穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

三つ数えろ

2012-12-15 10:53:09 | 書評
映画(DVD)の話なのだが、前回のチャンドラー、大いなる眠り、のモノクロ時代の映画化なので触れておく。

結論から言うと『大いなる眠り」の映画化である「三つ数えろ」は駄作である。大分前にも書いたがよくチャンドラーが我慢したと思うくらいだ。

「三つ数えろ」というのは、小説中の挿話で、たしかカニーノとかいった殺し屋が言った台詞だと思った。映画のタイトルにはいいと思ったのだろうが。このDVDは現在でも入手可能かもしれないが、見る価値はない。



村上春樹訳「大いなる眠り」

2012-12-15 10:43:48 | 書評
昨日大規模書店に行ったらチャンドラーの「大いなる眠り」の村上春樹訳が山積みであった。

チャンドラーの翻訳は四冊目になるらしい。買ってきてまず読むのは村上のあとがきというか解説である。本文はまだ読んでいない。英文、翻訳で何回も読んでいるし、ゆっくり後で読んでみたい。

これまでの翻訳でもまず後書きを読む。読む価値がある。これまでの訳でもいずれも読んでいるが、八割は「そうだなあ」と思う。一割は新しいポイントに出くわす。一割は「へえ、そうかなー」という訳だが、それがいいのだ。

前回までの後書きと比べて一段と冴えているように感じた。前の後書きを、これを書く前に読み返した訳ではなく、記憶でものを言っているのだが、勿論そういう点で印象が強いのかもしれないが、今回の後書きは力が入っている。特に前半(311ページから322ページ)は必読だ。323ページ以降は(初めて読む人には参考になるが)すこし力が抜けている。

ノーベル賞受賞が噂されて身辺が慌ただしかっただろうが、孜々として(楽しみながら)チャンドラーを訳していた訳だ。