安倍政権の教育再生実行会議の提言案の柱は、
小学校英語の拡充だそうです。
新しさはありませんが、その弊害は予想できます。
いまは小学校の5,6年生で「外国語活動」として、
非正規の教科として英語学習が行われていますが、
それを正式の教科にした上で、専任教員を確保して、
実施学年の引き下げも考えているそうです。
将来的には小学校3,4年頃から英語教育を始めて、
それによりグローバル化への対応を図るというのが、
安倍政権の教育政策の柱になるようです。
私は以前から小学校の英語教育の効果には懐疑的です。
以前にもブログで問題意識をご紹介させて頂きました。
*ご参考:2012年3月14日付ブログ「英語教育をどこまで?」>http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-37e7.html
小学校レベルでの英語教育の問題点は以下の通りです。
1)他の教科の授業時間数を減らすことのマイナス面。
2)限られた資源(人材、時間、予算等)の配分の悪化。
3)そもそもの教育効果(英語嫌いの低年齢化)の問題。
政策立案で大事なのは、次の大原則だと思います。
「資源(予算、時間、人員)には限りがあり、
何かを強化(増加)するためには、
何かを削らなくてはいけない。」
1)他教科へのマイナス面
英語の授業数を増やすなら、他教科を削ることになり、
国語なのか、算数なのか、社会科なのか、いずれかの
教科で教える内容を減らさなくてはいけません。
大人になっても英語を必要としない人はかなり多く、
私の感覚では人口の8割くらいは英語ができなくても、
たいして支障は感じていないと思います。
国会議員でも英語ができなくて困ることはありません。
しかし、国語や算数ができなくて困らない人は皆無です。
生活していく上で必須のスキル(リテラシー)であり、
小学校では、全国民に必須の教科こそ強化すべきです。
2)限られた資源(人材、予算等)の配分の悪化。
小学校で求められるのは、クラスサイズの縮小です。
30人学級とか、35人学級にすることができれば、
教師の目が行きとどきやすくなります。
限られた教員の人件費を英語教員に充当することで、
30人学級等の他の目的が犠牲になるとするならば、
英語教育をあきらめた方がよいと私は思います。
英語教育のための再研修や教材開発にも資源は必要で、
限られた人手や予算を割くことになってしまいます。
安倍政権は道徳教育より英語教育に人手や予算を取り、
英語教育を強化する覚悟があるのでしょうか。
3)そもそもの教育効果の問題。
一部には「早い時期から英語に親しませる」ことが、
英語教育では大事だという声もあります。
しかし、私は逆に「英語嫌いの低年齢化」が進んで、
結果的に逆効果になりかねないと思います。
外国語学習では集中して勉強することが大事です。
次の二つのパターンではどちらが効果的でしょう?
(A)年間100時間×10年=1000時間
(B)年間1000時間×1年=1000時間
私の実感と経験で言うと(B)が断然効果的です。
ハンガリーの言語学者の書いた本を読んでいたら、
ハンガリーでは冷戦中に外国語の必修科目として、
小学校5年生から高校生までロシア語を学ぶが、
そのほとんどがモノにならなかったそうです。
日本の英語教育と概ね似たような状況のようです。
日本の方が、中学校から始める分、まだマシです。
ハンガリーでロシア語を効果的にマスターしたのは、
外国語専門学校のように週の学習時間が6~8時間、
一定の時間を集中的に学んだ人たちだったそうです。
その学者によれば「外国語学習に費やされた時間と
いうものは、それが週単位の、またもっと良いのは
一日単位の一定の密度に達しない限り無駄であった」
ということだそうです。
インドネシア滞在中に知り合いの日本人の何人かが、
インドネシア語の語学学校で3か月コースに通って、
あっと言う間に日常会話に不自由しなくなるのを見て、
非常に驚いた覚えがあります。
学校教育で学んだ英語が得意でない人たちでも、
集中的にインドネシア語を学ぶことですぐ上達し、
その効果のほどは驚異的でした。
ポイントは「集中」と「動機付け」だと思います。
インドネシアに赴任し、英語の通じない現地社会で、
なんとか生き残るためには、語学習得は必須です。
切実な動機を持ち、集中的に学べば、上達します。
おそらく世論に全く受けない極論を言うならば、
小中学校(義務教育)の英語教育は一切やめた上で、
高校時代の3年間に英語を集中させるのも手です。
おそらく小学校(5,6年)で100時間未満、
中学校で400時間程、高校で600時間程が、
いまの平均的な英語授業時間数だと思います。
それを高校3年間に集中することができれば、
年間350時間ほど英語を勉強することになり、
知識の定着は格段に良くなると思います。
私の極論的改革案「小中学校で英語教育をやめ、
高校3年間で英語を集中的に学ぶ」というのは、
少数意見ですが、実は効果的だと思います。
ハンガリーの言語学者は支持すると思います。
引用元http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-37e7.html
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