2019/12/04
日本政治を刷新するための政策連合
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安倍自公の与党が議会多数を握っており、もとより野党が批准案成立を阻止す ることは容易でない。
しかし、日本の主権者の命と健康。そして暮らしに重大な影響を与える協定で ある。
十分な審議を行うことが必要であった。
野党はこの臨時国会での協定批准を阻止することが不可能ではなかったと思わ れる。
「桜を見る会」に関する安倍首相の疑惑が浮上し、安倍首相に対して国会での 説明責任を果たすことを求めることができたはずだからだ。
安倍首相は疑惑を持たれた議員は、内閣の一員であってもなくても、与党と野 党の区別なく、しっかりと説明責任を果たすことが求められると繰り返してき た。
その安倍首相が自分自身に重大な疑惑をかけられたのである。
選挙区の有権者に対する利益供与、飲食の饗応は公職選挙法に抵触する違法行 為である。
政治団体が収支報告を怠れば虚偽記載や不記載となり、政治資金規正法違反と なる。
首相辞任は無論のこと、議員辞職や場合によっては逮捕、起訴に至る可能性の ある重大事案である。
当然のことながら、野党は安倍首相が出席する予算委員会での集中審議を求め るべきだった。
与党がこれに応じなければ、すべての審議に応じないとの強い姿勢で対応する べきだった。
与党は野党要求を無視して与党単独で審議を進めるかも知れない。
しかし、そのとき、主権者の批判が向かうのは野党陣営ではなく与党陣営とい うことになる。
とりわけ、自民党のトップとして国会での審議の場設定を阻止する安倍首相に 批判が向かうことは当然のことだ。
野党が審議を拒否するなかで日米FTA批准案を与党単独で議決し、承認した 場合、主権者全体に重大な影響を与える協定を、野党の審議拒否のなかで採決 強行した与党に対して極めて強い批判が生じることは間違いない。
議会の少数勢力が議会審議において影響力を発揮するための手法はさまざまに ある。
審議拒否はその手法のひとつであって、一概に否定されるべきものでない。
野党がこのような手法を駆使しない限り、与党の横暴を抑制できない場合に は、野党は効果的に抵抗の手法を活用するべきだろう。
ところが、議会野党勢力の中核を占める立憲民主党と国民民主党は十分な抵抗 を示さなかった。
今国会での最重要議題である日米FTAが会期内に承認されるよう、最大の協 力をしたと言っても過言ではない。
この日米FTAに重大な問題がある。
そもそも、日米FTAは安倍首相の国会答弁と完全に矛盾する存在である。
安倍首相は国会で「日米FTA交渉には応じない」ことを繰り返し表明してき た。
ところが、米国のトランプ大統領から指令を受けると、一切の抵抗を示さずに 日米FTA交渉に応じた。
野党勢力は、まず、過去の安倍首相の国会答弁との整合性を追及するべきだっ た。
この問題は、2016年末に国会で大論議のあったTPP12承認案審議の延 長線上にある。
安倍首相はTPP12を確定するために批准を急ぐのだとした。
TPP12が確定されれば、米国がTPP12から離脱する場合には、TPP 12の発効はなくなる。
そして、米国はTPP12から離脱した。
ところが、安倍内閣は確定したはずのTPP12改変の先頭に立った。
米国がTPP12から離脱してもTPPを発効できるようにした。
そして、日本の国益を失うかたちで米国抜きのTPP11合意を制定し、その 発効に突き進んだ。
挙句の果てに、米国の要求に抗うことなく日米FTA交渉に突き進んだ。
その日米FTAでは日本から米国への自動車および自動車部品の関税撤廃も消 滅した。
このような言語道断の対応を示してきた安倍内閣の行動を野党は厳しく追及す るべきだ。
ところが、現実には、立憲民主党と国民民主党が日米FTA批准に協力したと 言える。
安倍政治に抗する主権者は、この現実を踏まえて、今後の対応を全面的に見直 す必要があるだろう。
野党のなかに「隠れ与党勢力」と「たしかな野党勢力」が同居している。
主権者が選択するべきは、「たしかな野党勢力」との連帯であり、「隠れ与党 勢力」との訣別ではないだろうか。
年末に向けて恒例の新党創設の話題が浮上している。
政党交付金は年末時点の議員数を基準に支払われるから、新党の体制を整える 重要な期限が年末ということになるからだ。
立憲民主党と国民民主党の合流案が浮上しているが、現在のまま二つの勢力が 合流しても、主権者の強い支持は得られないだろう。
なぜなら、それは、元の民主党・民進党への回帰を意味すると主権者が受け止 めるからだ。
2009年に鳩山内閣が誕生した。
主権者が主権者の判断で新しい政権を樹立させた。
日本政治史上に燦然と輝く金字塔であった。
しかし、この鳩山内閣はわずか8ヵ月余りで崩壊してしまった。
鳩山内閣崩壊の最大の原因は、旧民主党内部に「革新勢力」と「守旧勢力」が 同居していたことにある。
鳩山内閣は、1.米国による支配、2.官僚による支配、3.大資本による支 配、を打破しようとした。
1.普天間の県外・国外への移設、2.官僚天下りの根絶、3.企業団体献金 の全面禁止、を公約に掲げた。
日本政治の基本構造を根底から刷新しようとしたのである。
しかし、このことが守旧勢力の激しい抵抗を生み出す原因になった。
そして、鳩山内閣の崩壊は、民主党内部の「造反」によって引き起こされた。
鳩山首相による普天間の県外・国外移設方針に対して、岡田克也外相、前原誠 司沖縄担当相、北澤俊美防衛相、平野博文官房長官は実質上の面従腹背だっ た。
そのために、普天間の県外・国外移設方針は破壊された。
「天下りを根絶しない限り消費税増税を認めない」の方針は財務省の全面的な 抵抗に直面した。
財務省は菅直人氏、野田佳彦氏などを増税推進派に転向させる工作活動を展開 したと見られる。
企業団体献金全面禁止方針に徹底的に抵抗したのが岡田克也氏である。
鳩山内閣が破壊され、転向した菅直人氏が権力を強奪した。
菅直人氏は、権力を強奪した直後の2010年6月17日の参院選公約発表の 場において、唐突に消費税率の10%への引き上げを提示した。
本年10月の消費税率10%を初めて公約として提示したのが菅直人氏であっ たことを、私たちは見落としてならない。
菅直人氏と野田佳彦氏は、鳩山内閣が提示した日本政治抜本改革の基本路線を 全面的に破壊した。
日本政治は、元の、1.対米隷属、2.官僚による支配、3.大資本による支 配、の構造に逆戻りした。
この「逆戻り」を実現したのは安倍晋三内閣ではない。
菅直人内閣と野田佳彦内閣が、すべてを元の米国支配、官僚支配、大資本支配 の構造に戻したのである。
このために、民主党は主権者の支持を全面的に喪失した。
民主党はこのために凋落の一途を辿って現在に至っている。
その主因は、旧民主党内部に「革新勢力」と「守旧勢力」が同居していたこと にある。
この「水と油の混合状態」が解消されない限り、主権者の支持は回復しない。
2017年10月総選挙に際して、旧民進党が分裂した。
創設された「立憲民主党」が主権者の支持を集めたのは、この「立憲民主党」 が旧民主党のなかの「革新勢力」の純化であると受け止められたからだ。
しかし、その立憲民主党が再び「守旧勢力」の色合いを強めている。
この状況を踏まえると、いま立憲民主党と国民民主党が再合流しても、主権者 の支持を得るとは考えにくい。
両党が合流して主権者の支持を得るには、明確な政策路線の明示が必要不可欠 だ。
重要なことは、「革新勢力」の総結集を図ることだ。
共産党、れいわ新選組と旧民主党勢力の「革新勢力」が結集するなら、主権者 国民の強い支持を得られるだろう。
単なる数合わせではなく、政策路線を基軸にした大結集が求められている。
オールジャパン平和と共生が掲げている「政策連合」は、1.政策を基軸に、 2.党派の壁を越えて、3.主権者が主導して、大きな連帯、大同団結を実現 することである。
政策連合の構築が最重要の課題である。