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「生きていてもいいかしら日記」 北大路公子

2012年07月08日 | 本(エッセイ)
すべてを忘れて読みふける面白さ!

生きていてもいいかしら日記 (PHP文芸文庫)
北大路 公子
PHP研究所


                  * * * * * * * * *  

ある日曜日、例によって映画を見た後、
帰宅のため、私は大通駅から地下鉄に乗りました。
我が家は札幌の西方面なので、東西線宮の沢行きを利用します。
電車に乗ってすぐに本を開き
・・・ふと気がつくと「南郷18丁目」。

ひえ~!!

札幌にお住まいの方なら、そんなバカなとお思いでしょう。
大通駅からは全く逆方向で、しかも7つも先の駅だ。
そもそも逆方向に乗ったのが、しょうもない間違いではありますが、
さて、どうしてそこまで気が付かなかったという問題です。
(いや、やはり逆方向に乗るほうがどうかしてるか・・・^^;)
いや、それはさておき、
つまり、あまりにも本が面白くて、全く周りのことに気づいていなかったのです。
その本がこれ。
・・・すご~く回りくどい前フリでした。


この本の著者は札幌にお住まいで、
この本は著者の日常を語るエッセイです。
それがまあ、ほとんど自虐ネタ。
40代、独身。
実家住まい。
お仕事はライターなので、いつも殆どお家にいるようです。
好きなもの昼酒。
・・・それで、ご近所の人からはナニモノ?といぶかしがられているのだとか。


それにしても彼女の発想力が人並み外れてなんとユニークなこと。
そしてひたすら自分の失敗談や、妄想を惜しげもなくぶちまけるイサギの良さに、
もう止められなくなってしまいます。
そしてつい笑ってしまうので、本当は電車の中などで読むべきではないのですけどね・・・。


例えば彼女は、「お相撲さんになりたい」といいます。
ある日、中学の頃の日記を見つけて、そこには「妖精になりたい」などと書いてあった。
あまりの気恥ずかしさに即シュレッダーを買いに行ったとありますが、
まあとにかく、今はお相撲さんになって余力に満ちた人生を送りたいというのです。
朝起きて布団を上げる。
おやつの甘栗を剥く。
ベロンベロンに酔って帰ってきてからカップ麺を作って食べる。
これらのことに彼女は渾身の力を使うという。
けれどお相撲さんならこんなことは安々とやってのけるだろう。
そういう"余力"に憧れるのだそうで・・・。
ね、普通の発想じゃないですよね。
しかも女性がお相撲さんになりたいとは。
まあつまり、こんな話が満載で、
ついニヤニヤしながら読みふけってしまいます。


それにしても、結局地下鉄は中央がホームになっている駅で乗り換えようと思ったら終点まで行ってしまい、
ものすごい時間ロスでした。
お陰で一冊読み終えましたが。
(イヤ、だから、逆方向に乗ったのは本のせいじゃないんですって。)
う~ん、でも面白いだけで結局なんにも残らないじゃない、と、
自分で激しく自己嫌悪に駆られりもしたわけですが、
いみじくもこの本の裏表紙にこんな言葉がありました。
「読んでもなんの役にも立たないけれど、
思わず笑いがこみあげて、不思議と元気が出てくる」

とありました。
そうですよね。
ちょっぴり落ち込んだりした時に、この本を読んだら
小さな事でくよくよするのがバカらしくなりそうです。
座右の一冊にしてもいいかも。


「生きていてもいいかしら日記」北大路公子 PHP文芸文庫
満足度★★★★☆