穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

パラレル・ワールド2

2014-01-21 09:57:10 | 書評

「風と共に去りぬ」は1926年から書かれ出版されたのは1936年。執筆開始時から見ると南北戦争が始まったのは65年前になる。太平洋戦争が始まってから今年で74年になる。ほぼ同じ年月が経過している。いまから太平洋戦争下の社会をあれだけのと迫力で書ける作家がいるだろうか。まずいないと断定してよい。

さて、前回の続きだが、アトランタが北軍によって陥落し全市が焼け野原となる。スカーレットたちは故郷のタラに命からがら逃げるが、ここも戦場となり、ほとんどの農場は屋敷は焼かれ、食糧家畜などは奪われ、畑は荒らされたあと。スカーレットの家は北軍の司令部に使われたために火をつけられることだけは免れた。

ここからは物資の欠乏の描写は食料ばかりが描写される。衣料もさらに欠乏したのであろうが、命に係わる食料の欠乏がより深刻になるわけだ。これも当時の日本の状況のコピーのようだ。

敵に占領されるまでは日本でも食料はなんとかやりくりしていたが、戦後は食料不足で生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれた。順序としても小説のとおりだろうな、と思い出す。

作者は母方の親類から聞かされていたことが取材の中心だったらしい。

さて、家に帰ってみると父親はショックで廃人となり、スカーレットが女家長になる。そして家に入ってきた北軍兵士を警告なしにいきなり射殺して、平然と義理の妹と二人で庭に埋めて隠してしまうような女になる。

あとさきになったが、次回はアトランタ陥落までの世相を見てみよう。これも当時の日本と驚くほど酷似している。