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藤沢周平著 獄医立花登手控え(四) 「人間の檻」

2020年07月26日 12時44分30秒 | 読書記

雲の流れが早く、時折 遠くから雷鳴が聞こえ、雨が激しく降り出したり、チラッと青空がのぞいたり、なんとも不安定な天気。今日も 雨模様の1日になっている。
「雨読」と決め込んで 図書館から借りて読み掛けになっていた 藤沢周平著 「獄医立花登手控えシリーズ」第4弾目の作品(全4巻の完結編)「人間の檻」(文春文庫)に手を伸ばし、読み終えた。
主人公は 若き小伝馬町の牢獄の獄医立花登、福井町の町医者、叔父小牧玄庵、叔母松江に厄介になっているが 一方で 柔術の道場に通っていて、訳ありの因人達に纏わる様々な事件を 身につけた起倒流柔術の妙技と鮮やかな推理力で 次々と解決していく捕物物語である。一方で 玄庵の娘(登の従妹)おちえとのほのかな恋模様等も織り込また青春ドラマ仕立てにもなっている。

藤沢周平著 獄医立花登手控え(四) 「人間の檻」

(目次)
「戻って来た罪」
「見張り」
「待ち伏せ」
「影の男」
「女の部屋」
「別れゆく季節」
(解説)


「戻って来た罪」
叔父小牧玄庵の代診で 死病に取り憑かれている下駄職人彦蔵を訪ねた立花は、彦蔵から、かって人殺しをしたことが有ると告げられる。彦蔵は死んだが 登は 30年前の子供殺し事件を、八名川町の岡っ引き藤吉に調べてもらうことにした・・・、藤吉の下っ引き直蔵、千助が探索、相棒らしき男が浮上、磯六?、佐兵衛?、

「見張り」
登は 叔父玄庵が怪我の治療をしたことがある傘張り職人酉蔵の女房おとしに出会うが顔色が悪い。治療代未払いを気にしているようだ。一方で 入牢中の作次から 赦免された男が真綿屋三好屋押し込みを相談しているのを聞いたと告げられる。もう一人相棒に誘うというが、狙いは 酉蔵?・・、蔵吉とは?、巳之吉とは?
「おとしさんが 薬代を持って来たってさ」と叔父は言った。「無理したお金じゃないだろうな」と登も言った。・・(中略)・・叔父は戸棚の上の焼酎の徳利にちらりと眼をやった。おとしのおのろけよりは そっちの方がに気が行っていることはあきらかだった。

「待ち伏せ」
は、世話役同心平塚から、近頃赦免された男 甚七六兵衛三吉、3人が相次いで襲われていると告げられる。半月後に赦免される因人馬六、その娘おかつ(多田屋徳兵衛の後妻)は、叔父玄庵が診ていて、登も顔見知りの人間。4人目になる可能性も有る?。登は 同心平塚からも探索を頼み込まれ、岡っ引きの藤吉に探索を依頼する。犯人の狙いはいったい何?、300両?、多田屋徳兵衛?、多田屋手代伊八
登、「で 馬六はその後どうしてます?、引き取られて元気ですかな」、藤吉、「小遣いももらい、酒も飲めるというのに 大きな家は肌に合わねいとか・・(中略)・まったくしょうがねえおやじですよ」

「影の男」
登は、入牢中の若い因人喜八から すでに島送りに決まっている甚助は無実だと告げられる。それは自分に疑いが掛からないための工作だったが・・、松葉屋の100両紛失騒動?、番頭善右衛門?、手代房吉?、房吉の女房おつな?、六蔵?、
藤吉の見込みはあたった。・・(中略)・・「出てきましたぜ」、
知能犯の足がついたのは女だった。
「甚助の迎えの船は来たのかね?」・・(中略)・・「あと10日ほどで来るそうだ」「そいつはよかったじゃねえか」

「女の部屋」
殺人の罪で入牢中の若い因人新助は 情状酌量で島送りと決まっている。「殺人者=下手人=死刑」。畳問屋大黒屋の手代だったが 女将おむらを守るため槌屋彦三郎を殺したものだが、実は・・・。20歳以上年上で寝たきりの主人吉兵衛が真相を見抜いていた。岡っ引きの藤吉に探索を頼み 謎を解いていく。
おむらと若い奉公人竹次郎が遠ざかるのが見えた。
登は 暗い空を見上げた。鳥も通わぬ八丈島か。暗い牢の中で愛を交わし合った女主人の夢を見ているかも知れない男のことを考えながら・・・」
一方で 登に蘭方修行で2年間、大阪へ行く話が決まる。その代わり 従妹おちえと世帯を持ち 叔父叔母の小牧家を継ぐことが確定的になる。

「別れゆく季節」
登は、若い因人兼吉から 明日牢を出たら先生を狙うぜと警告される。おまけにおちえの友人おあきも生かしちゃおけないと凄まれる。以前、おあきの情夫だった伊勢蔵や 弥之助黒雲の銀次等盗賊一味を 登は 柔術をもって、岡っ引き藤吉等と共に捕らえた側にまわったことが有ったが その盗賊一味の親分筋からの恨みのようだ。札付きの不良娘だったおあきは 今は、豆腐屋豊太の女房になって幸せに暮らしている。守ってやらなくては・・・。しかし、おあきが兼吉一味に誘拐され、登に呼出状が届く。北本所、常楽院・・・、柔術道場の新谷弥助に加勢を求め、藤吉に急報し、乗りこむ。手強い兼吉一味の匕首と闘う登の柔術、本物語のクライマックス的場面である。兼吉?・・実は・・、
「ほら ご亭主が迎えに来たぞ」、おあき「若先生、これでお別れね」・・・
複雑な意味が含まれた言葉なのだ。
正式に小伝馬町の牢獄の獄医を辞めた登、
いよいよ明後日か・・おちえとも当分お別れだな・・、「登さん、あたしたち何か約束をしておかなくてもいいの?」・・・おちえが顔を上げた。その眼から突然涙がしたたり落ちるのを見て 登は顔色をひきしめた。ゆるやかな感動が胸をしめつけて来た。
おちえと契りを結び 大阪へ2年間の蘭方の修行に旅立っていく登である。
「獄医立花登手控えシリーズ」は ここで完結している。


今年になってから読み始めた 藤沢周平著 「獄医立花登手控えシリーズ」(全4巻)を ここでようやく読み終えたことになる。
(1)「春秋の檻」(講談社)
(2)「風雪の檻」(文春文庫)
(3)「愛憎の檻」(文春文庫)
(4)「人間の檻」(文春文庫)