“男”であること、“女”であることからの開放
* * * * * * * * *
始まりは1600年。
エリザベス1世晩年の頃。
晩餐の宴で女王に詩を捧げた青年貴族オルランドを女王が気に入り、
「決して老いてはならない」という条件付きで、彼に大きな屋敷を与えます。
中性的魅力をたたえたこのオルランド役が、
なんとティルダ・スウィントン。
なるほど、男装が似合っています。
一方老境の女王エリザベスを演じるのは男優クエンティン・クリスプ。
こういう配役の意味が最後にわかってくる仕組みです。
エリザベス女王の言葉の呪縛からか、
それからオルランドは“老いる”ことがありません。
まるでバンパイアのように、若く美しいまま年月だけが流れていく。
バンパイアならそれなりに生き続けるのには苦労がありますが、
オルランドにはそういう悩みもありません。
しかし、生きていくのがとてつもなく嫌になってしまう時、彼は眠りにつくのです。
始めは恋に敗れた時。
一週間程も眠り続けた後、さっぱりと目を覚ます。
そしてその次は、自分は男として生きられないと感じた時。
一週間の眠りから目覚めた時に、なんとオルランドは女性になっていたのでした。
ガサガサとかさばるスカートの裾を気にしながら歩くオルランド。
突然女になってしまった戸惑いはありながらも、
「私は私。変わらない」とつぶやく。
400年を生き続けて、オルランドが見届けたのは、
“男”であること、“女”であることからの開放。
男は強く勇敢で家を継ぎ守って行かなければならない。
女は夫に従い、子供を産んで育てなければならない。
性別による、このようながんじがらめの社会のしがらみや思い込み。
そうではなくて、ただ1人の人間として自由に生きたい。
それが原作者ヴァージニア・ウルフの願いなのでしょう。
だからといって、子供を産み育てるという営みを
否定するものではないということでもあります。
人類の歴史から見ても、このような考え方が認められてきたのはつい最近のこと。
いえ、結局今もそう変わったとも思えないのですが・・・。
エリザベス朝時代の雰囲気の描写が素敵でした。
特に、異常寒波のイングランドで、
凍てついた道や海の上を、人々がスケートで歩き回っているさまなどはユーモラスでもあります。
この時代の夜の明かりは、月明かりと僅かなろうそくや松明のみ。
こんな夜には、永遠に年を取らない不思議もあって可笑しくない気がしてきますね。
「オルランド」
1992年/イギリス・ロシア・イタリア・フランス・オランダ
監督・脚本:サリー・ポッター
原作:ヴァージニア・ウルフ
出演:ティルダ・スウィントン、シャルロット・ヴァランドレイ、ヒースコート・ウィリアムス、ロテール・ブリュトー、ビリー・ゼーン
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始まりは1600年。
エリザベス1世晩年の頃。
晩餐の宴で女王に詩を捧げた青年貴族オルランドを女王が気に入り、
「決して老いてはならない」という条件付きで、彼に大きな屋敷を与えます。
中性的魅力をたたえたこのオルランド役が、
なんとティルダ・スウィントン。
なるほど、男装が似合っています。
一方老境の女王エリザベスを演じるのは男優クエンティン・クリスプ。
こういう配役の意味が最後にわかってくる仕組みです。
エリザベス女王の言葉の呪縛からか、
それからオルランドは“老いる”ことがありません。
まるでバンパイアのように、若く美しいまま年月だけが流れていく。
バンパイアならそれなりに生き続けるのには苦労がありますが、
オルランドにはそういう悩みもありません。
しかし、生きていくのがとてつもなく嫌になってしまう時、彼は眠りにつくのです。
始めは恋に敗れた時。
一週間程も眠り続けた後、さっぱりと目を覚ます。
そしてその次は、自分は男として生きられないと感じた時。
一週間の眠りから目覚めた時に、なんとオルランドは女性になっていたのでした。
ガサガサとかさばるスカートの裾を気にしながら歩くオルランド。
突然女になってしまった戸惑いはありながらも、
「私は私。変わらない」とつぶやく。
400年を生き続けて、オルランドが見届けたのは、
“男”であること、“女”であることからの開放。
男は強く勇敢で家を継ぎ守って行かなければならない。
女は夫に従い、子供を産んで育てなければならない。
性別による、このようながんじがらめの社会のしがらみや思い込み。
そうではなくて、ただ1人の人間として自由に生きたい。
それが原作者ヴァージニア・ウルフの願いなのでしょう。
だからといって、子供を産み育てるという営みを
否定するものではないということでもあります。
人類の歴史から見ても、このような考え方が認められてきたのはつい最近のこと。
いえ、結局今もそう変わったとも思えないのですが・・・。
エリザベス朝時代の雰囲気の描写が素敵でした。
特に、異常寒波のイングランドで、
凍てついた道や海の上を、人々がスケートで歩き回っているさまなどはユーモラスでもあります。
この時代の夜の明かりは、月明かりと僅かなろうそくや松明のみ。
こんな夜には、永遠に年を取らない不思議もあって可笑しくない気がしてきますね。
![]() | オルランド 特別版 [DVD] |
サリー・ポッター | |
パイオニアLDC |
「オルランド」
1992年/イギリス・ロシア・イタリア・フランス・オランダ
監督・脚本:サリー・ポッター
原作:ヴァージニア・ウルフ
出演:ティルダ・スウィントン、シャルロット・ヴァランドレイ、ヒースコート・ウィリアムス、ロテール・ブリュトー、ビリー・ゼーン