麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

母は枯葉剤を浴びた

2007年08月24日 | 鑑賞
 東京芸術座第29回アトリエ公演『母は枯葉剤を浴びた』(原作/中村梧郎 構成/井上鉄夫 演出/稲垣純)は村山知義没後30年メモリアル公演として8月18日(土)から本日まで、同劇団アトリエにて。

 21日観劇の“ヒロシマの原爆”にかかわる芝居に続き、今回はベトナムの枯葉剤。平和について考える敏腕Pである。

 ベトナム戦争の終結は1975年。僕は9才で、遠い国のことなど知らずにただただ遊び呆けていた。
 その6年後、ベトちゃんドクちゃんが産まれ、それと前後して、彼らのような先天障害を持った子供が沢山さくさん誕生する。僕は中学3年。その存在をニュースで目にはしたが、受験勉強もせず白球を追い、あるいは交換日記をバレずに渡すことに気を配っていた・・・。

 そして2007年。原爆症と同様に、枯葉剤の被害に苦しむ人は本当に多くいて、またその連鎖が断ち切られる保障はまったくない。

 さて。『母は~』は、獲った魚をそのまんま食す猟師の料理とでもいうような芝居でした。『ゲン』が素材を生かしつつも趣向を凝らしたアレンジで盛りつけたところに、意外な食材をベースにしたソースで味付けしたフランス料理だとしたら、海の水でちょちょっと洗ってぶ厚く切って口に放り込む風情!
 フォトジャーナリスト中村梧郎さんの原作を構成した、ベテラン俳優井上鉄夫さんの人柄そのもののようだった。

 ただ、おそらく章立てで書かれた書物は、その章を終えてページを繰る時に次章のタイトルなどあって、こちらにも心の準備が出来るわけだが、その処理が甘く・・・まぁ、だから猟師に例えたのだが・・・例えば、白身の軽い魚から徐々に脂の乗った魚へ、ちょいと飽きたとこで貝類または頭足類を配して、いよいよ大トロの登場!みたいな組み立てはあっても良かった気がしました。

 勿論、ベトナムの被爆者だけでなく、空爆した米軍パイロットらにも被害は出ている点も描き、最後にドク氏の結婚で、人の命の強さや未来への希望も添えて幕を降ろす構成は良かったのだが、やや散漫な印象はありました。

 リーフレットに寄せて、原作者の中村氏は、写真と演劇の「前代未聞のユニークな取り組み」と書いているが、アトリエ公演ならではの、画期的でかつ有意義な舞台であったことは言うまでもないのだけれど!
コメント
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