メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

心の児童文学館シリーズ 10 金色の影 ガーフィールド、ブリッシェン/作 ぬぷん児童図書出版

2024-07-15 11:16:52 | 
1981年初版 沢登君恵/訳 チャールズ・キーピング/表紙カット

「作家別」カテゴリー内に追加しました



また秀逸なミステリーものを期待して読んだら、神話でビックリ

共著ということもあり、以前読んだものとは全く違ったテイストながら
ヒトと神が共存していた時代をいきいき描いている

キーピングの絵は子どもたちが見たらトラウマになるレベル



【内容抜粋メモ】

■1 予言
若く美しい漁師が砂浜にいる女神に恋する
海の女神テティス:わたしの夫になるのはだれですか?

老婆(女神テミス):お前が産む息子は、父親より偉大になる

漁師:ぼくがあなたの夫になりましょう

女神は嘲笑して去る









頭がはげて、目の悪い老吟遊詩人は、神々や英雄の話を聞いて集め
物語にして、竪琴を鳴らしながら語り、ひと晩の食べ物と宿をもらう旅をしている

タイタン神族のプロメテウスは、人間を創り、天上から火を盗んで与えた罪で
裸のまま手足を鎖につながれ、毎朝、ゼウスの大ワシに内臓を食われる
果てしない拷問に耐えて、ゼウスの怒りがとけるのを待っている

テティスの夫はゼウスだろうか?
その子どもが自分を解き放してくれるのではないかと夢見ている

吟遊詩人が乗ったガレー船が霧で停泊し、気味の悪い岩山のかなたに
プロメテウスが見えたと言う船員

吟遊詩人の視力の衰えた目には見えず、神を信じる力まで失いかけていた




■2 金色の目
アムピトリュオン王と妃アルクメネの仲はうまくいっていない
ゼウスが夫に化けてアルクメネと一夜を過ごしてヘラクレスが産まれた




■3 ヘビの襲撃
ヘラクレスは生まれて10か月で巨大なヘビ2匹を絞殺する









盲目の預言者テイレシアス:
ゼウスの妃ヘラが嫉妬して、ヘラクレスを殺そうとヘビを遣わした
あの子は英雄の中の英雄になられます
だが、ヘラに憎まれ、つけ狙われることになりましょう

吟遊詩人は神がどんな姿か教えてくれと請う

テイレシアス:
神々は人間によく似ている
光り輝き、流れるように動く
ヘルメスは銀色っぽかった
死神の使いでもあるから、遅かれ早かれその手をとらねばならぬ




■4 目の中のヘビ
アイアコス王の3人の王子 テラモン、ペレウス、ポコス
とくにポコスはまぶしいほど美しく、2人の兄より優れていたため父母も一番に愛した

3人は石の円盤を投げる競争をして、ポコスは兄たちに殺される
テラモンはサラミス島、ペレウスはプティアに逃げる

王は神々がポコスの才能と美しさを妬んで召し上げられたと信じる
吟遊詩人に2人の息子の服を与える

ヘラクレスは芸術、戦術すべてに優れていたが
文学の先生リノスにからかわれてカッとした勢いで殺してしまう




■5 美少女アタランテ
カリュドンの森に棲む巨大イノシシは
月の女神アルテミスが送りこんだと信じられている
王は怪物退治の狩りを行い、テラモン、ペレウスも参加する

アルゴスの娘アタランテも参加すると
狩りは女のすることではないと反対する王子たち
エウリュティオン:アルテミスは不慮の死をもたらす女神でもある








■6 メレアグロスの死
妃は息子メレアグロスが産まれる時、女神モイラが立ち合い
燃えさしが燃え尽きてしまわないかぎり
永遠に生きると言われたのを固く信じているため
メレアグロスが狩りに参加した時もまったく心配していなかった

イノシシはたちまち王子たちを八つ裂きにする
最初の矢を射たのはアタランテ
槍でとどめをさしたのはメレアグロス

メレアグロスはアタランテの手柄だと宣言する
叔父プレクシッポス:恋に目のくらんだ生意気な若造め

メレアグロスは叔父兄弟を殺してしまう

妃はメレアグロスがイノシシを殺して無事帰還したことを喜ぶが
2人の愛する兄を殺したと聞いて絶望し、燃えさしを火に投げ込む

メレアグロス:ぼくは燃えている!
女神は約束を守り、メレアグロスは息絶える




■7 身代わり
太陽神アポロンはアドメトスに死が訪れても
喜んで代わりに死んでくれるものが家族や召使いにいれば助けてやると約束

アドメトスは狩りの手柄を自慢して酒を飲み、妻アルケスティスと寝ていると
死神の使いヘルメスが迎えに来る

アドメトスは自分を愛する老いた乳母に身代わりを頼むと

乳母:
来年でしたらお役にたてましたのに
来月、私は娘と孫に会わなければならない
可哀想なアドメトスさま

老庭番:耳が聞こえんのです とウソを言って逃れる

子どもは召使いの女が連れ去る

母:
この子は私たちに別れを告げに来たんですわ
私たちはこの子に一度命を与えた
私は夫を愛しているのです

父:
神々に最も愛される者が若くして死ぬと言われている
わしらは互いに愛し合っているのだ

絶望して寝室に戻ると愛する妻アルケスティスが毒にんじんを飲んだ後だった
アルケスティス:なぜまず最初に私の所に来てくださらなかったの
アドメトス:お前のいない生活なんて考えたこともなかった

死神ハーデスがアルケスティスを連れて行く




■8 死神との戦い
ヘラクレスが息子の1人に花嫁を選んでやろうとやって来て
アドメトスから妻が死んだと聞いて同情し、黄泉の国アオルノンまで走って
とうとうアルケスティスの命を救った








■9 死の競走
アルゴス王は娘アタランテを愛しているが
王家の血を絶やさないため、男の孫が必要だった

アタランテ:
私と競走して一番はじめに勝った人を夫にします
私に負けたら、その人の命をください

風のように速いアタランテは、若者を軽々と追い抜き弓を射て殺す

アタランテそっくりの灰色の目をした若者メラニオンが挑戦する
メラニオンは金のりんごを落として、アタランテはそれを拾う
3つ目のりんごを拾い、メラニオンがゴールの糸を切る

アフロディテの神殿に誘うアタランテ
メラニオン:祭壇を汚すつもりか?

2人はばちが当たってライオンにされた









■10 中庭の8ひきのヘビ
海岸で夫を待つテティスのもとに海の神ポセイドンが声をかけるが
老吟遊詩人の「テティスの息子は父親より偉くなる」という寝言を聞いて姿を消す

ヘラクレスはたった1日の違いでミュケナイ王となった
いとこエウリュステウスの家臣に仕えることとなる

死神にも勝ったことを愛する4人の息子に自慢したいと思い帰宅すると
太ったまだら模様のヘビが中庭にもつれあっていて
全部で8匹殺すと、ヘビではなく自分の息子とその友だちだと分かる



■11 ネメアのライオン
ヘラクレスは子ども殺しの罪に釣り合う罰を与えてくれと頼む
巫女:エウリュステウス王が命じる12の仕事に耐えて成し遂げなければなりません

エウリュステウスはネメアの巨大なライオンを殺せと命令する
妃:皮をはいで持ってきなさい

ライオンに子どもを殺されたモロルコスは
ヘラクレスに殺すのはムリだと言うが
ヘラクレスはライオンを殺して、皮をとる








■12 9頭の水蛇ヒュドラ
エウリュステウスは血を見るのが大嫌いなため
地下に丸い部屋を造ってこもる

13歳のイオラオスは、誕生日にプレゼントされたナイフでライオンの皮を切ってくれと頼む
ナイフはぽっきり折れて、爪の上にヒザをついたため血が流れる
その爪で皮をキレイに切ることができる

イオラオス:皮を鎧のように身にまとい、頭をかぶとのようにかぶってください

エウリュステウスは2番目の仕事に9頭の水蛇ヒュドラ退治を命じる
ヒュドラの粘液には毒があり、触れただけですべてのものが死ぬと怖れられている

イオラオス:
ヘラクレスさまと一緒にヒュドラを退治しに行きます
父母が最後にボクに言った言葉は
ボクがどうなろうと神々のご意志で、ぼく自身のせいだということでした

甘ったるい臭いが漂う沼地からいきなりヒュドラが現れ
それが殺した子どもたちの顔に見える
イオラオス:殴りつけてください!
ヘラクレス:たしかにこれは誤魔化しだ!

首を斬ると、かさぶたから新しい頭が出てくるため
イオラオスに首をたいまつで焼いてもらって退治し
矢に血をひたす









■13 ふんの山
エウリュステウスの友アウゲイアス王は途方もないお金持ち
臆病者なのに、異常なほど幸運に恵まれ、馬と牛を大理石の家畜小屋で飼っていて
30年間掃除をしなかったため、ふんの山と化し、ハエが群がり、悪臭に満ちている

エウリュステウスはヘラクレスに家畜小屋の掃除を命じる
ヘラクレス:父の名にかけて日暮れまでに終わらせてみせます

ヘラクレスは2つの川をつなげて、家畜小屋に流しこみ
ふんの山は一気に海に流れ出る

アウゲイアスは自分の怠慢に気づき、体をごしごし洗う




■14 よみの国へ
その後も次々と英雄らしい活躍を見せたヘラクレス
人々は賞賛し、その跡を観光地にして儲けている

エウリュステウスは、よみの国の死神ハーデスの王国に行き
頭が3つある地獄の番犬ケルベロスを連れてこいと命じる

ヘラクレスとイオラオスは固い友情で結ばれていた
イオラオスは21歳で逞しく、ヘラクレスは年齢とともに太って
以前のように敏捷に動けないことを不安に思い
死神ハーデスより、自分が殺した子どもたちの亡霊に会うことを怖れる







老渡しもり:向こう岸に渡してやろうかね

死んだはずのメレアグロスがデイアネイラを探してくれと頼む
ヘラクレスは死者の国に渡るスチュクス川を渡ったと知る

死神ハーデス:武器を使ってはいけない

太いオリーブの木でできたこん棒を投げると
ケルベロスは躍りかかり、その隙に胴体を持ち上げる




■15 女どれい
吟遊詩人は各地で神々の話を聞くが
いまだに自分の目で確かめることはできない

プロメテウスはテティスの息子が父親を越えることを
ゼウスに警告したと知り驚愕する

リュディアの女王オムパレーは、数年前、夫を野牛に殺され
美しくたくましい男の手足のパーツを彫刻にして集めている

旅人から買い取った奴隷に化粧をさせ、ケーキを口に運ばせながら
吟遊詩人がヘラクレスの物語を語ると、まるで夫にそっくりだと話す

オムパレー:
今ごろはきっと誰かのいい旦那さまになっているんじゃないの
私はハッピーエンドが好きなの

奴隷は川で化粧を洗うと祈る
ヘラクレス:父なるゼウスよ 私自身の物語の結末は私に語らせてください








■16 鎖を解かれたプロメテウス
12の仕事を終えたヘラクレスは、ある男に泥棒と言われてカッとなり
崖から突き落として殺した罰として、奴隷として1年働くよう言われた

罪を犯すこと、英雄であることにウンザリしていたが
大勢の夢や期待を背負っていることに気づいた

プロメテウスは岩山を登る人間を見つける
ちっぽけな不屈の男が自分に手を振るのを見て涙があふれる

男が放った矢がゼウスの大ワシを貫き息絶え
1千年縛っていた鎖が切られて自由の身となる









プロメテウス:
神でなく人間がしてくれたことで、豊かな気持ちになった
私のつくった人間が誇らしいのだ

コーカサス山脈も大ワシも厚い氷に覆われる
(ノアの箱舟みたいに、いつか出てくるかもしれないな




■17 忘れられなかった予言
老吟遊詩人はペレウスにヘラクレスの物語を語る

半人半馬のケンタウロスのネッソスが妻ディアネイラを連れ去ろうとして
ヘラクレスはヒュドラの血にひたした矢で射る

死ぬ間際に自分の血はヒュドラの毒が回っているから
夫のシャツをひたして、万一、その愛が冷えた時
着せれば愛情が取り戻せると教えた

ある日、ヘラクレスは美しい娘に恋をした
ディアネイラはシャツを着せると、拷問のような苦しみにもだえ
自ら火葬用のまきを積み、焼いて死んだ

ペレウス:その話は何度聴いても飽きないな

老吟遊詩人は急にペレウスが憎らしくなり
ポセイドンもゼウスですら拒んだ女神テティスの話をすると
ペレウスはギイバイカの茂みに向かって行く




■18 果たされた予言
テティスはイルカに乗って海岸に来て、洞窟で休むと
ペレウスが襲いかかってきたため
ライオンや火、水などに姿を変えて逃げようとするが
とうとう女神を妻にする

老吟遊詩人:
さみしいな
だが、さみしいだけで、怖がることはない


ヘルメス:
偉大なヘラクレスは、今オリュンポスの山にいる
ヘラが許して、娘のヘーベを永遠の妻として与えたのさ
ボクは死神の使いヘルメスだ
とうとうあんたを迎える時になったんだ

老吟遊詩人:とうとう! わしにも神が見えた




あとがき
ガーフィールド氏を訪ねると、奥さん、16歳の娘ジェーンに迎えられた







インタビュー

Q:児童文学について

ガーフィールド:
大人の文学と児童文学は本質的に違いはない
表現の仕方だけで、唯一の違いは
子どもたちはスピーディーに展開する物語が好きということ

Q:『ギリシャ神話物語』と『金色の影』をどうつくったか

ガーフィールド:
ブリッシェンは昔からの親友
キーピングは期待通り個性的な絵を描いてくれた

小説家は素材を集め、物語に編み込むが
実際の目で見ることができない
老吟遊詩人は私なのです


Q:物語でテティスが登場するテッサリアの海岸について

ガーフィールド:
私はギリシャに行ったことがない
あれは私が子どもの頃、よく遊んだイギリスのライム・リージスの海岸を描いた



ことばの秘密 作品の秘密 犬飼和雄
『海辺のたから』は著者メアリー・アニングが子どもの時、化石に惹かれた様を描いた

メタル・アンモナイトは優雅で繊細な天然の金属細工だった
ゴールデン・キャップ山も、その名の通り、金色に輝く黄鉄鋼に覆われていた

本作も同じ海岸を舞台にしていて、神々のすむオリュンポス山は金色に輝いている
老吟遊詩人の悲哀、孤独、絶望感が血となって流れ、妖しい魅力を添えている
ゼウスも老吟遊詩人もイラストとして描かれていないことが素晴らしい

ガーフィールドは看護兵として第二次世界大戦に従軍した
本書はとりわけ難解で翻訳の苦労がしのばれる






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