始めは、ホテルのようにきれいな個室と、5階からの眺めが良いので、快適な入院生活ができる。本を山ほど読める。好きなだけ眠れる。会社へ行かなくていい。と、良いことを数えていたが、うかつだった。
もう、条件はばんばんなのに、日々病人にされていく感がして、行動範囲の狭さにも、辟易して、三日もすると辛くなる。
2階の売店まで行ったり、3階のパーラーで、野菜ジュースを飲んだり、ぶらぶらするが、やはり働かないというのは、体に悪いのかもしれない。せめて食事の支度くらいはしたい。病院食は、メニューが選べるが、やはり病院食だ。社員食堂のように、食堂で自分の分をもらうが、やはり会社ではない。
先日、メニューの中に「たらばがに」と、書いてあるので、仲間の人たち(入院仲間)と、「足が1本ついてるのかねぇ」とか、言いながら頼んだら、出てきたのは、キュウリの酢の物に、たらばがにらしき白い糸くずのようなものが、ほんの少し散らばっていただけだった。騙された。期待した自分がばかだった。ああっ!高級寿司が食べたい。いや、柿の葉寿司でもいいわ。