鴻巣友季子・訳 早川書房 2000年
踏んだり蹴ったりな話だな、と思った。ひどい話だ。大学
教授、52歳が生徒を半ばレイプする、ってのも妙な話だ。
そんなインテリゲンチャが、イロキチみたいに描いている
こと自体がなにかを示唆しているとは思う。そして、話は
すすみ、娘の農園にお世話になると、そこで、隣りのペト
ラスに関わる男らに、強盗に入られる。これは、娘のルー
シーの土地を狙ったものらしいのだが、ここで、大学で
行った自分のしたレイプとダブってくる。因果応報という
やつか。ルーシーは男らにレイプされ身ごもってしまうん
だぜ、やれやれ。なぜ、そこまで、その土地にルーシーが
入れ込んでいるのかは説明がない。ヘンな話だ。そこまで、
土地にしがみつかなくてもいいのに。そして、元教授はどん
どん堕ちていく。ノーベル賞作家だというし、ブッカー賞を
獲っているというが、いやはや、南アが舞台の恥辱に満ちた
話だった。
(鶴岡 卓哉)