好奇心から科学へ・・・
* * * * * * * *
著者は、免疫学者であり、また文学にも造詣が深く、
創作能を書くなど活躍をされている方です。
ところが脳梗塞で半身不随と鳴り、壮絶なリハビリに努めたといいます。
この本はその病に倒れる以前のエッセイをまとめたもの。
解説の加賀乙彦氏は言います。
私は著者の病後と病前の異なった生活に、
精神の橋を架けるような本書の出現に、人間の不思議を見た。
健康であることは、普通の人間にとって当たり前の状態であるのだが、
重い病気にかかった人から回想すると、奇跡の様に思えるようだ。
本の冒頭は著者がアフリカやタイを旅する話から始まっています。
好奇心たっぷりで活動的なこの著者の生き様。
体を病んだとしてもその精神は変わらないはず。
まずは、著者の好奇心におつきあいして、アフリカの旅から・・・。
アフリカへの旅と言えば、先日読んだ「ピスタチオ」を思い出します。
ほらね、すべての事象はつながっている・・・と、
梨木香歩さんがほくそ笑んでいそうに思えてしまいました。
著者は、ニューヨークのメトロポリタン美術館で見た奇妙な両性具有の像に心惹かれ、
その像を作ったアフリカ奥地のドゴン族に会いに行くのです。
これぞ人類発祥の地。
最初に発生した人類の末裔の地こそ、ドゴン。
そう確信して。
ところが、アフリカ奥地のその地にたどり着くのはなかなか大変。
ほとんど冒険譚ですが、そこまでしても自分の目で確かめたい。
そういうところがやはり科学者だなあ、と感心することしきり。
また、アフリカのマリ共和国で、マラリヤ伝染の蚊の研究を続ける日系二世の方のこと、
タイの山岳民族の村が麻薬中毒でつぶれかかっているのを復活させたチームにいる日本人の話、
そういうことには驚かされました。
彼らは、なんのゆかりもないその地に根付き、地元の人のために奮闘している。
さしたる見返りもないというのに。
今の世の中、殺伐とした話が多いですが、
それでもこのように人のために尽くしている人がいるというのは、貴重なことです。
著者は、彼らの行動をこのように読んでいます。
私たち先進国の人間も、実は限りなく傷つき、
自力では回復できないほど病んでいたのである。
彼らが癒えることは、私たちも癒えることである。
そうですね、そういうことが原動力なんですね。
偽善であればすぐに折れてしまいます。
その他、見識深い著者の文章には、いちいち肯かされることしきり。
よい本でした。
「生命の木の下で」多田富雄 新潮文庫
満足度★★★★☆
生命の木の下で (新潮文庫) | |
多田 富雄 | |
新潮社 |
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著者は、免疫学者であり、また文学にも造詣が深く、
創作能を書くなど活躍をされている方です。
ところが脳梗塞で半身不随と鳴り、壮絶なリハビリに努めたといいます。
この本はその病に倒れる以前のエッセイをまとめたもの。
解説の加賀乙彦氏は言います。
私は著者の病後と病前の異なった生活に、
精神の橋を架けるような本書の出現に、人間の不思議を見た。
健康であることは、普通の人間にとって当たり前の状態であるのだが、
重い病気にかかった人から回想すると、奇跡の様に思えるようだ。
本の冒頭は著者がアフリカやタイを旅する話から始まっています。
好奇心たっぷりで活動的なこの著者の生き様。
体を病んだとしてもその精神は変わらないはず。
まずは、著者の好奇心におつきあいして、アフリカの旅から・・・。
アフリカへの旅と言えば、先日読んだ「ピスタチオ」を思い出します。
ほらね、すべての事象はつながっている・・・と、
梨木香歩さんがほくそ笑んでいそうに思えてしまいました。
著者は、ニューヨークのメトロポリタン美術館で見た奇妙な両性具有の像に心惹かれ、
その像を作ったアフリカ奥地のドゴン族に会いに行くのです。
これぞ人類発祥の地。
最初に発生した人類の末裔の地こそ、ドゴン。
そう確信して。
ところが、アフリカ奥地のその地にたどり着くのはなかなか大変。
ほとんど冒険譚ですが、そこまでしても自分の目で確かめたい。
そういうところがやはり科学者だなあ、と感心することしきり。
また、アフリカのマリ共和国で、マラリヤ伝染の蚊の研究を続ける日系二世の方のこと、
タイの山岳民族の村が麻薬中毒でつぶれかかっているのを復活させたチームにいる日本人の話、
そういうことには驚かされました。
彼らは、なんのゆかりもないその地に根付き、地元の人のために奮闘している。
さしたる見返りもないというのに。
今の世の中、殺伐とした話が多いですが、
それでもこのように人のために尽くしている人がいるというのは、貴重なことです。
著者は、彼らの行動をこのように読んでいます。
私たち先進国の人間も、実は限りなく傷つき、
自力では回復できないほど病んでいたのである。
彼らが癒えることは、私たちも癒えることである。
そうですね、そういうことが原動力なんですね。
偽善であればすぐに折れてしまいます。
その他、見識深い著者の文章には、いちいち肯かされることしきり。
よい本でした。
「生命の木の下で」多田富雄 新潮文庫
満足度★★★★☆