古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ゴールデン・マン   フィリップ・K・ディック

2021-01-21 10:35:43 | 本の紹介

ディック傑作集③ ゴールデン・マン所収 ハヤカワ文庫

 

カフェでのやり取りに始まるこの短編。そして、このゴー

 

ルデン・マンと呼ばれる金色のミュータントの捕りもの帖

 

に入っていく。ミュータントという存在をさりげなくカフ

 

ェの会話に挟んむという導入部分で、この世界に入ってい

 

ける。

 

これぞ、SFという感じの短編で、このころはP・K・ディック

 

はまったくといっていいほど売れていなかったらしい。

 

貧乏のどん底にいたらしく、はじめに、でそれもいつかは

 

終わる、とボクを慰めてくれているのか、と思わせる文章が

 

ある。そうなのだ、この貧乏状態もいつかは、終わって、

 

欲しいものだ、と思う。……合掌。

 

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にんげん住所録    高峰秀子

2021-01-20 03:12:29 | 本の紹介

文春文庫   平成14年

 

小津安二郎氏、黒澤明氏、伊藤栄作氏、木下恵介監督

 

などの著名人との思いで。やはり、高峰女史くらいに

 

なると、お付き合いされている方も違う。なんか自慢

 

合戦の気もないが。まあ、天上の人という感じがする。

 

文字通り、今や天上の人だが。

 

黒澤監督をクロさんと呼べるのは高峰女史くらいで、

 

三船敏郎氏、池部良氏らから先輩と呼ばれていたとい

 

う。

 

デコちゃんというあだ名はひでこのひ抜けかと思って

 

いたら、デク人形のデクなのだそうだ。デコちゃんって

 

すごくかわいいニックネーム、最近のコでこんなに気の

 

利いたニックネームをつける山本嘉次郎監督のような

 

人もいないし、つける人それ自体に個性が欠乏している

 

のかもしれない。けど、女優さんにも今でもかわいい人は

 

多いし、やはり、つける側の問題だろう。今は何かと問題

 

にしがちだから、デリケートになりすぎている。

 

デコちゃんの最終章、最後に私の死亡記事なるブラック・

 

ユーモアな文章が哀愁を誘う……合掌。

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おいしい人間     高峰秀子

2021-01-19 05:14:51 | 本の紹介

文春文庫     平成16年

 

天安門事件に遭遇したことが描かれているから、この

 

本が直截書かれたのは、1989年以降ということに

 

なろう。

 

安野光雅氏(昨日、亡くなられた)、藤田嗣治氏、梅原

 

龍三郎氏などの画伯との交流について書かれるが、その

 

どれもがおもしろい。

 

高峰女史はセレブ不良といった趣があり、そこらへんが

 

作品をおもしろくしている、マジメじゃなく、すれてい

 

るのだ、いい感じに。

 

カレーについても書かれていて、ボクもカレー作りが趣

 

味なので、なお一層熱が入りそうである。

 

善三氏は病気が趣味だったとかで、あらゆる病気をやった

 

とか。

 

高峰女史も死んでしまったが、この作品は四十代から

 

50で書かれたらしい。いい仕事を残されたと思う。

 

いや、映画にしても。この人にしか書けない世界って

 

もんがあるようだ……合掌。

 

                  (鶴岡 卓哉)

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コットンが好き   高峰秀子

2021-01-18 07:21:59 | 本の紹介

文春文庫    1983年

 

日本に降り立った外国人がにおうのはしょうゆ

 

のニオイだということらしい。そういわれてみ

 

れば、しょうゆクサイ、そんな気がしないわけ

 

でもない。けど、しょうゆ嫌いな日本人はいな

 

いわけで。

 

高峰女史は十代のころから骨董屋に出入りして

 

いたとかで、古物がお好きらしい。

 

高峰女史くらいになると、街にでてもうるさい

 

だろうし、丁度いい非難所になった、と語って

 

いる。

 

この本には一編ずつ、写真があって、イメージ

 

している通りであったりする。いいものに囲ま

 

れている人は、いい人間になれるのかもしれぬ。

 

高峰女史のみせるときたまみせるはすっぱな文

 

章がとても好もしい。上品ぶっているより数段

 

良い。人間自分に正直に生きるのが、一番良い

 

よ、と言われたような気がした……合掌。

           

               (鶴岡  卓哉)

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宇宙の果てのレストラン   ダグラス・アダムズ

2021-01-17 10:13:07 | 小説の紹介

安原和見・訳   河出文庫    1980年

 

ボクも細かいストーリー展開についてはよくわからんのだが、

 

大筋として、荒唐無稽なユーモアとか、ジョークのセンスを

 

感じた。アメリカ的と言えば、アメリカ的だが、ボクが読んだ

 

限り、それはこの小説の世界観として成立しているから、いろ

 

いろなことが受け入れることができるようだ。

 

ボクが一番、おもしろかったのは、太陽に宇宙船が突っ込んで

 

パ二くるところだが、その壮大さが、コメディとして描かれる

 

そのシュールさに打たれた。

 

アダムス氏は2001年に49歳で亡くなっている。二十代で

 

銀河ヒッチハイク・ガイドと続編のこれと二作品で世界的に

 

名を成したが、その後はあまりパッとしなかったという。

 

いやぁ、本を読むことに何を求めるかによって違うと思うが、

 

イメージの飛躍といい、脳細胞は活性化したと思う。

 

SFってすたれ気味だけど、すごくいいと思いますよ。……合掌。

                 

                    (鶴岡 卓哉)

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台所のオーケストラ    高峰秀子 

2021-01-16 10:10:08 | 本の紹介

文春文庫   2000年(文庫)

 

「手間ヒマかけてる時間はない。でもサ、ちょっと目先の

 

変わったものは食べたいわ。それも買いおきの材料を使って

 

チョコチョコっと作れるヤツを」をテーマに掲げ、食材のウン

 

チクを披露していく。玄人口調のちょっとカッコいい感じで。

 

多分、高峰氏のつくったものはボクの若いころの口に合うと思う。

 

バターとか香辛料たっぷりの料理、好きだったですねえ。

 

ウンチクのあとの、箴言がまたいい。特に女に関するものが秀逸だ。

 

ローソクが消えたときは、どんな女も美しいものだ。(ブルタル

 

コス) うーん、そうだろうか? 正直、よくわからない。じゃあ、

 

秀逸ではないじゃあないか! が、いいのだ、なんかいいから

 

いいのだ!

 

自己矛盾しつつ、シュクシュクと美食の海に漕ぎ出すのだ。

 

活字メシはただだから、思いっきり夢想するのだ。その味を

 

その匂いを、高峰氏は美食家じゃないと言うだろうが、たしかに

 

この人はうまいもの食いだ……合掌。

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河童   芥川龍之介

2021-01-15 13:39:09 | 小説の紹介

集英社文庫

 

芥川先生、そんなことをマジメな顔をしておっしゃられては

 

こまるではないですか! と言いたくなる、河童(KAPPA)の

 

国に行ったという男の河童の話し。

 

芥川自身が描いたという「河童図」というものがある。どうやら

 

細身で髪らしきものもあり、口は尖っている。全身裸であるが、

 

河童にしたら、服を着ている人間の方がおかしいらしい。

 

なにやら、笑っているよにも見え、気味が悪く、ずる賢そうで

 

ある。

 

その河童の国のことがリアルに語られていく。芥川氏の頭の中

 

にはしっかりとした河童の国があるみたいなのだ、恐れ入るよ、

 

芥川先生……合掌。

 

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蜃気楼    芥川龍之介

2021-01-15 10:13:49 | 小説の紹介

「河童」所収。

 

まるで雲をつかむ、蜃気楼そのもののようなはなしだ。

 

とりたてたストーリーもないし、蜃気楼を見に行って

 

墓標のようなもの、1906‐1926まで生きた20

 

才で死んだ人のを見つけるといったはなしだ。

 

しかし、こういう短編にこそ、芥川氏の人となりをみる

 

ことができるだろう。シャープな印象の強い芥川氏だが、

 

意外とのんびりとした、ほんわかしたところもあったので

 

はないか、と思わせる。

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点鬼簿       芥川龍之介

2021-01-14 11:31:18 | 小説の紹介

「河童」所収。

 

芥川自身の私小説とみられ、母上のことが描かれている。

 

母上は狂人だったらしく、その狂人振りゆえに、芥川氏

 

も発狂を恐れるあまり、自殺に至ったらしい。

 

「点鬼簿」というのは、もともと死んだ人の名前を書いた

 

帳面のことらしいのだが、芥川の「初ちゃん」という姉の

 

ことである。そして、父、母、「初ちゃん」の三人が鬼籍の

 

人となり、墓参りをするが、芥川は墓参りは好きではない、

 

といっている。暗く陰鬱な作品である。

                (鶴岡 卓哉)            

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雛     芥川龍之介

2021-01-13 03:55:20 | 小説の紹介

「河童」所収。

 

お雛様を売り飛ばす前に、もう一度だけ見てみたい、と

 

熱望するお鶴。

 

どうしても見たくて見たくて仕方がない。暴力があって、

 

苦痛に満ちている。ラストに、その願いは叶うのだが、

 

夢のようであった、と開放感に満ちている。

 

我々は希求するなにものかをもたなくてはならない。

 

求めざれば、なにもしえない。それは、突然、目の前に

 

現れ出でるだろう、という予感。

 

そこはかとない憂いと美しさを秘めた短編。

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