2009年、実家の父が屋根から落ちたことは大事件だった。連絡を聞いた時は、これで寝たきり老人になるのだと、ぼんやりと思った。
救急車で運ばれた時のことを、最近母が語った。いわゆるむし返したのである。
近くで草むしりをしていた母は、鈍い音がしたので慌てて駆け寄ると、頭からコールタールで真っ黒になった父を見て、目が見えなくなるといけないと、とっさに目の周りだけタオルで拭いて、救急車を呼んだそうだ。正しい処置であった。
病院へ運ばれた父は、目だけがぎょろぎょろして、顔は真っ黒だった。父の姪が看護士をしているのだが、後日「真っ黒な顔の人が、救急車で運ばれて来たらしい」と、院内で評判だったと語っている。
担当の医師が、父の顔を見ては、吹き出しそうになり「どうやって取るかなぁ。」と、言いながら笑いをこらえて、後ろを向いていたらしい。同室の人は後に、見舞いに行った私に「おかしくて・・」と、語った。幸い背骨に3か所のひびで済んだが、もちろん本人は痛いし、動けないし辛かったに違いないが、無情にも周りのみんなは笑いに包まれていた。
辛い思いをしてもなお、他人を笑わせる父は偉大だ。しかし、その頃、病室をひとつはさんで、同居している姑に続いての父の入院で、看護士はわたしに「大変ですね。」と、笑った。
人を笑わせるのは良いが、身内を笑いものにしてはいけない。恥ずかしいのである。しかし、自分でもおかしく笑うしかしゃあないのである。
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