レキシントンの幽霊 (文春文庫)村上 春樹文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
さて、今、村上春樹は「1Q84」が大ベストセラーですね。
いまさらとても恥ずかしいのですが、私、村上春樹はあまりなじみがありません。
「ノルウェーの森」も読んでいないというのは、
本好きにはあるまじきことかも・・・。
ミステリ専門の時代が長かったもので・・・。
でも近頃は、むしろミステリでないほうが面白く感じています。
そこで、よし、ぜひ「1Q84」を読もうと思うのですが、
その前にまずエキササイズ。
まずは、小手調べで、この短篇集と行きましょう。
冒頭の「レキシントンの幽霊」。
ある古い屋敷で留守番をすることになった「僕」は、
夜中にふと目が覚めます。
どうも階下の居間から、ざわざわと大勢の人々の声が聞こえる。
何か、パーティーをしているようなのです。
上品でゆったりとしたパーティーの雰囲気。
しかし、そんな夜中にパーティーなどあるはずもない。
階下に行くと、
きちんと戸締りをし、開け放っておいたはずの居間のドアは硬く閉ざされ、
そのあちら側から確かに大勢の人のさざめきが聞こえる。
しかし、「僕」は居間のドアを開けて確かめてみることができないのです。
・・・まさにこれは怪談で、怖ろしくもあるのですが、
なにやら物悲しく懐かしい空気が漂う不思議な一篇です。
結局、その屋敷にまつわる怪しげな言い伝えも、
屋敷の持ち主の悲劇もありません。
"ひどく遠い過去に、ひどく遠い場所で起こった出来事のように感じられる"
と、この話は締めくくられています。
確かにそういった印象を残す作品で、この手触りは、なかなかいい。
それにしても、居間のドアを開けてみたら、どうなっていたんでしょうね・・・?
「七番目の男」
これも、ある意味怪談ではあるのですが、1人の男が昔語りをします。
少年の頃、大きな台風がきて、その台風の目に入った時に友人と海辺に出た。
信じられなく穏やかな海は、
しかしその直後、突如牙を向き、恐ろしい大波が押し寄せてくる。
友人はその波に飲まれ、自分はかろうじて助かった。
しかしそのとき少年は、波の中から口が裂けるほどに大きく口を開き、
ニヤリとこちらに笑いかける友人を見てしまった。
この恐怖。
自分だけが助かった罪悪感。
男はこのトラウマを背負い40年間を過ごしてきたのですが、
そうしてやっと得た答えとは・・・。
強烈な印象を残す作品です。
怪談めいた作品ばかりの紹介になってしまいましたが、
他のストーリーもどれも楽しめます。
村上春樹の空気を若干理解したことに気を良くして、
次には「ノルウェーの森」に行きたいと思います。
満足度★★★★☆