映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ぼくのエリ 200歳の少女

2011年03月29日 | 映画(は行)
端整な映像と静謐な冬の世界、そしてヴァンパイアの悲哀



            * * * * * * * *

冬のスウェーデン、ストックホルム。
いかにも冷え冷えとした舞台です。
12歳オスカーは、学校ではいじめられっ子。
家では両親が離婚し、父親とはたまにしか会えない。
母親も仕事で忙しい。
そんな孤独な少年が、隣に越してきた女の子に興味を引かれます。
エリというその女の子は、
父親らしき人と暮らしているようなのだけれど、夜にしか姿をあらわさない。
周囲に受け入れられず孤独な二人が、
夜の公園で時々あって話をする内に、次第に心惹かれてゆく。
けれど、エリは言います。

「私が女の子でなくても、私のことを好き?」

その言葉の意味は次第にわかってくるのですが、
つまり彼女は、200年を生きているヴァンパイアなのでした。



ちょっとホラーとは思えない端整な映像と静謐な冬の世界。
けれど人の血をすすらなければ生きていけないヴァンパイアですから、
やはり残酷な殺害シーン、血まみれシーンはあるのです。
それでもなおかつ、日の光に、神に、
背を向け生き続けなければならないヴァンパイアの悲哀がじんわりこみ上げます。
この感じ、萩尾望都さんの『ポーの一族』ですね。
というか、『ポーの一族』にはやはり及ばないとは思いますが、
「トワイライト」のシリーズよりはずっと繊細な感情がうまく表されていると思います。



ラストシーンで私はようやく、
エリとあの父親のように見えていた中年男の関係を理解しました。
つまりは何十年後かのオスカーとエリの姿なのか・・・。


それにしても余計なことと思いつつ、
ついつまらぬ想像をしてしまいます。
エリはどのくらいの頻度で「食事」をするのでしょう。
みたところ、数日で一人くらい襲わなければ持たないみたいなんですよ。
こんなに同一地域で変な殺人事件が続くのでは、
警戒も厳しくなるでしょうし、
狩りは非常に難しくなりそうだ・・・。
いかに拠点を転々と変えようとも・・・。
しかも襲い方がいかにもずさん。
よく今まで無事でいたなあ・・・。
方針を変えて輸血用の血液を買ったが早いのでは?
・・・などと、これも下らぬ想像ですね。

ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD]
カーレ・ヘーデブラント,リーナ・レアンデション
アミューズソフトエンタテインメント


「ぼくのエリ 200歳の少女」
2008年/スウェーデン/115分
監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナル、ヘンリック・ダール