2022年発行の大沢在昌の最新刊である。
ガチガチのハードボイルド作品ではなく、
なんて言うのかな・・・・ちょっとノスタルジックで、
センチメンタルな感じになるのは、おそらく・・・
私が主人公たちと同じバブルを生きたからであろう。
主人公は居酒屋の主人である円藤(62歳)。
30年前は地上げ屋だった男である。
バブル景気で日本中が踊っていた頃だ。
ある日、円藤の元に地上げ屋だった頃の同僚で
作家になった中村から電話が入る。
「フェラーリの250カリフォルニア・スパイダーを見た人がいる。」
この車は1953~64年にかけてフェラーリが生産した車で、
V12気筒の2953cc。そもそも100台くらいしか
造られておらず、現在でも20億円もの値が付くらしい。
スティーブ・マックイーンも乗っていた名車。
円藤が地上げをやっていた時に総帥と呼ばれた二見は、
バブルが崩壊し逃げるように(逃げたのだが)姿を消した。
このフェラーリに乗って・・・。
フェラーリが目撃されたと言う事は二見は生きているのか?
円藤は当時の恋人のホステスが二見と一緒に逃げた事で、
二人を恨んでいた。自分は二股かけられていたと思っていた。
円藤は中村と一緒にフェラーリを追うが、
中村は事故なのか事件なのかに巻き込まれて焼死してしまう。
フェラーリは全てを失った二見が巻き返しを図るために、
手元に残したわけだが、希少なため目立ってしまう。
地上げはヤクザも絡んでいたわけで、
車で損失を取り戻そう考える者もいた。
円藤は二見や車に大きな興味はなく、
昔の恋人の消息を知るためにフェラーリを追う事になる。
30年前に消えたフェラーリから
円藤の30年間の想いが蘇ってくる。
円藤と同じ時代を生きていた人なら、
境遇は違えど円藤の気持ちはよく解る。
誰もが熱に浮かされ自分を見失っていた時代。
私もそこまではいかないけど・・・・
車乗ってたしなぁ(笑)。
ブランド物のスーツとか来てたしなぁ(笑)。
行きつけのバーのカウンターでバーボン飲んでたしなぁ(爆)。
若かったから怖い物なかったなぁ。
バブルを知る人は読まれたし。