メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『<現代版> 絵本御伽草子 うらしま』 ヒグチユウコ/絵(講談社)

2017-05-07 14:02:15 | 
『<現代版> 絵本御伽草子 うらしま』(講談社)
日和聡子/文 ヒグチユウコ/絵

「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。

「御伽草子」
室町時代から江戸時代初期に成立した短篇物語の総称
神仏の化身や擬人化された動物が登場するなど
多種多様な物語が絵とともに描かれている



『浦島太郎』と言えば、亀を助けて、竜宮城へ行き
戻った時には随分時間が経っていて、玉手箱を開けるとおじいさんになる
そんなストーリーをずっと絵本でしか読んでこなかったが、

本編のストーリーも、巻末にある原典『浦島太郎』も随分違った雰囲気で驚いた
ほかの「日本昔話」的な話も、ほんとうは違うのだろうか?

子どもに親しんでもらおう、または倫理観を養おうとする余り
原典の妖しさ、魅力を相当そぎ落として広まってしまったなら
これほど惜しいものはない

ヒグチさんの緻密に描きこまれた絵は、まさに原典の妖しさを表現するのにピッタリ


あらすじ(ネタバレ注意

貧しい一家の長男、タロウは沖で亀を釣り上げ、浜へ還す
亀だけ還すわけにもいかないと、漁でとったものもすべて海に還したという

その兄がある日、夜が更けても帰らないため、家族も村人もみんなで探すが見つからなかった
家はますます陰鬱になり、その日暮らしを続けた


妹は、浜に行くなと言われていたが、
その朝見た夢が気になり行ってみると大きな甕を見つける

中を覗くと、豪華な屋敷、姫、女房らしき姿とともに
昏々と眠り続ける兄の姿が見える

妹は、そのワケを知りたくて、甕の中の世界に落ちていく
闇から光り輝く場所にきて、浜には甕とひそひそと話す女がいる

女に聞くと、兄は竜宮城にいるという
「どうやら、跡取りを作らせようとしているみたいね」


女には引き留められるが、妹は鬱蒼とした森の奥へ入り、兄を探す

竜宮城と思われる屋敷に着くが、誰もいない 庭園の立派な松も書割と分かる

急に後ろから「だあれだ」と小さな手で目隠しをされて驚く
少女は一人でここに暮らしているという
その面影に、父母や兄が重なる

しばらくおはじきで遊ぶと「早く帰らなきゃね」と言われる
1個のおはじきを拾うと「それ、あなたのよ」

その後、強い風に押されるように磯辺まで戻っている妹

懐におはじきの重みを感じながら、父母が心配しているであろう家に戻る


***

【原典 内容抜粋メモ】

丹後国に浦島太郎という24、5の若者がいた
磯で亀を釣り上げるが

「鶴は千年、亀は万年とて、命久しきものなり
 ここにて命をたたん事、いたはしければ、助くるなり
 常にはこの恩を思い出すべし」
と海へ還す

翌日、船に美しい女房が一人で波に揺られて来る
そのさめざめと泣く姿に同情したタロウは、一緒に船に乗ると

「一樹の蔭に宿り、一河の流れを汲むことも、皆これ他生の縁ぞかし
 ましてや遥かの波路を、はるばると送らせ給ふ事、ひとへに他生の縁なれば
 わらはと夫婦の契をもなし給ひて、同じ所に明し暮し候はんや」
と言われる


竜宮城に着き、四方の戸を開けると四季の美しい景観があらわれて魅いるタロウ
東の戸は春の景色、南の戸は夏の景色、西は秋、北は冬

3年ほど楽しく暮らすが、ある日タロウは頼む

「われに三十日の暇をたび候へかし
 故郷の父母を見すて、三年を送り候へば、あひ奉りて、心やすく参り候はん」


「二世の縁と申せば、たとひ此世にてこそ夢幻の契にてさぶらふとも
 必ず来世にては、一つ蓮の縁と生れさせおはしませ」


とまた泣いて別れを惜しむ女房
自分はいつか海に還してもらった亀だと明かす


タロウが故郷に帰ると、人は絶え、荒地と化している
老人に「浦島の行方は候はぬか」と問うと

「不思議にこそ候へ 浦島とやらんは、はや七百年以前の事と申し伝え候」と石塔を見せる

タロウは、泣く泣く、松の木陰に来て、亀にもらって「開けるな」と言われていた箱を開けてしまうと
若者だったのがすっかり変わり果ててしまう

タロウは鶴になって虚空に飛び上り、丹後国の浦島の明神となり
亀も同じ所に神となり、夫婦とも明神になった


『御伽草子(下)』岩波書店



コメント    この記事についてブログを書く
« 中山うりライヴ@シネカフェ... | トップ | 『思いあがりの夏』眉村卓/著... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。