFでもあるようだ
私たち人間が思い描けるものはすべて現実化できる力があると私は信じている
戦争も貧困も仕方ないと「容認」している間はけしてなくならない
同時にどんな悪も、善と同様に存在意義があるという天上の公平さはファンタージエンと同じ
幼ごころの君は、宇宙の摂理に似ている
たった1つだけ気にかかったのは、幼ごころの君のいる塔や細工がほぼ「象牙」で出来ていること
エンデは当時、象牙をとるために、どれほど悲惨な物語が実在するか知らなかったのだろうか
▼あらすじ(ネタバレ注意
冷たい11月 どしゃ降りの雨
カール・コンラート・コレアンダー古本屋に1人の少年が走りこんできた
10歳くらいの、背の低い太った少年 バスチアン・バルタザール・ブックス
カール:おれは子どもは好きじゃない 騒々しい厄介者だ うちには子どもの本などないし、あっても売らないからな
バスチアンは、いつもクラスメイトや教師にいじめられ、弱虫だと馬鹿にされ、
自分で話を考えたりするのが好きだったり、独り言を言うため“いかさま野郎”と罵られていると話す
母は病気で亡くなり、その後、父はすっかり変わって、自分など見えなくなってしまっていることも
電話がかかりカールは小部屋に入る
学校に遅刻してしまうと思いながら、カール氏が読んでいた本に釘付けになる
表紙はあかがね色の絹で、2匹の蛇がそれぞれの尾を咬み、楕円になっている 中は二色刷り
題名は「はてしない物語」
人により情熱は無数にある
美食・美酒に負けて堕落する者、賭け事に一切合切そそぎこむ者、
権力を手に入れるまで落ち着かない者・・・
バにとって、それは本だった
周りを忘れて読み、素晴らしい話が終わりに近づき、数々の冒険をともにした人物との別れに苦い涙を流す
本きちがいにとってずっと望んでいたもの けして終わりにならない本の中の本
ここに来た理由も、この本がバのところに来たがったからと分かった
あっという間に、本をオーバーの下に隠し、ドアを閉めて走った
盗んだ 泥棒だ! しかし、この本はバに残されたすべてだった
バにとって学校生活は、果てしなく長い囚われの刑に思えた
大人になるまで続き、耐え抜くより仕方のない
探されもせず、見つからない唯一の場所は、学校の屋根裏の物置だ
バは大きな鍵を内側からさしこみ、重ねた古いマットに座り、
軍用毛布をかぶると、ずぶ濡れの体が少し温かくなった
バ:
本って閉じている時、中で何が起きているんだろう?
開いた途端あらゆる冒険がそこにある
それがみんな最初から中に入っている どうやって入っているのかなあ?
そうして物語を読みはじめた
Ⅰ ファンタージエン国の危機
ハウレの森の動物はみな隠れ家に身を潜めていた
そこに惑わし火と言われる鬼火ブルッブが道に迷っていた
たき火の周りに、彼と同じように使命をもった3種族がいた
全身が岩ででき、岩を食べる岩喰い族のピョルラハツァルク
夜魔のウシュウーズルと彼らの乗り物の大きなコウモリ、
小さな豆小人族のユックユックと、彼らの乗り物のかたつむり
彼らはまったく離れた地域で住んでいるので、1つ所にいる光景はフシギだった
ここでは、戦争や種族間の小競り合いが何世紀も続いたり、善良な者も悪党もいたが
女王幼ごころの君はすべてあるがままに認めている
彼らはみな女王のいるエルフェンバイン塔を目指していて、理由も同じ
鬼火の場合は、東の湖が突然なくなった 干上がったのでもなく、「無」になってしまったという
それを見ると、盲目になったようになる しかもそのような場所はどんどん広がっている
その「虚無」は、反抗できない引力があり、手を入れてみるとなくなってしまい痛みはない
今や国全土に危機が迫っていると分かると、それぞれ塔を目指して再び旅立った
*
バは、これが現実の話でなくて嬉しかった そういうことは現実だけで十分だ
まして、なにか教訓をたれようという意図に気づくと腹が立つ
彼は読んでいて夢のある冒険話が好きだ
想像すると、本当に目に見え、耳に聞こえる気がする
これこそ、僕にピッタリの本だ
*
大きな花園の迷路苑を過ぎ、塔に着くと遠くで見るよりはるかに大きいと気づく
塔の頂上の白いモクレンの蕾の形をした宮殿が幼ごごろの君のご座所だ
先に着いた豆小人は、昨日会う申し込みをしたが、他からの使者もあふれていて混乱しているという
巨大な塔の中には、あらゆる姿かたちをした種族でひしめいていた
豆小人:
女王幼ごころの君は、とても重い病気で臥せっている
それとファンタージエン国の禍いは関係しているのかもしれない
この4使節は待たされている間にとても親しい仲になったが、
これは別の物語 いつかまた、別の時に話すことにしよう
Ⅱ アトレーユの使命
塔の玉座には、国中から集まった499人の名医がいたが、誰も女王の病気が何か、治療法も分からなかった
女王といっても、幼ごころの君は統治者とはまったく別で、国を支配することはなく
命令したり、裁いたり、攻めることも、守ることもない
ただ存在するのみで、あらゆる命の中心だった
だから、女王の死は、すべての生き物の終末、国の滅亡を意味した
*
バは母が亡くなった時のことを思い出した
それから父は、以前のように本を読んでくれたり、叱りもせず、褒めてもくれない
いつも空ろな表情で、はるか遠くをさまよっている感じだ
僕はまだここにいるのに、なぜ父さんは僕を相手にしてくれないんだろう?
*
医術の達人カイロンは、昔ケンタウロスと呼ばれた種族で、首に鎖にさげた大きな金のおまもりをかけていた
そこには明暗の2匹の蛇がたがいに相手の尾を咬み楕円になっている
これは女王の任命を受けたしるしで、これをもらったものは、女王自身と同じようにふるまうことができる
アウリンという名だが、畏れおおいため「おひかり」などと呼ばれている
カイロンは皆に説明した
この無限の国のどこかに、道なきところに道を見出し、いかなる危険や辛苦にも耐えられる勇士がいる
名はアトレーユ しろがね山脈に住んでいる その方におしるしを届け、探索の旅に出ていただく
*
しろがね山脈の向こうの大草原に住む緑の肌族は、狩猟の民
ケンタウロスが着き、アを探すと、今日は彼のハレの狩の日だという
呼ばれてきたのは肩に緋色のマントをはおり、漆黒の髪を後ろで束ねた10歳ほどの少年だった
あまりに思いがけず、ケはたじろぎ、人違いかと確認したがアはここで彼ただ一人だという
親も兄弟もいない彼の名は「みなの息子」という意味だった
ケ:
女王の健康を取り戻し、国を救う方法を探す任務を託す
アウリンは大いなる権威となるが、そのご威光にものをいわせることはならぬ
いかなる武器も持たず、今すぐ出発するのだ
ア:お受けします どこから始めればよいのですか?
ケ:あらゆるところから そして、どこでもないところからだ 幸運を祈るぞ
アは彼の愛馬アルタクスを連れて、すぐに出発した
と同時に、彼の知らない闇から恐ろしい体が現れ、夜を駆けていった
老カイロンは、塔には戻らず、運命は彼を予想だにしない道に導いたが
これは別の物語 いつかまた、別の時に話すことにしよう
Ⅲ 太古の媼モーラ
1日目 少年はお腹が空き、鞍につけた袋の中の野牛の乾燥肉を少し食べた
バ:誰だって、やっぱり時々何か食べなくちゃ
ランチのパンを2つにして片方を食べ、もう片方はまた包んだ
2日目 歌う木の国を通った
3日目 エリボのガラス塔の者にも聞いたが、幼ごころの君の病気については誰も知らない
7日目 ハウレの森に着くと、下半身のない者、胸に大きな穴の開いた者らが
勇士の噂を聞いて忠告しにやって来た 虚無はどんどん広がる一方で、木の上から見えるという
アは初めて虚無を見て、ようやく全土に広がる恐怖を理解した
アは毎晩同じような夢を見た
狩りの日に射止めるはずの野牛の夢だ
「お前がオレを殺していれば、お前は狩人になれたが、それを断念した
だから、今度はオレがお前を助けてやる
このファンタージエンにはもっとも年をとった生き物がいる
憂いの沼の真ん中、甲羅山にいる太古の媼モーラを訪ねよ!」
沼に着くと愛馬アルタクスは、何もかも無駄で手遅れだと言った
彼の体は憂いの沼にはまり沈んでいく
「もうダメです 私に構わず行ってください 私は死にたいのです
ご主人さまは、おひかりが守ってくれる ごきげんよう、ご主人さま!」
バはすすり泣いた
甲羅山をようやく見つけたがモーラはいない
甲羅山そのものが1匹の巨大な沼亀モーラだった
アルリンを見せて、目的を尋ねても、どうでもよいと言うばかり
モ:
わしらは年寄りじゃ たっぷり生き、たっぷり見て、たっぷり知ってもうた
何もかもが永遠に繰り返される 世界は空虚で無意味 環になって巡っておる
善と悪、愚と賢、美と醜、すべては互いに帳消しあっておる すべては空しいのじゃ
どうして死んではいかんのかね? すべては幻にすぎない
ア:どうでも構わないなら、教えてもいいはずだ それを教えないなら同じではないことになる!
モーラは笑い、幼ごころの君には新しい名前が必要だと教える
年をとらず、時間で測られず、これまでもたくさんの名前があったがみんな忘れられた
名前なしには生きてはいられない
名をあげるのはファンタージエン国の者にはできない
たぶん、南のお告げ所のウユララが知っている
旅の日を万にしてもたどり着けない所だから諦めろ、と言って洞穴に潜ってしまう
新しい名前を考えるのは、バの得意なことだと思ったが、憂いの沼などには行く気にはなれなかった
Ⅳ 群集者イグラムール
アは道に迷い、餓えと渇きで息も絶え絶えだった この土地は「死の山脈」で
部族に語り継がれる古い歌を思い出した
“世にも恐ろしきは、死の山脈の 奈落の裂け目に棲む 群集者イグラムール”
*
時計が1時を打ち、今日の授業は終わった サボったことを父に言う勇気はない
盗んだ本のことも父は何も言わず片をつけてくれるだろう
バ:アだったらすぐに諦めやしない 先へ進むしかない
*
アは奈落の裂け目の縁に沿って進むと、途方もなく大きな蜘蛛の巣に白い幸いの竜フッフールがかかっていた
幸いの竜は、ファンタージエン国で最も珍しい生き物で、どんな苦境の中にあっても歓びの子
アは巨大な蜘蛛のように見える怪物が、実は無数の昆虫の集まりだと分かった
イグラムールの想像を絶する恐ろしさにバは低い叫び声をあげた
恐怖の叫び声が奈落に響いたが、ほかには誰もいなかった
バ:イグラムールが聞いたのは僕の叫び声? そんなことあるわけないじゃないか!
アはアウリンをかざして、ウユララのもとへ行くために竜が欲しいと言うが
すでに竜の体にはイグラムールの毒が入っていて、小1時間の命だという
だが、イグラムールがひと咬みすれば、ファンタージエン国のどこにでも瞬時に行けるという秘密を漏らす
ア:お前のすすめを受けよう! 肩に鋭い痛みを感じた瞬間、南のお告げ所へ!と念じた
アをずっと尾けていたオオカミは、すんでの所で急に臭跡を失った
Ⅴ 夫婦隠者
南のお告げ所に着くと、フッフールも飛んできた
イグラムールの秘密を知り、自分も追ってきたという
フ:私の命を救ってくれた若殿さま 今に何もかもうまくいきますよ 私は幸いの竜ですからね
2人は毒が回って倒れ、気づくとしわだらけの小人に薬を飲まされていた
小さな洞窟の中の部屋に住む老夫婦は、地霊小人族で、妻は治療師のウーグル、夫は研究者のエンギウック
エは南のお告げ所の研究に人生を捧げ、観測所まで建てていた ゆくゆくは著書を出すという
観測所の望遠鏡からお告げ所を見ると、対のスフィンクスが見える
人の顔をしているが、微笑んでいるのか、悲しんでいるのか、無関心なのか分からない表情だ
エ:なにもかも説明して進ぜよう
Ⅵ 3つの神秘の門
お告げ所には3つの門があり、1つの門をくぐらないと、次の門は現れない その先にウユララは住んでいる
第一は大いなる謎の門、第二は魔法の鏡の門、第三は鍵なしの門
まずスフィンクスの第一の門が難題
その目は何も見てはいないが、ムリに通り抜けようとすると氷のように固まってしまう
ある者は通り、ある者は通さない その理由は善良、勇敢、臆病、悪者、愚者などの基準ではないという
そこを通れたとして、魔法の鏡には、その者の外観ではなく内面の真相がありのままに見える
簡単そうだというアに
エ:とんでもない! 自分は完璧だと思いこんでいる者が、鏡の中に怪物を見て、逃げてきたのを何度も見てきた
第三の門は鍵がなく閉まっている ファンタージエン産のセレーンで出来ているから何者にも破壊できない
セレーンはわれわれの意志に反応する
びくともせんものにしておるのは我々の意志のせいで、入ろうと思えば思うほど扉は固く閉まる
あらゆる意図を忘れ捨てればおのずと開く
ア:では、僕は通れるはずがありません
アはウユララについても聞いた
エ:それがまったく分からぬ みな沈黙を守る もし、会ったら話してくれると約束してくれ!
アはすぐさまスフィンクスの前に来た 周りは無数のしゃれこうべが転がっている
スフィンクスの前に立ちすくむア 美が怖ろしいものであり得ると初めて知った
自身をはるかに越えた怖れ 絶大なものの実在への怖れ それでも運を天に任せて通るほかない
気づくとアは門を渡り、同時にすべての怖れが消え去っていた
鏡の門に何かぎょっとする姿が映るかもしれないとは考えたが
怖れのない今、それはとるにたらないことだった
見ると思いもかけない、理解できないものが映った
顔色の悪い、太った、自分と同じ年頃の少年がマットの上に座って本を読んでいる
*
バはぎくりとした これは僕じゃないか これ以上の偶然があるだろうか?
バ:ファンタージエン国が僕のことを知っているならすごいや その声は少し震えていた
*
アは門を抜けると、自身のこと、これまでの生涯、これからの目標など一切の記憶をなくしていた
心は理由もなく晴れやかで、第3の扉の前に来ても、鍵穴もないため、どこかへ行ってしまいたくなった
バ:戻れ アトレーユ 門を入っていかなくちゃ!
アはまた門の前に立つとほんの少し開き、その向こうに柱が無数に並ぶ廊下があった
Ⅶ 静寂の声
アは柱の森ですすり泣く声を聞く 話しかけても、韻をふんで詩にしないと通じ合えない
「私はウユララ 静寂の声 だれも私を見たことはない けれども私はいるのです
私の歌が終わる時は ほかのすべてがうつろい消えると同じこと
ウユララは答 問われなければ答えられない!」
どうして消え去るのかと問うと、
「虚無はここにも及び、幼ごころの君を救う新しい名を与える者は私たちのうちにはいない
われわれは本の中だけの生きもの つくられたままに動くのみ
けれどファンタージエンのかなたには“外国”があり、その住民はアダムとイヴの子
かれらはみな名づけの才に恵まれている だが人間は久しくファンタージエン国にこない
われらがほんとうにいるのを忘れて 信じなくなったのです
私の声を聞くのはおまえが最後 今まで誰にも出来なかったことがおそらくおまえにはできるでしょう」
アは眠りにおち、目覚めるとすべての記憶が戻る
女王に名を与える人の子を見つけて、お連れしなければ
バ:
ああ、ぼく、よろこんで助けに行くのになあ
君たちの所へいく道があるなら教えてくれよな ぼく必ず行く ほんとうだとも
アが見ると、柱の森も、スフィンクスも姿を消していた
アがひと晩だと思っていた出来事は、フは7日間だったという
エンギウックにすべてを話したが、すべては無駄だったと嘆く
エ:生涯を賭けた仕事のまとめが書けるというのに、もはや存在せんものの研究など何の価値もない!
老夫婦はこの地を去り、エンギウックは後に非常に有名な地霊小人になったが、それは学問的研究においてではなかった
けれどもこれは別の物語 いつかまた、別の時に話すことにしよう
Ⅷ 妖怪の国で
フに乗れば「外国」のあるファンタージエン国境に行くのも難しくないと思っていたが
何日も飛んでも見つからず、2人は疲労困憊していた
フ:
幼ごころの君のもとへ引き返したほうが賢明ではないですか?
命は病の原因を探り、治す方法を告げることで、それを持って帰ることではなかった
ア:でも、もう1時間だけ飛んでくれ
この1時間分だけ余分だった
東西南北の4人の大風坊主が力くらべをしているところに出くわし、2人は渦巻や稲妻の中に巻き込まれる
アは4人に聞くと国境などないという
アは何もかもムダだったと思ううち、熱風に放り出されてフと離れてしまう
気を失い、気づくと砂浜にいた 首からさげていたおまもりがないことに気づき、フを呼んでも届かない
向こうから奇妙な一団が妙な踊りをしながら通り過ぎていく 夜魔、妖魔、幽霊、魔女もいる
アはおまもりなしには自分がいかに無力かがはっきり分かった
これまで迷わず決断できたのも、神秘の羅針盤のように導いてくれていたからだった
だが、これまでは人間がファンタージエンに来て、幼ごころの君に名をあげていたとウユララは言っていた
2つの世界をつなぐ道はやはりあるはずだ
アは虚無がじりじりと近づいてくるのを間近で見た
妖怪たちは一斉に虚無に向かって走り出した
アにもその中に飛び込みたいという欲求が圧倒的な強さで襲ってきたがなんとかふんばり
無人になった廃墟の扉の中に入って行った
Ⅸ 化け物の町
アは呪われた運命の一切がこめられた嘆きの声を聞く
そこには壁に鎖でつながれ、餓えて息絶え絶えの人狼グモルクがいた
アはグの鎖を外してあげようと提案するが、
グ:
おれのそばに寄れば、おれは咬みつき喰いつくす それで延びる命は知れたもの
だからそっとくたばらせろ これは魔の鎖で、ここにくくりつけた闇の奥方にしか解けねえのさ
おまえはファンタージエンしか知らんのだな ほかにも世界はいくつもある
自分の世界を持たず、いくつかの世界を行き来できるものもいる オレもそうだ
人間の世界じゃ人の姿をしているが人じゃない
アは人の子の国へ行く道を聞くと、向こうへ渡るのは簡単で虚無に飛び込めばいいが、こっちへは戻れないという
グ:
人間世界に行ったら、もう今のおまえじゃなくなる
伝染病の病原みたいになり、人間どもを盲目にする
やられた者は現実と見かけの区別がつかなるなる 「虚偽(いつわり)」だよ!
ファンタージエンの生きものは夢に描かれたものにすぎん 物語の登場人物
虚無に入ると、幻想や妄想になる
ほんとは怖れる必要もないのに不安がらせたり、欲しがる欲望を持たせたり、絶望させたり
キレイなものはキレイな虚偽、醜いものはみにくい虚偽になる
だから人間どもはファンタージエンからくるものを憎み、怖れて亡ぼすつもりだが
まさにそれが、人間世界に流れこむ虚偽を増やしていると気づかない
おまえら自身が、あっちではファンタージエンなどないと人間に思いこませることに利用されてるんだ
やつらは支配されている 人間どもを支配するのに虚偽ほど強いものはない
要りもしないものを買わせたり、知らないものを憎んだり、盲目的に信じたり
戦争をはじめたり、帝国をつくったり・・・
バは、この人間世界も病んでいることが、今ハッキリ分かった
自分のついた虚(うそ)を思い恥じた
欲しいものを得ようとしてついた虚言、自分を良く見せようとしてついた虚言
グ:
オレの仕えてる奴らがファンタージエンの滅亡を図っていたが
幼ごころの君が使者を派遣したことが分かり、人の子を連れてくることに成功しそうだから
そいつを殺すようここに送られてきたが、イグラムの巣まできて臭跡を失った
ア:私がそのアトレーユだ
グは身の毛もよだつ声を発して死んだが、アが近づくと死を越えてなお内なる悪意のためにアの脚に喰らいついた
虚無が町を取り囲んでいった
Ⅹ エルフェンバイン塔へ
フはアを探し空を無尽に飛び続け、海の中からアウリンを探し出した
と同時に、猛烈な速さでアのもとへ導かれていった
アウリンがグの額に触れ、顎が開き、アの脚は放たれた
アが消え入りそうになり、フは髪をつかみ翔びさった
エルフェンバイン塔に着く頃にはフも消えかかっていた
望みを統べたもう金の瞳の君(幼ごころの君)のことを聞くと
姿は少女のようだがファンタージエン中一番年を召しているという
けして権力をふるわず、われわれとも人間とも違う存在 知るものは一人もいない
賢者は「その神秘を分かれば、己が存在を消し去る」と言ったという
エルフェンバイン塔にも虚無が手をのばし、そこには誰もいない
象牙の丸い丘の頂にある白いもくれん宮の中でアは初めて幼ごころの君を見た
病のせいで顔は蒼白いが、にっこり微笑んでいた
バはハッとした これまで経験したことがないことが起きた
ほんのわずかだが、幼ごころの君の顔が目の前に見え、その途端にその名が分かった
月の子、「モンデンキント」だ! 彼女もまたバを見た
XI 女王幼ごころの君
幼ごころの君:
そなたは務めを果してくれました 何もかもすっかり元通りになります
私たちの救い手を連れてきてくれた 私は彼を見ました 彼も私を見ました
両方の世界はとても近くなっている
それはそなたを大いなる探索に遣わす前から分かっていました
彼はそなたが乗り越えてきたことを共に体験し、やってきました
魔法の鏡で彼の姿を見たではないですか
あなたはこのおひかりをいつも身につけていたので、私は常にそなたと共にいたのです
グが語ったことは真理の半面でしかない
人の子がこの世界に来るのは正しい道で、ここでしかできない経験をして、
それまでとは違う人間になってもとの世界に帰っていきました
以前は平凡でつまらないものに見えていたものに驚きを見、神秘を感じ
そのお蔭でこちらの世界が豊かに栄えるほど、向こうの世界でもいつわりはなくなり、よりよくなるのです
そして、冒険に満ちた物語によってのみ、救い手を連れてくることができた
正しい名だけが、すべての事柄を本当のものにすることができる 彼はもう分かっています
私を新しい名で呼んでくれさえすればいい
バは悩んだ まるきり思い違いをしているのでは? 誰か他の人のことを言っているのでは?
ファンタージエンに行く時、痛いのでは? あんな化け物がうようよしている所は絶対に嫌だ
それに、デブでチーズのような顔の自分を見て、幼ごころの君がガッカリしたりしたら恥ずかしくて顔が真っ赤になった
幼ごころの君は待っても現れないため、最後の手段に出る
これまでのファンタージエンのことをすべて本に書き留めているというさすらい山の古老に初めて会うという
古老は彼女と同じ存在
アとフは傷が癒される場所で休むよう言われる
幼ごころの君を取り巻く7つの力の3つをアとフのために置き、残りの4つがかつぐガラスの輿に乗り
「先へ進みなさい どこかへ!」と言った
XII さすらい山の古老
運命山はファンタージエン最大最高の山脈で、永久氷に閉ざされている
氷巨人のほかは生きものは存在できない
運命山の頂は1つの国ほどある広い高原で、明るい青色の、逆さつららの突起に支えられた家ほどの卵が立っている
幼ごころの君は見えないかつぎ手を残して一人卵の中に入った
文字だけでできた長いはしごがおりてきて、のぼりながら読んでいくと
“モドレ! 帰レ! イカナル時モ 君がワタシニアウコトハナラヌ! 始メガ終ワリヲサガシダシテシマウ
ワタシハ記録者トシテ書キノコス スベテガ死ンダ不変ノ文字トナル
生ガ死者ノナカニ オノガ姿ヲ見ルコトハユルサレナイ”
卵型の広間の真ん中で空中に浮かぶ1冊の本から声がした
表紙にはアウリンと同じ2匹のヘビが描かれ、「はてしない物語」と題名が記されている
バ:今読んでる本だ! どうしてこの本がこの本自身に出てくることなどできたのだろう?
古老は、僧服を着て、顔をあげずに筆で本を書きつづけ、
そこに書いている文字は、いまこの瞬間に起きていることだった
古老:この本こそがファンタージエンであり君であり私なのじゃ この本はこの本の中にある
幼ごころの君:あなたの助けがいるのです 卵はみな新たなる生命の始まりです
古老:
新しい始まりをつくれるのは人の子のみ 彼もすでにその一部になり取り消すことはできぬ
つまりこれは、かれ自身の物語だ
幼ごころの君:その物語をお話しなさい
古老:
私はすべてを再び始めから書かねばならぬ
終わりなき終わり われらは果てることなき繰り返しの環にはまることになる
それでも古老は書き始めた
“こんな字が、ある小さい店のドアのガラスに書かれていた・・・”
バ:こんな話は知らないや やっぱりずっと思い違いをしていたんだ とガッカリした
だが、10歳くらいの背の低い太った少年が古本屋に入る場面になると、バはかれ自身の話だと気づく
自分は読者だと思っていたのに それじゃこれを読んでいる人がいるかもしれないわけだ それが果てしなく起こる!
ゾっとして、耳をふさいだが、古老の声は内から響いた
何かを望み、到底叶えられないと思っているうちは、それを望んでいると固く信じているが
突如、現実になると、望まなければよかったと思った
古老の物語は最後までいき、また一切が冒頭から始まる
バは耐えられなくなり泣きながら不意に叫んだ
「モンデンキント! 今ゆます!」
卵はものすごい力で砕け、多くのことが一瞬に一度に起こった
『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ/著(岩波書店)その2へつづく
ロスヴィタ・クヴァートフリーク/装画
※「作家別」カテゴリーに「ミヒャエル・エンデ」を追加します
ミヒャエル・エンデ(ウィキ参照
『モモ』のほうが先なのか/驚
ノートから「読書感想メモリスト」シリーズを入力していた時に
肝心の名著の感想メモほどないことに気づいた 本作もそのうちの1冊
『モモ』も読んだ記憶があるのに、なぜメモ魔の私が記録を残さなかったのだろう???
児童文学だけじゃなく、同じ時期に読んだ名作シリーズの『風と共に去りぬ』などの大作ほどないのは
読後に相当感動しただけに残念すぎる
もう一度読むには長いし・・・
今作はどうしてもまた読みたくなって、調べたら、今は上下巻に分かれていたりするのか
私が昔買った、箱に入っていて、あかがね色に蛇2匹が描かれた布地の表紙のが欲しくて
神保町で尋ねたが、児童文学を取り扱っている本屋は少ないとのこと
amazonで調べたら、手頃な値段で、探していた装丁のものを運良く見つけたので買ってしまった
¥642+配送料=¥947 当時も今も3000円くらいだからお得な買い物をしたv
この画像はお借りしました
さほど傷んでもなくて、ちょうど、私があのまま持っていたら、これくらいじゃないかなという雰囲気
読む前からワクワク 初めて読んだ時の興奮が甦る
物語の中の少年同様、ストーリーに巻き込まれ、時間も空腹も忘れてのめりこみ
自分の持っている本が特別に思えた時と同じだ
バスチアンが幼ごころの君に会う前半の記憶はあるのに、
少年が新しい物語を作るたびに記憶を失うという設定だけは覚えていて、
肝心な後半の記憶がなぜか思い出せないのがずっと心にひっかかっていたのも、
ようやく思い出すことが出来る
最近は、エンデのbotもあり、作品以外の話の端々に深い深い哲学を持っていたことが分かり
本作にはそれが噛み砕かれ、すべて詰め込まれている気がする
私は1度読んだら、ほとんどリピートすることがないため、今度はしっかりストーリーをメモっておこうと思う
なので、また長くります
それぞれのキャラクターが、その後、またまったく別の物語を紡いでゆくが
「それはまた別の話」と置いておくのも粋なはからいだと当時も思った
これこそ、はてしなく続く物語
まるで、時空を超えた、パラレルワールドを描いたSFでもあるようだ
私たち人間が思い描けるものはすべて現実化できる力があると私は信じている
戦争も貧困も仕方ないと「容認」している間はけしてなくならない
同時にどんな悪も、善と同様に存在意義があるという天上の公平さはファンタージエンと同じ
幼ごころの君は、宇宙の摂理に似ている
たった1つだけ気にかかったのは、幼ごころの君のいる塔や細工がほぼ「象牙」で出来ていること
エンデは当時、象牙をとるために、どれほど悲惨な物語が実在するか知らなかったのだろうか
▼あらすじ(ネタバレ注意
冷たい11月 どしゃ降りの雨
カール・コンラート・コレアンダー古本屋に1人の少年が走りこんできた
10歳くらいの、背の低い太った少年 バスチアン・バルタザール・ブックス
カール:おれは子どもは好きじゃない 騒々しい厄介者だ うちには子どもの本などないし、あっても売らないからな
バスチアンは、いつもクラスメイトや教師にいじめられ、弱虫だと馬鹿にされ、
自分で話を考えたりするのが好きだったり、独り言を言うため“いかさま野郎”と罵られていると話す
母は病気で亡くなり、その後、父はすっかり変わって、自分など見えなくなってしまっていることも
電話がかかりカールは小部屋に入る
学校に遅刻してしまうと思いながら、カール氏が読んでいた本に釘付けになる
表紙はあかがね色の絹で、2匹の蛇がそれぞれの尾を咬み、楕円になっている 中は二色刷り
題名は「はてしない物語」
人により情熱は無数にある
美食・美酒に負けて堕落する者、賭け事に一切合切そそぎこむ者、
権力を手に入れるまで落ち着かない者・・・
バにとって、それは本だった
周りを忘れて読み、素晴らしい話が終わりに近づき、数々の冒険をともにした人物との別れに苦い涙を流す
本きちがいにとってずっと望んでいたもの けして終わりにならない本の中の本
ここに来た理由も、この本がバのところに来たがったからと分かった
あっという間に、本をオーバーの下に隠し、ドアを閉めて走った
盗んだ 泥棒だ! しかし、この本はバに残されたすべてだった
バにとって学校生活は、果てしなく長い囚われの刑に思えた
大人になるまで続き、耐え抜くより仕方のない
探されもせず、見つからない唯一の場所は、学校の屋根裏の物置だ
バは大きな鍵を内側からさしこみ、重ねた古いマットに座り、
軍用毛布をかぶると、ずぶ濡れの体が少し温かくなった
バ:
本って閉じている時、中で何が起きているんだろう?
開いた途端あらゆる冒険がそこにある
それがみんな最初から中に入っている どうやって入っているのかなあ?
そうして物語を読みはじめた
Ⅰ ファンタージエン国の危機
ハウレの森の動物はみな隠れ家に身を潜めていた
そこに惑わし火と言われる鬼火ブルッブが道に迷っていた
たき火の周りに、彼と同じように使命をもった3種族がいた
全身が岩ででき、岩を食べる岩喰い族のピョルラハツァルク
夜魔のウシュウーズルと彼らの乗り物の大きなコウモリ、
小さな豆小人族のユックユックと、彼らの乗り物のかたつむり
彼らはまったく離れた地域で住んでいるので、1つ所にいる光景はフシギだった
ここでは、戦争や種族間の小競り合いが何世紀も続いたり、善良な者も悪党もいたが
女王幼ごころの君はすべてあるがままに認めている
彼らはみな女王のいるエルフェンバイン塔を目指していて、理由も同じ
鬼火の場合は、東の湖が突然なくなった 干上がったのでもなく、「無」になってしまったという
それを見ると、盲目になったようになる しかもそのような場所はどんどん広がっている
その「虚無」は、反抗できない引力があり、手を入れてみるとなくなってしまい痛みはない
今や国全土に危機が迫っていると分かると、それぞれ塔を目指して再び旅立った
*
バは、これが現実の話でなくて嬉しかった そういうことは現実だけで十分だ
まして、なにか教訓をたれようという意図に気づくと腹が立つ
彼は読んでいて夢のある冒険話が好きだ
想像すると、本当に目に見え、耳に聞こえる気がする
これこそ、僕にピッタリの本だ
*
大きな花園の迷路苑を過ぎ、塔に着くと遠くで見るよりはるかに大きいと気づく
塔の頂上の白いモクレンの蕾の形をした宮殿が幼ごごろの君のご座所だ
先に着いた豆小人は、昨日会う申し込みをしたが、他からの使者もあふれていて混乱しているという
巨大な塔の中には、あらゆる姿かたちをした種族でひしめいていた
豆小人:
女王幼ごころの君は、とても重い病気で臥せっている
それとファンタージエン国の禍いは関係しているのかもしれない
この4使節は待たされている間にとても親しい仲になったが、
これは別の物語 いつかまた、別の時に話すことにしよう
Ⅱ アトレーユの使命
塔の玉座には、国中から集まった499人の名医がいたが、誰も女王の病気が何か、治療法も分からなかった
女王といっても、幼ごころの君は統治者とはまったく別で、国を支配することはなく
命令したり、裁いたり、攻めることも、守ることもない
ただ存在するのみで、あらゆる命の中心だった
だから、女王の死は、すべての生き物の終末、国の滅亡を意味した
*
バは母が亡くなった時のことを思い出した
それから父は、以前のように本を読んでくれたり、叱りもせず、褒めてもくれない
いつも空ろな表情で、はるか遠くをさまよっている感じだ
僕はまだここにいるのに、なぜ父さんは僕を相手にしてくれないんだろう?
*
医術の達人カイロンは、昔ケンタウロスと呼ばれた種族で、首に鎖にさげた大きな金のおまもりをかけていた
そこには明暗の2匹の蛇がたがいに相手の尾を咬み楕円になっている
これは女王の任命を受けたしるしで、これをもらったものは、女王自身と同じようにふるまうことができる
アウリンという名だが、畏れおおいため「おひかり」などと呼ばれている
カイロンは皆に説明した
この無限の国のどこかに、道なきところに道を見出し、いかなる危険や辛苦にも耐えられる勇士がいる
名はアトレーユ しろがね山脈に住んでいる その方におしるしを届け、探索の旅に出ていただく
*
しろがね山脈の向こうの大草原に住む緑の肌族は、狩猟の民
ケンタウロスが着き、アを探すと、今日は彼のハレの狩の日だという
呼ばれてきたのは肩に緋色のマントをはおり、漆黒の髪を後ろで束ねた10歳ほどの少年だった
あまりに思いがけず、ケはたじろぎ、人違いかと確認したがアはここで彼ただ一人だという
親も兄弟もいない彼の名は「みなの息子」という意味だった
ケ:
女王の健康を取り戻し、国を救う方法を探す任務を託す
アウリンは大いなる権威となるが、そのご威光にものをいわせることはならぬ
いかなる武器も持たず、今すぐ出発するのだ
ア:お受けします どこから始めればよいのですか?
ケ:あらゆるところから そして、どこでもないところからだ 幸運を祈るぞ
アは彼の愛馬アルタクスを連れて、すぐに出発した
と同時に、彼の知らない闇から恐ろしい体が現れ、夜を駆けていった
老カイロンは、塔には戻らず、運命は彼を予想だにしない道に導いたが
これは別の物語 いつかまた、別の時に話すことにしよう
Ⅲ 太古の媼モーラ
1日目 少年はお腹が空き、鞍につけた袋の中の野牛の乾燥肉を少し食べた
バ:誰だって、やっぱり時々何か食べなくちゃ
ランチのパンを2つにして片方を食べ、もう片方はまた包んだ
2日目 歌う木の国を通った
3日目 エリボのガラス塔の者にも聞いたが、幼ごころの君の病気については誰も知らない
7日目 ハウレの森に着くと、下半身のない者、胸に大きな穴の開いた者らが
勇士の噂を聞いて忠告しにやって来た 虚無はどんどん広がる一方で、木の上から見えるという
アは初めて虚無を見て、ようやく全土に広がる恐怖を理解した
アは毎晩同じような夢を見た
狩りの日に射止めるはずの野牛の夢だ
「お前がオレを殺していれば、お前は狩人になれたが、それを断念した
だから、今度はオレがお前を助けてやる
このファンタージエンにはもっとも年をとった生き物がいる
憂いの沼の真ん中、甲羅山にいる太古の媼モーラを訪ねよ!」
沼に着くと愛馬アルタクスは、何もかも無駄で手遅れだと言った
彼の体は憂いの沼にはまり沈んでいく
「もうダメです 私に構わず行ってください 私は死にたいのです
ご主人さまは、おひかりが守ってくれる ごきげんよう、ご主人さま!」
バはすすり泣いた
甲羅山をようやく見つけたがモーラはいない
甲羅山そのものが1匹の巨大な沼亀モーラだった
アルリンを見せて、目的を尋ねても、どうでもよいと言うばかり
モ:
わしらは年寄りじゃ たっぷり生き、たっぷり見て、たっぷり知ってもうた
何もかもが永遠に繰り返される 世界は空虚で無意味 環になって巡っておる
善と悪、愚と賢、美と醜、すべては互いに帳消しあっておる すべては空しいのじゃ
どうして死んではいかんのかね? すべては幻にすぎない
ア:どうでも構わないなら、教えてもいいはずだ それを教えないなら同じではないことになる!
モーラは笑い、幼ごころの君には新しい名前が必要だと教える
年をとらず、時間で測られず、これまでもたくさんの名前があったがみんな忘れられた
名前なしには生きてはいられない
名をあげるのはファンタージエン国の者にはできない
たぶん、南のお告げ所のウユララが知っている
旅の日を万にしてもたどり着けない所だから諦めろ、と言って洞穴に潜ってしまう
新しい名前を考えるのは、バの得意なことだと思ったが、憂いの沼などには行く気にはなれなかった
Ⅳ 群集者イグラムール
アは道に迷い、餓えと渇きで息も絶え絶えだった この土地は「死の山脈」で
部族に語り継がれる古い歌を思い出した
“世にも恐ろしきは、死の山脈の 奈落の裂け目に棲む 群集者イグラムール”
*
時計が1時を打ち、今日の授業は終わった サボったことを父に言う勇気はない
盗んだ本のことも父は何も言わず片をつけてくれるだろう
バ:アだったらすぐに諦めやしない 先へ進むしかない
*
アは奈落の裂け目の縁に沿って進むと、途方もなく大きな蜘蛛の巣に白い幸いの竜フッフールがかかっていた
幸いの竜は、ファンタージエン国で最も珍しい生き物で、どんな苦境の中にあっても歓びの子
アは巨大な蜘蛛のように見える怪物が、実は無数の昆虫の集まりだと分かった
イグラムールの想像を絶する恐ろしさにバは低い叫び声をあげた
恐怖の叫び声が奈落に響いたが、ほかには誰もいなかった
バ:イグラムールが聞いたのは僕の叫び声? そんなことあるわけないじゃないか!
アはアウリンをかざして、ウユララのもとへ行くために竜が欲しいと言うが
すでに竜の体にはイグラムールの毒が入っていて、小1時間の命だという
だが、イグラムールがひと咬みすれば、ファンタージエン国のどこにでも瞬時に行けるという秘密を漏らす
ア:お前のすすめを受けよう! 肩に鋭い痛みを感じた瞬間、南のお告げ所へ!と念じた
アをずっと尾けていたオオカミは、すんでの所で急に臭跡を失った
Ⅴ 夫婦隠者
南のお告げ所に着くと、フッフールも飛んできた
イグラムールの秘密を知り、自分も追ってきたという
フ:私の命を救ってくれた若殿さま 今に何もかもうまくいきますよ 私は幸いの竜ですからね
2人は毒が回って倒れ、気づくとしわだらけの小人に薬を飲まされていた
小さな洞窟の中の部屋に住む老夫婦は、地霊小人族で、妻は治療師のウーグル、夫は研究者のエンギウック
エは南のお告げ所の研究に人生を捧げ、観測所まで建てていた ゆくゆくは著書を出すという
観測所の望遠鏡からお告げ所を見ると、対のスフィンクスが見える
人の顔をしているが、微笑んでいるのか、悲しんでいるのか、無関心なのか分からない表情だ
エ:なにもかも説明して進ぜよう
Ⅵ 3つの神秘の門
お告げ所には3つの門があり、1つの門をくぐらないと、次の門は現れない その先にウユララは住んでいる
第一は大いなる謎の門、第二は魔法の鏡の門、第三は鍵なしの門
まずスフィンクスの第一の門が難題
その目は何も見てはいないが、ムリに通り抜けようとすると氷のように固まってしまう
ある者は通り、ある者は通さない その理由は善良、勇敢、臆病、悪者、愚者などの基準ではないという
そこを通れたとして、魔法の鏡には、その者の外観ではなく内面の真相がありのままに見える
簡単そうだというアに
エ:とんでもない! 自分は完璧だと思いこんでいる者が、鏡の中に怪物を見て、逃げてきたのを何度も見てきた
第三の門は鍵がなく閉まっている ファンタージエン産のセレーンで出来ているから何者にも破壊できない
セレーンはわれわれの意志に反応する
びくともせんものにしておるのは我々の意志のせいで、入ろうと思えば思うほど扉は固く閉まる
あらゆる意図を忘れ捨てればおのずと開く
ア:では、僕は通れるはずがありません
アはウユララについても聞いた
エ:それがまったく分からぬ みな沈黙を守る もし、会ったら話してくれると約束してくれ!
アはすぐさまスフィンクスの前に来た 周りは無数のしゃれこうべが転がっている
スフィンクスの前に立ちすくむア 美が怖ろしいものであり得ると初めて知った
自身をはるかに越えた怖れ 絶大なものの実在への怖れ それでも運を天に任せて通るほかない
気づくとアは門を渡り、同時にすべての怖れが消え去っていた
鏡の門に何かぎょっとする姿が映るかもしれないとは考えたが
怖れのない今、それはとるにたらないことだった
見ると思いもかけない、理解できないものが映った
顔色の悪い、太った、自分と同じ年頃の少年がマットの上に座って本を読んでいる
*
バはぎくりとした これは僕じゃないか これ以上の偶然があるだろうか?
バ:ファンタージエン国が僕のことを知っているならすごいや その声は少し震えていた
*
アは門を抜けると、自身のこと、これまでの生涯、これからの目標など一切の記憶をなくしていた
心は理由もなく晴れやかで、第3の扉の前に来ても、鍵穴もないため、どこかへ行ってしまいたくなった
バ:戻れ アトレーユ 門を入っていかなくちゃ!
アはまた門の前に立つとほんの少し開き、その向こうに柱が無数に並ぶ廊下があった
Ⅶ 静寂の声
アは柱の森ですすり泣く声を聞く 話しかけても、韻をふんで詩にしないと通じ合えない
「私はウユララ 静寂の声 だれも私を見たことはない けれども私はいるのです
私の歌が終わる時は ほかのすべてがうつろい消えると同じこと
ウユララは答 問われなければ答えられない!」
どうして消え去るのかと問うと、
「虚無はここにも及び、幼ごころの君を救う新しい名を与える者は私たちのうちにはいない
われわれは本の中だけの生きもの つくられたままに動くのみ
けれどファンタージエンのかなたには“外国”があり、その住民はアダムとイヴの子
かれらはみな名づけの才に恵まれている だが人間は久しくファンタージエン国にこない
われらがほんとうにいるのを忘れて 信じなくなったのです
私の声を聞くのはおまえが最後 今まで誰にも出来なかったことがおそらくおまえにはできるでしょう」
アは眠りにおち、目覚めるとすべての記憶が戻る
女王に名を与える人の子を見つけて、お連れしなければ
バ:
ああ、ぼく、よろこんで助けに行くのになあ
君たちの所へいく道があるなら教えてくれよな ぼく必ず行く ほんとうだとも
アが見ると、柱の森も、スフィンクスも姿を消していた
アがひと晩だと思っていた出来事は、フは7日間だったという
エンギウックにすべてを話したが、すべては無駄だったと嘆く
エ:生涯を賭けた仕事のまとめが書けるというのに、もはや存在せんものの研究など何の価値もない!
老夫婦はこの地を去り、エンギウックは後に非常に有名な地霊小人になったが、それは学問的研究においてではなかった
けれどもこれは別の物語 いつかまた、別の時に話すことにしよう
Ⅷ 妖怪の国で
フに乗れば「外国」のあるファンタージエン国境に行くのも難しくないと思っていたが
何日も飛んでも見つからず、2人は疲労困憊していた
フ:
幼ごころの君のもとへ引き返したほうが賢明ではないですか?
命は病の原因を探り、治す方法を告げることで、それを持って帰ることではなかった
ア:でも、もう1時間だけ飛んでくれ
この1時間分だけ余分だった
東西南北の4人の大風坊主が力くらべをしているところに出くわし、2人は渦巻や稲妻の中に巻き込まれる
アは4人に聞くと国境などないという
アは何もかもムダだったと思ううち、熱風に放り出されてフと離れてしまう
気を失い、気づくと砂浜にいた 首からさげていたおまもりがないことに気づき、フを呼んでも届かない
向こうから奇妙な一団が妙な踊りをしながら通り過ぎていく 夜魔、妖魔、幽霊、魔女もいる
アはおまもりなしには自分がいかに無力かがはっきり分かった
これまで迷わず決断できたのも、神秘の羅針盤のように導いてくれていたからだった
だが、これまでは人間がファンタージエンに来て、幼ごころの君に名をあげていたとウユララは言っていた
2つの世界をつなぐ道はやはりあるはずだ
アは虚無がじりじりと近づいてくるのを間近で見た
妖怪たちは一斉に虚無に向かって走り出した
アにもその中に飛び込みたいという欲求が圧倒的な強さで襲ってきたがなんとかふんばり
無人になった廃墟の扉の中に入って行った
Ⅸ 化け物の町
アは呪われた運命の一切がこめられた嘆きの声を聞く
そこには壁に鎖でつながれ、餓えて息絶え絶えの人狼グモルクがいた
アはグの鎖を外してあげようと提案するが、
グ:
おれのそばに寄れば、おれは咬みつき喰いつくす それで延びる命は知れたもの
だからそっとくたばらせろ これは魔の鎖で、ここにくくりつけた闇の奥方にしか解けねえのさ
おまえはファンタージエンしか知らんのだな ほかにも世界はいくつもある
自分の世界を持たず、いくつかの世界を行き来できるものもいる オレもそうだ
人間の世界じゃ人の姿をしているが人じゃない
アは人の子の国へ行く道を聞くと、向こうへ渡るのは簡単で虚無に飛び込めばいいが、こっちへは戻れないという
グ:
人間世界に行ったら、もう今のおまえじゃなくなる
伝染病の病原みたいになり、人間どもを盲目にする
やられた者は現実と見かけの区別がつかなるなる 「虚偽(いつわり)」だよ!
ファンタージエンの生きものは夢に描かれたものにすぎん 物語の登場人物
虚無に入ると、幻想や妄想になる
ほんとは怖れる必要もないのに不安がらせたり、欲しがる欲望を持たせたり、絶望させたり
キレイなものはキレイな虚偽、醜いものはみにくい虚偽になる
だから人間どもはファンタージエンからくるものを憎み、怖れて亡ぼすつもりだが
まさにそれが、人間世界に流れこむ虚偽を増やしていると気づかない
おまえら自身が、あっちではファンタージエンなどないと人間に思いこませることに利用されてるんだ
やつらは支配されている 人間どもを支配するのに虚偽ほど強いものはない
要りもしないものを買わせたり、知らないものを憎んだり、盲目的に信じたり
戦争をはじめたり、帝国をつくったり・・・
バは、この人間世界も病んでいることが、今ハッキリ分かった
自分のついた虚(うそ)を思い恥じた
欲しいものを得ようとしてついた虚言、自分を良く見せようとしてついた虚言
グ:
オレの仕えてる奴らがファンタージエンの滅亡を図っていたが
幼ごころの君が使者を派遣したことが分かり、人の子を連れてくることに成功しそうだから
そいつを殺すようここに送られてきたが、イグラムの巣まできて臭跡を失った
ア:私がそのアトレーユだ
グは身の毛もよだつ声を発して死んだが、アが近づくと死を越えてなお内なる悪意のためにアの脚に喰らいついた
虚無が町を取り囲んでいった
Ⅹ エルフェンバイン塔へ
フはアを探し空を無尽に飛び続け、海の中からアウリンを探し出した
と同時に、猛烈な速さでアのもとへ導かれていった
アウリンがグの額に触れ、顎が開き、アの脚は放たれた
アが消え入りそうになり、フは髪をつかみ翔びさった
エルフェンバイン塔に着く頃にはフも消えかかっていた
望みを統べたもう金の瞳の君(幼ごころの君)のことを聞くと
姿は少女のようだがファンタージエン中一番年を召しているという
けして権力をふるわず、われわれとも人間とも違う存在 知るものは一人もいない
賢者は「その神秘を分かれば、己が存在を消し去る」と言ったという
エルフェンバイン塔にも虚無が手をのばし、そこには誰もいない
象牙の丸い丘の頂にある白いもくれん宮の中でアは初めて幼ごころの君を見た
病のせいで顔は蒼白いが、にっこり微笑んでいた
バはハッとした これまで経験したことがないことが起きた
ほんのわずかだが、幼ごころの君の顔が目の前に見え、その途端にその名が分かった
月の子、「モンデンキント」だ! 彼女もまたバを見た
XI 女王幼ごころの君
幼ごころの君:
そなたは務めを果してくれました 何もかもすっかり元通りになります
私たちの救い手を連れてきてくれた 私は彼を見ました 彼も私を見ました
両方の世界はとても近くなっている
それはそなたを大いなる探索に遣わす前から分かっていました
彼はそなたが乗り越えてきたことを共に体験し、やってきました
魔法の鏡で彼の姿を見たではないですか
あなたはこのおひかりをいつも身につけていたので、私は常にそなたと共にいたのです
グが語ったことは真理の半面でしかない
人の子がこの世界に来るのは正しい道で、ここでしかできない経験をして、
それまでとは違う人間になってもとの世界に帰っていきました
以前は平凡でつまらないものに見えていたものに驚きを見、神秘を感じ
そのお蔭でこちらの世界が豊かに栄えるほど、向こうの世界でもいつわりはなくなり、よりよくなるのです
そして、冒険に満ちた物語によってのみ、救い手を連れてくることができた
正しい名だけが、すべての事柄を本当のものにすることができる 彼はもう分かっています
私を新しい名で呼んでくれさえすればいい
バは悩んだ まるきり思い違いをしているのでは? 誰か他の人のことを言っているのでは?
ファンタージエンに行く時、痛いのでは? あんな化け物がうようよしている所は絶対に嫌だ
それに、デブでチーズのような顔の自分を見て、幼ごころの君がガッカリしたりしたら恥ずかしくて顔が真っ赤になった
幼ごころの君は待っても現れないため、最後の手段に出る
これまでのファンタージエンのことをすべて本に書き留めているというさすらい山の古老に初めて会うという
古老は彼女と同じ存在
アとフは傷が癒される場所で休むよう言われる
幼ごころの君を取り巻く7つの力の3つをアとフのために置き、残りの4つがかつぐガラスの輿に乗り
「先へ進みなさい どこかへ!」と言った
XII さすらい山の古老
運命山はファンタージエン最大最高の山脈で、永久氷に閉ざされている
氷巨人のほかは生きものは存在できない
運命山の頂は1つの国ほどある広い高原で、明るい青色の、逆さつららの突起に支えられた家ほどの卵が立っている
幼ごころの君は見えないかつぎ手を残して一人卵の中に入った
文字だけでできた長いはしごがおりてきて、のぼりながら読んでいくと
“モドレ! 帰レ! イカナル時モ 君がワタシニアウコトハナラヌ! 始メガ終ワリヲサガシダシテシマウ
ワタシハ記録者トシテ書キノコス スベテガ死ンダ不変ノ文字トナル
生ガ死者ノナカニ オノガ姿ヲ見ルコトハユルサレナイ”
卵型の広間の真ん中で空中に浮かぶ1冊の本から声がした
表紙にはアウリンと同じ2匹のヘビが描かれ、「はてしない物語」と題名が記されている
バ:今読んでる本だ! どうしてこの本がこの本自身に出てくることなどできたのだろう?
古老は、僧服を着て、顔をあげずに筆で本を書きつづけ、
そこに書いている文字は、いまこの瞬間に起きていることだった
古老:この本こそがファンタージエンであり君であり私なのじゃ この本はこの本の中にある
幼ごころの君:あなたの助けがいるのです 卵はみな新たなる生命の始まりです
古老:
新しい始まりをつくれるのは人の子のみ 彼もすでにその一部になり取り消すことはできぬ
つまりこれは、かれ自身の物語だ
幼ごころの君:その物語をお話しなさい
古老:
私はすべてを再び始めから書かねばならぬ
終わりなき終わり われらは果てることなき繰り返しの環にはまることになる
それでも古老は書き始めた
“こんな字が、ある小さい店のドアのガラスに書かれていた・・・”
バ:こんな話は知らないや やっぱりずっと思い違いをしていたんだ とガッカリした
だが、10歳くらいの背の低い太った少年が古本屋に入る場面になると、バはかれ自身の話だと気づく
自分は読者だと思っていたのに それじゃこれを読んでいる人がいるかもしれないわけだ それが果てしなく起こる!
ゾっとして、耳をふさいだが、古老の声は内から響いた
何かを望み、到底叶えられないと思っているうちは、それを望んでいると固く信じているが
突如、現実になると、望まなければよかったと思った
古老の物語は最後までいき、また一切が冒頭から始まる
バは耐えられなくなり泣きながら不意に叫んだ
「モンデンキント! 今ゆます!」
卵はものすごい力で砕け、多くのことが一瞬に一度に起こった
『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ/著(岩波書店)その2へつづく