映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

クレアモントホテル

2011年03月26日 | 映画(か行)
人と人との心の結びつき



              * * * * * * * *

クレアモントホテルはロンドンの長期滞在型のホテルです。
ある日、一人の上品そうな老婦人が、
荷物をたくさん持ってこのホテルにやって来ました。
ホテルは思ったよりもボロで部屋も狭くてちょっとがっかり。
でも、彼女は当面ここで過ごすことにします。
このホテルに滞在しているのは、同じくお年寄りばかりで、
ディナーの時には彼女パルフリーに皆興味津々。
雰囲気はホテルというよりも老人ホームですね。
皆の関心は互いにどんな人が訪ねてくるかということ。
彼女もさっそく孫息子に電話をするのですが、
留守番電話になっていて、その後も連絡もよこさないし訪ねても来ない。
そんなある日、彼女は小説家志望のルードという青年と知り合います。
彼女が道で転んでしまったときに助けてくれたのです。
お礼にディナーに呼んだのですが、
ホテルの皆はこれが彼女の孫だと勘違い。
彼女はそれを否定することができなくなってしまい、
ルードにこのまま孫のフリをしてもらうよう頼むのです。



さて、このパルフリー婦人がどうして一人でこんな所にやって来たのか。
まずそれが一番の秘密。
彼女がこんなことを言うシーンがあります。

「私はこれまで誰かの娘として、妻として、母として生きてきた。
今度は私自身になって自立して暮らしたい。」

彼女は孫に連絡しようとしましたが、自分の娘には全く連絡を取りません。
この母娘の関係があまりうまくいっていないことを匂わせますね。
夫は若い頃に先立っており、必死に今まで生きてきた。
ふと、自分の人生を見つめ直したくなったのかもしれません。
一方、ルード青年は母親とうまくいっていない。
彼もまた孤独な毎日を過ごしていたのです。
いつしか二人は互いのことを大切に思う友人関係を築きます。

心と心が結びつくのには、年は関係ないですね。
次第にルードの孤独も癒されていきます。
また、パルフリー婦人にはルードに恋人ができても、
二人を邪魔しない分別があります。
若い恋人同士に昔の自分と夫の幸せな時を重ね合わせるパルフリー。
決して返らない時を思うと切なくなります。
老いるということは、自分の大切な物を少しずつ失っていくことなんだなあ・・・。
ルードを孫息子と思い込むホテルの人々のからさわぎをアクセントに、
生きること、老いることの意味をしっとりと描いた良作。


老人の出演者が多いためか、
この青年ルードの魅力が一層引き立ち、つい見とれてしまいました。
ルパート・フレンド。
ああ、「縞模様のパジャマの少年」で、ドイツ軍将校の役をしていた・・・。
あのときもステキと思ったのでした。
もろに私の好みかも・・・。

この作品2005年のもの? 
ずいぶん日本公開までに間が開いています。
というよりも、札幌にたどり着くまでに時間がかかったのか。
いずれにしても、公開されてラッキーでした。
こういう作品公開を手がけていただいている方々に感謝。

2005年/アメリカ・イギリス/108分
監督:ダン・アイアランド
原作:エリザベス・テイラー
出演:ジョーン・プロウライト、ルパート・フレンド、ゾーイ・タッパー、アンナ・マッッセイ