メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『もっと知りたいパウル・クレー』

2011-07-23 17:09:17 | 
『もっと知りたいパウル・クレー』新藤真知/著(東京美術)

あたたかいオレンジ色が可愛い表紙の絵は「セネキオ(さわぎく)」。
この「もっと知りたい」シリーズは、たくさんの絵、写真を入れたフルカラーで、
略歴はもちろん、その人となり、画家の生きた時代背景、絵の一般的評価などなど、
画家の全体像が分かり易く書かれている上、著者の持つ深い思い入れも伝わってくる。


□略歴あらまし
スイスのベルン生。父は音楽教師
バイオリンを弾く
3歳上のピアニスト、リリー・シュトゥンプフとの結婚は身分の差あり
息子フェリックスの世話と主夫
高校生から日記をつけてたり、作品の目録を作ったり、記録魔なのは共感がもてるw
「父は度を超えた整理魔」(フェリックス)

カンディンスキーに会う。家はお隣さん!
「青騎士」に参加

「色彩は私を永遠に捉えた」
(モワイエ、マッケらとチュニジアを旅行した際の日記の言葉)

第一次大戦で友人画家マッケ、フランツ・マルクが戦死し、クレーが有名に
ヴォルテールの『カンディード』挿し絵
文字好きってゆうのも共感v
バウハウスの教授
デュッセルドルフ美術学校の教授

「大自然が動き続けるのと同じような動きに身を委ねること、そうありたいと要求する自由が芸術家にはある。
 眼に見える典型的なもののイメージから、原型的なもののイメージへ」p.42

ナチス台頭によって美術学校を解雇され、スイス亡命
「新しい天使」はデューラー「メランコリア」へのオマージュか
音はもともと色彩感覚と密接な関係にある(p.52)
コンポジション(画面構成)

「クレーほど徹底して「音楽を描く」ことを追求した20世紀の画家はいない。
 音楽は時間を体験する芸術様式だが、クレーは絵画の中にリズム(時間)を描こうとした。」(p.52)

フーガ=楽曲形式の一つ、あるいは複数の主題が次々と複雑に模倣・反復されていく対位法的楽曲。遁走曲(とんそうきょく)。
「ポリフォニー絵画」ポリフォニーとは、複数の音が重なって同時に響くさま。

エジプトに惹かれたってゆうのも共感/驚
チュニジアで色彩、エジプトで画面構成を獲得した
原風景はベルン・アルプスのニーゼン山
「クレーにとって古代ギリシア・ローマの地中海文化は、内向的なゲルマン気質に光を取り入れる大きな天窓でもあったのだろう」(p.54)

マチエール(絵の肌触り)
糊絵具の実験が後年の皮膚硬化症の原因に?
と星がお気に入り
ヴィネット=書籍の想定などに使われる小さな絵
死ぬ前年1939年には1年間に1253点も描いた
愛猫の名前がビンボーてw

晩年様式
代表作は「パルナッソスへ」「ドゥルカマラ」
「クレーの天使」谷川俊太郎さんが絵本に寄せた詩はこれだったんだ/驚
そもそもクレーに出会ったのは、この本だった。
1940年。60歳で死去。
「私はこの世から遠く隔たった場所にいる」(墓碑名

矢印もお気に入り
第二次世界大戦中、フェリックスは捕虜となり、リリーが死去。両親の眠るベルンへ移住したのは1948年。
父の絵の流出を防ぐため裁判で争う。フェリックス他界後、家族コレクションは、息子アレクサンダーの手に渡り、「パウル・クレー・センター」2005年開館。
生涯に制作した総数9500点のうち約4000点が収蔵されている。
近現代画家の中で全作品の4割を所有する個人美術館は稀。

タブロー=1完成された絵画作品。エチュード・デッサンなどに対していう。2 壁画・天井画に対し、カンバス・板に描かれた絵。


「一日中いままでになくからだが重くて何もする気にならなかった。それでよかったのです。
 何も不平を言うことはないのです。待ち望んでいた静けさとでもいうべきものの訪れ。
 この前の日曜日はいわばぼくの制作活動の頂点で、それから平落ち、パイロットの用語を使うと。」(クレーの手紙)


コメント    この記事についてブログを書く
« チャイコフスキー「くるみ割... | トップ | 『ルパン三世 2nd series』(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。