映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アリゾナ・ドリーム

2011年03月27日 | 映画(あ行)
ビター・チョコレートのような・・・

             * * * * * * * *

ジョニー・デップが見たくて、選んだ作品。
あれれ? 
ところで、この監督はエミール・クストリッツァ、
ユーゴスラビア出身の監督さんで、
なんと同監督による「黒猫・白猫」を先日見たばかりではありませんか! 
しかも、私的には無残な結果の・・・。
ちょいと不安がよぎります・・・。
時々、こういう変な偶然が起こります。
そうです。
世の中はすべてつながっている。
梨木香歩さん的解釈。


この作品の冒頭は何故かアラスカ。
アリゾナのはずなのに・・・と、まずわき出る疑問。
イヌイットの男が魚のオヒョウの胃袋で息子に風船を作ります。
息子が飛ばしたその風船は、
遠くニューヨークの青年アクセルの元まで飛んで行く。
おお、ここで主人公につながるのか。
実はアクセルはアラスカでオヒョウを釣るのが夢。
大人になるにつれて、目が片側に寄って行くというその不思議な魚が、
彼の見果てぬ夢を誘う。


そのアクセルは、叔父の結婚式のためにアリゾナへ向かいます。
叔父は自動車販売の仕事をしていて、アクセルに後を継いでもらいたいと思っている。
けれどアクセルにその気は全くない。
夫を射殺した過去を持つ未亡人エレインと
義理の娘で自殺願望のあるグレースの家に転がり込みます。
始めは夫人の色香にふらっと来て、
そのエキセントリックな言動に舞い上がったアクセルですが、
次第に娘グレースの方に心惹かれていき・・・。
愛情なのか、憎悪なのか、
不思議な緊張感のある血のつながらない母娘。
そしてこの二人に翻弄される青年。
20年前の若きジョニー・デップが、
ナイーブでちょっぴりさめたこの青年役を好演しています。


自動車販売に夢をかける男。
空を飛ぶ夢に魅入られる女。
亀になりたいと願う女。
映画スターになりたい男。
この作中人物は皆それぞれに夢を持っているわけですが、
それはすなわち現在の自分自身に満足していないということなんですよね。
アメリカン・ドリームなんて、もうない。
そう気づくことが大人になることだとすれば、ずいぶん苦いストーリー。
そうです、これはビターなチョコレートのようなファンタジー。
何だか印象に残る作品です。
とりあえずは、この監督作品すべてに拒否感を持たなくて済みそうなので、よかった・・・。


ジョニー・デップが「シザー・ハンズ」で注目を浴びた後、
「ギルバート・グレイプ」などとほぼ同時期の作品ですね。
はい。
ステキです。
奇人変人でない、ナイーブな青年役のジョニー・デップ。

アリゾナ・ドリーム [DVD]
デヴィッド・アトキンス
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


「アリゾナ・ドリーム」
1992年/フランス/140分
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ジョニー・デップ、フェイ・ダナウェイ、リリ・テイラー、ビンセント・ギャロ、ジェリー・ルイス、ポーリーナ・ポリスコフ