映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヤギと男と男と壁と

2011年03月03日 | 映画(や行)
超能力と元気なおぢさんたち



              * * * * * * * *

この作品の原作はジョン・ロンスン著「実録・アメリカ超能力部隊」。
限りなくウソのようだけれども、
本当にあった話・・・というのが何とも興味を引きます。


地方誌の記者ボブ(ユアン・マクレガー)は離婚の痛手を断ち切るため、
戦火のイラクへ向かいます。
そこでリン(ジョージ・クルーニー)という不思議な男と出会う。
彼はかつて存在した極秘部隊「新地球軍」の特殊工作員であったという。
その新地球軍というのは、つまり超能力を用いるものを集めた部隊。
その部隊を率いていたのは、ジャンゴ(ジェフ・ブリッジス)というぶっ飛んだ男。
超能力を使うためには精神力・集中力が一番必要。
というわけなのやらなにやら、
ひたすらダンスをして自己を解き放つなど、ほとんど宗教かと思える怪しげな訓練。
武器は使わない。
愛と平和で地球を救う・・・。
う~ん、思わず笑ってしまいそうなのですが、
つまり、こういう部隊が本当に存在したということなのです。
そういえば昔、超能力を扱ったSF小説の中で、
まことしやかにソ連だかアメリカだかで超能力を戦争に使う研究がなされている
などと書かれていた記憶が・・・。
あながち嘘っぱちでもなかったのですねえ。
ジャンゴの最も真剣で優秀な信奉者がリンだったのです。
ところが、そのリンを妬む別の超能力者ラリー(ケビン・スペイシー)の陰謀で
ジャンゴはクビになってしまい、
ラリーが変わってトップに立つ。
平和を基調とする方針は崩れ、
視線を合わせるだけでヤギを殺す訓練をしなければならなくなったりする・・・。



「超能力」自体が未だにウソかマコトか、よくわかりませんね。
まじめに論じれば論じるほど怪しく見えてきてしまう。
私自身も、100%否定は出来ないと思ってはおりますが・・・、
戦争に使うためにはあまりにも不安定で実用に向かなかったのでしょうね。
そこにそんなに予算をかけるなら、
他のもっと確実なものにお金をかけた方がいい、ということか。


とにもかくにも、こんな怪しいストーリーを、
揶揄を込めながら、苦く可笑しい作品に仕上げているのはさすがです。
作品中では超能力を否定も肯定もせず、
その超能力のすごさよりも、それを取り巻く人々の悲喜こもごもを語っています。
だからこれはやっぱりSFではなくて、完璧な人間ドラマ。
また、このキャストがふるっていますよね。
豪華絢爛くせ者揃い。
ジェフ・ブリッジスの存在感はすごい。
元気なおぢさんたちのストーリーでした・・・。



ヤギと男と男と壁と [DVD]
ジョージ・クルーニー,ユアン・マクレガー,ケヴィン・スペイシー,ジェフ・ブリッジス
エイベックス・エンタテインメント


「ヤギと男と男と壁と」
2009年/アメリカ・イギリス/94分
監督:グラント・ヘスロフ
制作:ジョージ・クルーニー
原作:ジョン・ロンスン「実録・アメリカ超能力部隊」
出演:ジョージ・クルーニー、ジェフ・ブリッジス、ユアン・マクレガー、ケビン・スペイシー