映画と本の『たんぽぽ館』

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「栄光なき凱旋 中」 真保裕一

2009年07月26日 | 本(その他)
栄光なき凱旋〈中〉 (文春文庫)
真保 裕一
文藝春秋

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さて、2巻目となりました。
いよいよ物語は佳境に入ります。

日本軍の真珠湾攻撃により、
アメリカで暮らす日系人たちが苦境に立たされています。
日系二世、3人の青年の選んだ道は・・・。
結局みな米軍に入り、日本軍と闘うことになるんですけどね。
それぞれ目的は微妙に異なる。


マット・・・<元気印!>
ハワイで生まれ育った2世です。
リーダー性あり。
南国の陽気さタフさを持っていて前向き。

ヘンリー・・・<悩み多きインテリ>
ロサンゼルス出身。
銀行の就職が決まっていたのに、戦争のためにフイに。
婚約者も亡くし、強制収容所に収容されていた。

ジロー・・・<ロンリー・ウルフ>
ロザンゼルス出身。
ヘンリーとは同郷。
ある大きな秘密を持つ。
日本語能力が特に優れているため、いち早く語学兵として、軍隊に入る。


それぞれの個性も、よりはっきり出てきました。
上巻ではハワイ陣、ロス陣、会うことはなく、
それぞれ別個にストーリーが進んでいましたが、
この巻ではまずマットとヘンリーがミシシッピ州の軍のキャンプで出会います。
この二人の出会いはなかなかいい。
陽のマットと陰のヘンリーは、お互いに良い影響を与え合います。
いつも集団からは一歩身を引くヘンリー。
いつも輪の中心にいるマットですが、
彼は、輪の外のヘンリーにもきちんと反応し、次第に輪の中へ引き込んでゆく。

さて、そのマットもまた、日本語の能力を乞われ、語学兵となります。
ある特命を受け、フィリピンに向かいますが、
そこでコンビを組むのががジロー。
日本軍に占領されたフィリピン、つまり敵地に潜入し、
ある極秘文書を米軍が見たと気づかれないように日本軍に戻す、という任務。
スパイであります。
どこから見ても見た目は日本人の二人。
日本人になりきってこの危険な任務を果たすことができるのか・・・。
いよいよ高まる緊張感。
ジローは愛想がなく言うことも辛辣。
でも、マットは、彼に対して興味を抱いていくのですね。
もしかすると、ジローの孤独をマットが救うことができるのでしょうか・・・・。
残念ながら、その答えはまた来月、ということになります。

それにしても、同じ日本人の血を引く2世たちが、
アメリカ人として、日本人に銃を向けなければならない。
しかし、アメリカの中でも彼らは差別を受け、決して楽な立場ではない。
そのアメリカのために、命を掛けることができるのか・・・・・・。
様々な自己矛盾、迷い。
こうしたことがとてもきめ細やかに描かれています。
そうして、エンタテイメント性もあり。
待たれる次巻!

満足度★★★★☆