1971年初版 山内清子/訳
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ジュニア世界の文学シリーズはどれをとっても秀逸
自分を重ねて読み進めて、客観視することができる
【内容抜粋メモ】
登場人物
ブルブラッセン家
父エイリック
母
インゲル 長女 15歳
トーラ 妹
クヌート 弟 事故で背中を痛めた
スヴェーレ・フグリ 隣家に住むインゲルの幼馴染 17歳 弟オラフ
ランディ 母が神経症を患っている
ヨルディス
エルセ 母子家庭
ロス夫妻
スキー教室の帰り道、父が正体なく酔いつぶれて歩いているのをマネて笑う子どもたち
恥をかいたインゲルは秘密の岩かげに行って泣く
*
去年の春
父はお気に入りの弟クヌートを連れて飲みに行った
亡くなった男児の代わりに可愛がっている
クヌートは自動車に乳母車ごと跳ね飛ばされて崖に落ちて強く背中を打った
母:酔っぱらって、子どものことを忘れたからこんなことになったんだわ!
クヌートはしばらく入院して、退院後も背中にコルセットをしている
引きずらない母は子どもっぽいと思うインゲル
学校の宗教の時間に「7度を70倍するまで許すべきだ」と教わったが
許すとは、なんと難しいことだろう
下の子たちが生まれる前はお父さん子だったインゲルは
その日から、父への不信が心の傷となって、関係が変わってしまった
真相を知るために事故現場に行き、マグヌス夫人から話を聞く
お酒を出した時にエイリックが通りかかったため夫人が誘った
父は子どもがいたためそれほど飲みはしなかった
マグヌス家の幼い双子は無茶なほどクヌートを乗せた乳母車を何度も押していた
そこに自動車が通りかかり、乳母車をはねて過ぎていった
乳母車が崖に落ち、父は慌てて追いかけて腕をケガした
母に話すと「運転手が悪い」と言う
母:父さんを許してあげて
母は貧しい家庭に育ち、父は酒乱だったため、インゲルよりはるかにツライ思いをした
父はそれほど飲まないし、飲んでも暴力を振るったりしないからいいと言う
*
1人の見知らぬ男が割れやすい氷の上を滑っているため大声を出して注意する
その際、スキーで転んで足を捻挫したインゲル
ヒュッテを買ったロス氏は、命を救ってくれたお礼に家に連れて行く
都会から来たお金持ちの夫妻とオシャレで居心地の良いインテリアに驚くインゲル
夫人は湿布して、夕食をごちそうしてくれる
食後にラジオでクラシックを聴いて、泊まっていくようすすめる
夫妻には、以前、同じインゲルという名前の女の子がいたが
生後数か月で亡くなっている
夫人は同じ名前のインゲルに偶然とは思えない縁を感じる
インゲルに使ってない部屋を与えようかとまで考える
インゲルは父の件を話す
ロス夫人:
お父さんをあまり厳しく責め過ぎているのでは?
私たちは何度でも許さなければならない
あなたの値打ちは、あなたの人格で決められるものよ
母が迎えに来て、家に戻る
母:インゲルが父に逆らうほど、父は酒に溺れてしまう
あの事故の後、汚名をそそぐために父は謹慎していなければならなかったはずだ
それが出来なかったのは、父の意志の弱さだ
*
隣家の幼馴染スヴェーレが様子を見に来る
小さい頃はよく遊んだが、学校に行くようになってから
それぞれ別の友だちと付き合うようになった
インゲルは1室で家族みんなと寝るのはイヤだと主張し
屋根裏部屋を自分用にしてもらう
ロス夫人はヒュッテを引き払う際、インゲルのためにいろんな小物をくれた
母はロス夫人と話した時、インゲルに部屋を使ってもらい
そこから学校に通い、ピアノも習えばいいと言っていたと伝える
インゲルは夢のような話を信じる
父はインゲルのために本棚を作ってあげるが
娘が部屋にカギをかけていることにショックを受ける
“自分の部屋にいるということが、どんなに自由なものかということは
それを経験したことのなり母に説明しても分かってもらえないだろう”
*
成人の儀式である「堅信礼」が近づき、インゲルは友人と着ていくドレスに刺繍をする
ランディとヨルディスが踊りだし、エルセは口笛を吹き
インゲルはロス夫人からもらったハモニカを吹く
気づくと隣家でスヴェーレたちが見ていて、父母に注意される
ランディは美容師、エルセは洋裁師、ヨルディスは結婚する夢を話す
インゲルはロス夫人の話を秘密にする
“仕事は、なにかの罰でさせられるものではない
生活とは、そんなものではないはずだ
母のようにはなりたくない”
父はインゲルの堅信礼用に高価な服や靴を揃えてくれた
今日1日くらいうわべだけでも仲良くしようと思ってもなかなかうまくいかない
「われらの負いをも許したまえ われらに負いめあるものを・・・」
晴れ着を着てインゲルは無事に堅信礼を終える
*
5月17日の憲法記念日
パーティーでイバールからダンスに誘われたランディは断る
意地悪ばかりするからってそれは非礼だと責めたインゲルもまた
スヴェーレの誘いを断ったのに、同情からイバールと踊り
ランディとケンカになる
エルセの母はプロポーズを受けて、再婚することになる
*
母から生地をもらい、エルセに手伝ってもらってオシャレな夏服を作ってもらう
秋から学校に通うと決めたエルセに驚く
ロス夫妻を訪ねると、13歳のリーブという親戚の少女がいて
「うちの子どもになる」と聞いてショックを受け、インゲルはまた岩かげに来る
ロス夫人:リーブのお友だちになってくださいね
部屋に来てと言ったことを忘れたのか?
ロス夫人も所詮あてにならない大人の一人にすぎないのか
父を許せないのと同じように、ロス夫人を許すのは難しい
雹の嵐になり、近くに落雷する
命の危険を感じて、この世で信頼できるのは父だけだと分かる
その父がインゲルを心配して森まで探しに来てくれる
父:いつかおまえが話していたのを覚えていたんだよ
インゲル:父さんにすまないことをした
父:わしを許せると思うかい?
インゲル:私こそ許してくれる?
雷雨は止み、インゲルはロス夫人の話を父母にする
母:こんなうまい話をお前が真に受けると知っていたら話さなかったのに
ロス夫人が心配して家に来て、父母は事情を話す
ロス夫人:
私を許してくれるかしら?
あの時、深く考えずにいたが、忘れていたわけではなかった
リーブは父親が大好きだったが、戦時中、娘に会おうと捕虜収容所を脱走して射殺された
リーブは自分のせいで父が死んだと思った
その後、母が働いて倒れて亡くなった
リーブは母も自分のために犠牲になったと思い込んだ
インゲルは事情を知らず、僻んでいたことを認める
冷静に考えると夢のような話を信じて子どもっぽかったと振り返る
■あとがき
ハルディス・モーレン・ヴェーソース
1907年生まれ 現代ノルウェーのもっとも優れた詩人の1人タリエイ・ヴェーソースと結婚
本書は当時のノルウェーの平均的な農村を舞台にして
他者に対する「許容」の問題を底辺に置き
スヴェーレとの恋愛感情や、少女の心理のうつり変わりを微細に描いている
1940年にナチが全土を占領し、5年間、ノルウェーは自由を奪われ
文芸作品の出版も禁止された
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ジュニア世界の文学シリーズはどれをとっても秀逸
自分を重ねて読み進めて、客観視することができる
【内容抜粋メモ】
登場人物
ブルブラッセン家
父エイリック
母
インゲル 長女 15歳
トーラ 妹
クヌート 弟 事故で背中を痛めた
スヴェーレ・フグリ 隣家に住むインゲルの幼馴染 17歳 弟オラフ
ランディ 母が神経症を患っている
ヨルディス
エルセ 母子家庭
ロス夫妻
スキー教室の帰り道、父が正体なく酔いつぶれて歩いているのをマネて笑う子どもたち
恥をかいたインゲルは秘密の岩かげに行って泣く
*
去年の春
父はお気に入りの弟クヌートを連れて飲みに行った
亡くなった男児の代わりに可愛がっている
クヌートは自動車に乳母車ごと跳ね飛ばされて崖に落ちて強く背中を打った
母:酔っぱらって、子どものことを忘れたからこんなことになったんだわ!
クヌートはしばらく入院して、退院後も背中にコルセットをしている
引きずらない母は子どもっぽいと思うインゲル
学校の宗教の時間に「7度を70倍するまで許すべきだ」と教わったが
許すとは、なんと難しいことだろう
下の子たちが生まれる前はお父さん子だったインゲルは
その日から、父への不信が心の傷となって、関係が変わってしまった
真相を知るために事故現場に行き、マグヌス夫人から話を聞く
お酒を出した時にエイリックが通りかかったため夫人が誘った
父は子どもがいたためそれほど飲みはしなかった
マグヌス家の幼い双子は無茶なほどクヌートを乗せた乳母車を何度も押していた
そこに自動車が通りかかり、乳母車をはねて過ぎていった
乳母車が崖に落ち、父は慌てて追いかけて腕をケガした
母に話すと「運転手が悪い」と言う
母:父さんを許してあげて
母は貧しい家庭に育ち、父は酒乱だったため、インゲルよりはるかにツライ思いをした
父はそれほど飲まないし、飲んでも暴力を振るったりしないからいいと言う
*
1人の見知らぬ男が割れやすい氷の上を滑っているため大声を出して注意する
その際、スキーで転んで足を捻挫したインゲル
ヒュッテを買ったロス氏は、命を救ってくれたお礼に家に連れて行く
都会から来たお金持ちの夫妻とオシャレで居心地の良いインテリアに驚くインゲル
夫人は湿布して、夕食をごちそうしてくれる
食後にラジオでクラシックを聴いて、泊まっていくようすすめる
夫妻には、以前、同じインゲルという名前の女の子がいたが
生後数か月で亡くなっている
夫人は同じ名前のインゲルに偶然とは思えない縁を感じる
インゲルに使ってない部屋を与えようかとまで考える
インゲルは父の件を話す
ロス夫人:
お父さんをあまり厳しく責め過ぎているのでは?
私たちは何度でも許さなければならない
あなたの値打ちは、あなたの人格で決められるものよ
母が迎えに来て、家に戻る
母:インゲルが父に逆らうほど、父は酒に溺れてしまう
あの事故の後、汚名をそそぐために父は謹慎していなければならなかったはずだ
それが出来なかったのは、父の意志の弱さだ
*
隣家の幼馴染スヴェーレが様子を見に来る
小さい頃はよく遊んだが、学校に行くようになってから
それぞれ別の友だちと付き合うようになった
インゲルは1室で家族みんなと寝るのはイヤだと主張し
屋根裏部屋を自分用にしてもらう
ロス夫人はヒュッテを引き払う際、インゲルのためにいろんな小物をくれた
母はロス夫人と話した時、インゲルに部屋を使ってもらい
そこから学校に通い、ピアノも習えばいいと言っていたと伝える
インゲルは夢のような話を信じる
父はインゲルのために本棚を作ってあげるが
娘が部屋にカギをかけていることにショックを受ける
“自分の部屋にいるということが、どんなに自由なものかということは
それを経験したことのなり母に説明しても分かってもらえないだろう”
*
成人の儀式である「堅信礼」が近づき、インゲルは友人と着ていくドレスに刺繍をする
ランディとヨルディスが踊りだし、エルセは口笛を吹き
インゲルはロス夫人からもらったハモニカを吹く
気づくと隣家でスヴェーレたちが見ていて、父母に注意される
ランディは美容師、エルセは洋裁師、ヨルディスは結婚する夢を話す
インゲルはロス夫人の話を秘密にする
“仕事は、なにかの罰でさせられるものではない
生活とは、そんなものではないはずだ
母のようにはなりたくない”
父はインゲルの堅信礼用に高価な服や靴を揃えてくれた
今日1日くらいうわべだけでも仲良くしようと思ってもなかなかうまくいかない
「われらの負いをも許したまえ われらに負いめあるものを・・・」
晴れ着を着てインゲルは無事に堅信礼を終える
*
5月17日の憲法記念日
パーティーでイバールからダンスに誘われたランディは断る
意地悪ばかりするからってそれは非礼だと責めたインゲルもまた
スヴェーレの誘いを断ったのに、同情からイバールと踊り
ランディとケンカになる
エルセの母はプロポーズを受けて、再婚することになる
*
母から生地をもらい、エルセに手伝ってもらってオシャレな夏服を作ってもらう
秋から学校に通うと決めたエルセに驚く
ロス夫妻を訪ねると、13歳のリーブという親戚の少女がいて
「うちの子どもになる」と聞いてショックを受け、インゲルはまた岩かげに来る
ロス夫人:リーブのお友だちになってくださいね
部屋に来てと言ったことを忘れたのか?
ロス夫人も所詮あてにならない大人の一人にすぎないのか
父を許せないのと同じように、ロス夫人を許すのは難しい
雹の嵐になり、近くに落雷する
命の危険を感じて、この世で信頼できるのは父だけだと分かる
その父がインゲルを心配して森まで探しに来てくれる
父:いつかおまえが話していたのを覚えていたんだよ
インゲル:父さんにすまないことをした
父:わしを許せると思うかい?
インゲル:私こそ許してくれる?
雷雨は止み、インゲルはロス夫人の話を父母にする
母:こんなうまい話をお前が真に受けると知っていたら話さなかったのに
ロス夫人が心配して家に来て、父母は事情を話す
ロス夫人:
私を許してくれるかしら?
あの時、深く考えずにいたが、忘れていたわけではなかった
リーブは父親が大好きだったが、戦時中、娘に会おうと捕虜収容所を脱走して射殺された
リーブは自分のせいで父が死んだと思った
その後、母が働いて倒れて亡くなった
リーブは母も自分のために犠牲になったと思い込んだ
インゲルは事情を知らず、僻んでいたことを認める
冷静に考えると夢のような話を信じて子どもっぽかったと振り返る
■あとがき
ハルディス・モーレン・ヴェーソース
1907年生まれ 現代ノルウェーのもっとも優れた詩人の1人タリエイ・ヴェーソースと結婚
本書は当時のノルウェーの平均的な農村を舞台にして
他者に対する「許容」の問題を底辺に置き
スヴェーレとの恋愛感情や、少女の心理のうつり変わりを微細に描いている
1940年にナチが全土を占領し、5年間、ノルウェーは自由を奪われ
文芸作品の出版も禁止された