映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

津軽百年食堂

2012年07月02日 | 映画(た行)
受け継がれる思い



                   * * * * * * * * * 

東京で暮らす青年大森陽一は、
偶然の出会いから、同郷の七海とルームシェアをすることになります。
青森県弘前市の彼の実家は、代々続く大森食堂を営んでいます。
七海の実家は写真館を営んでいましたが、
そのためか写真家を目指しているのです。
ある日陽一の父が事故で入院。
店のピンチヒッターとして陽一は10年ぶりに帰郷しますが・・・。


都会では周りがめまぐるしく変わっていくのに、
故郷の店は10年前と少しも変わらずそこにあります。
東京で就職に敗れ、店を継ぐと言い出した陽一を、叱り飛ばした父。
仕方なく東京に残ったものの、やはり定職には付けない陽一は、
この先の自分の道を考えているところでもありました。
弘前の満開の桜が陽一を迎えます。
100年前から受け継がれてきた、津軽そば。
故郷の歴代の人々の思いを、彼は受け継ぐのでしょうか?
そして、七海は?


ふるさとの街の佇まいと桜の花にすっかり癒されてしまいます。
こうした故郷を持つ人がなんだか羨ましくなりますね。
私は故郷に住み続けているわけですが、
幼い頃に住んでいたその場所は、今やマンションが林立する住宅地。
かつての面影を探すことも難しい。
故郷は心の中だけに。
今やそういう人が多いのかも知れません。
こうした家族と故郷の絆を目と体で実感できるというのは、なんと幸せなことでしょう。
それはたぶん自分の存在意義にもつながってくる。
今はあまりにも都会に人が集中し過ぎています。
程よい人の輪の中で、それぞれが自分らしく生きられればいいのかも。


さて、今作のキャスティングがとてもユニークで、いいですよね。
現代青年の陽一が、オリエンタルラジオの藤森慎吾さん。
明治時代の、初代店主(つまり、陽一のご先祖様)が、同じくオリエンタルラジオの中田敦彦さん。
従って同時に出てくるシーンはありませんが、
それぞれいい味出ています。
雰囲気ぴったり。
心に染み入る良作です。

津軽百年食堂 [DVD]
藤森慎吾,中田敦彦,福田沙紀,ちすん,伊武雅刀
キングレコード


「津軽百年食堂」
2011年/日本/106分
監督:大森一樹
原作:森沢明夫
出演:藤森慎吾、中田敦彦、福田沙紀、ちすん、藤吉久美子、伊武雅刀