集英社文庫 2002年
処女作「走るジイサン」がよかったので、古本屋に
並んでいたので、速攻買ってみた。
ヤクザに惚れられた治子も、シナリオライター志望
の青年と離婚したばかりの照代も、万引きするエン
コ―する女子高生の加菜子もなにを求めるかというと
この世で救済されたい、と願っている。「救済」とい
うと宗教めいてくるが、ぼくの言っているのはキリスト
的なことではない。なんでもいいのだ、散歩でもいいし、
趣味でもいい、そんなことに救われたい、と思ってい
るのだろう。
ここで問題になってくるのは、執拗にでてくるセックス
だ。そんなにセックスは大事だろうか? 池永氏にとっ
ては何を置いてもセックスが大事らしいのだ。それが、
この小説を、なんていうか、下品というか、下世話な
ものにしてしまっているのではないだろうか。ま、ぼ
くがあまりセックスに興味がないからだろうが、あま
りにセックス、セックス言うのもどうかと思う。
最後の老人の恋のエピソードはけっこうコメディ
になっていて、思わず笑ってしまった。死んでも
いいからセックスしたいって、ふふっ、セックス
なんて大したことないでしょ。もっと大事なことは
いっぱいあるはず。そんなにしたいかね、セックス?