新型コロナウイルス感染拡大防止対策で 4月25日から5月11日まで、3回目の「緊急事態宣言」が出された当地、その後5月31日まで延長となり、さらに6月20日まで延長されている。それに伴って利用している市立図書館もずっと休館中だったり、一部サービス停止だったりが続いており、通常の貸し出し期間は借りた日から2週間と定められているところ、最初に指定された返却期限に拘らず全て、「返却期限=6月15日」に延長する処置がされている。「緊急事態宣言」発出前に借りていた本が まだ1冊残っていたが、何事にも、期限、締切が迫らないと重い腰を上げない爺さん、「読書も 一時休業?」、「ゆっくり、読みゃ ええわい」と決め込んできた。気がつくと、残り5日間となってしまい、あわてて読み終えたところだ。
読み終わったのは、平岩弓枝著 「新・御宿かわせみシリーズ」第5弾目の作品、「千春の結婚」(文春文庫)。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも その都度、備忘録としてブログに書き留め置くことにしている。
新・御宿かわせみ(5)
「千春の結婚」
本書には 表題の「千春の結婚」の他、「宇治川屋の姉妹」「とりかえばや診療所」「殿様は色好み」「新しい旅立ち」の連作短編5篇が収録されている。
どうしても 痛快で、盛り上がりの有った、前作「御宿かわせみシリーズ」の各篇と比較してしまって、筋立てにもやや曖昧な部分が有ったりして、なんだかなあーの感が残ってしまったように思う。でも、「新・御宿かわせみシリーズ」は 残り2作、乗り掛かった船、最後まで読んで見ようと思っている。
「宇治川屋の姉妹」
バーンズ診療所に宇治川屋孝兵衛の娘、おなつ、おふゆが父親の薬を取りにきた。「私、殺されるかもしれません」とおなつから相談を持ちかけられ、言い寄られる麻太郎。その後 孝兵衛が撲殺され、源太郎と共に死因について議論。風鈴火箸・・・。今回の功労者は 「おるいさんということになるかな」・・・孝兵衛の傷痕から凶器をあれこれ考えていた宗太郎が満足そうに言う。伊勢屋孝太郎、おたま、金之助、清二郎、お志津、おなつ、おふゆ・・・、下手人は・・。
「千春の婚礼」(表題作)
清野凛太郎と神林千春の婚礼は、麹町の清野家で行われた。翌日、二人は 新婚旅行で新橋駅から横浜に出発したが、蒸気機関車がプラットホームから遠ざかるのを見送ったのは麻太郎とたまき夫人、二人だけだった。その時、たまき夫人が、凛太郎の兄嫁だった須美子を見掛けたことから、なにか事件発生が有るのかと思わされたが、須美子は以後一切出てこないで、それでおしまい。???だ。源太郎に付き合って狸穴に出掛けた麻太郎、花世が懐妊したことを知った後、仙五郎から不審死事件の相談を受ける。林田理兵衛、捨松、政吉、お由紀、・・・双子問題。不審死の始末は?、曖昧。
明治時代初期、旧藩士から3000人を邏卒として採用、その後 警保寮で司法警察、行政警察、さらに 警視庁が出来、邏卒から巡査に変わったが 人材不足、事件事故に十分な対応が出来ず、かっての江戸時代の岡っ引きを頼りにするのが当たり前の時代だった。
「とりかえばや診療所」
麻太郎のイギリス留学時代の友人の姉弟南条孝子、忠信が、「かわせみ」の宿泊客となった。旧加賀藩前田家の御典医だった伯安の子供で、姉孝子はしっかり者、弟忠信は軟弱。忠信は、居留地のカジノのディーラー、若くて愛嬌の有る清国人の娘キムにぞっこん惚れ込み、故郷に帰らず、ならず者に殺されてしまう。孝子は、キムを敵と決め込んで、抜き身の脇差で襲いかかるが 源太郎が・・。結局、忠信の水死の下手人は不明まま・・、消化不良???。
るいも、嘉助も、お吉も 歳をとり、ますます神林東吾そっくりになった麻太郎の言動にふれる度に、しみじみ感慨にふける場面が多くなっている。
かって幼い麻太郎に七つ星の由来を教えた人が誰であったかをるいはしっていた。
「殿様は色好み」
かわせみの宿泊客高市新之助は、上品、優雅、行儀が良いが女たらし、正体不明の人物。お吉に言わせると「芝居に出て来るお殿様みたいですね」。源太郎と花世に子供が生まれる。花世が産気づいて出産する場では、源太郎、麻太郎、長助が右往左往、冷静沈着な麻太郎も動転。「男の子だったような気がする・・・」。バーンズ診療所に黒貂が迷い込んだが飼い主は 高市新之助の妹結子だった。
「新しい旅立ち」
神林通之進、早苗、麻生宗太郎、るい等、周りの人達により、あたかも麻太郎の縁談が進んでいるかのような展開で、いよいよ、麻太郎も結婚か?、そして「新しい旅立ち」か・・・と思わせられたのだが、実は、そうではなく、急に、イギリスに2年、アメリカに3年の予定の再留学が本決まりになって、あわただしくその準備やら、「かわせみ」での壮行会となる。何度読み返してみても話が繋がらず、モヤモヤ。話の展開、筋道がやや不明瞭な部分、強引な部分が有るような篇になっている。しかも、偶然に、麻太郎が乗船する同じ船に 高市新之助(実は華族の一条道明)の妹結子も医学留学で、乗船するという、不自然な展開も有り、もしかしたら 麻太郎と結子の関係を暗示させているのだろうか等とも勘ぐってしまう。いずれにしても 麻太郎は るい、神林通之進、麻生宗太郎、嘉助、お吉、長助、仙五郎に見送られ、横浜港から出発する場面で、終わっている。
出航の合図の銅鑼の音が響き渡った。白い煙を吐いて、船はゆっくりと岸壁を離れて行く。
主人公とも言える麻太郎が、表舞台から去ってしまい、次回作からはどんなストーリーになっていくのだろうか。
(つづく)
コメントいただき有難うございます。
真野響子さんと小野寺昭さん、脇を占める結城美枝子さんや花沢徳衛さん。
新刊で、嘘かまことか が出ています。
随筆かな?