映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「きのこいぬ」 蒼星きまま 

2012年07月31日 | コミックス
いぬか? きのこか?

きのこいぬ(リュウコミックス)
蒼星 きまま
徳間書店


                  * * * * * * * * * 

切なくもじんわりと胸にしみる、愛犬家ならより一層・・・。
癒し系のコミックです。


愛犬、はなこを亡くして、傷心の絵本作家、夕闇ほたる。
庭にピンクのきのこが生えているのを見つけ、
見つめていたら、もぞもぞと動き出して犬になっちゃった・・・!
それが"きのこいぬ"です。


"きのこいぬ"は、以前からこの庭に生息(?)していたらしいのですが、
いつもほたるとはなこが仲良く寄り添っているのを眺めていたのです。
ほたるは少年時代に両親をなくしていて、
はなこが唯一の"家族"でした。
そのはなこを亡くして、ほたるはすっかり仕事の意欲も生きる意欲もなくしていたのです。
そのほたるを見かねて、一念発起したピンクのきのこは、
エイっとばかりに、イヌに変身。
ほたるを慰めようと、一生懸命。
うーむ、このきのこは、きのこ似た未知の宇宙生物? 
全く正体不明なのですが、本作の登場人物たちは、さして頓着しません。
ほたるは、単に家に入りたそうだったからと、入れてしまうし、
幼馴染の担当編集者、こまこは、不気味に思いながらも
ホタルがいいのならよしとする。
きのこ研究所員の矢良くんは、その生態を解き明かそうともせず、
ほたるをめぐってのライバル関係に。
みな何やらのほほんとしたところが、なんとも言えなくいい味になってます。
あくせくしすぎず、脱力系。
こういうのが好きです。


しかし、この"きのこいぬ"、
見かけはこんなでいかにも癒し系ですが、
感情表現は意外とワイルドで、
はなこの思い出の首輪や、残っていたペットフードは燃やしてしまうし、
はなこを思い出しているほたるを土手から突き落としたりする。
そんな"きのこいぬ"を怒りもしない、ひたすら人のいいほたるなのです。
・・・いや、人がいいと言うよりも単に鈍感なのかも知れませんが。
"きのこいぬ"はそんなほたるが大好きなのですが、
ほたるは"きのこいぬ"ははなこが好きだったのだろうと思っているのです。
そんなふうだからこそ、みんなほたるが好きなんですけどね。


私もちょっぴりかつての愛犬を思い出してしまいました。
我が家にもはえてこないかな。
きのこいぬ。

「きのこいぬ」蒼星きまま 徳間書店
満足度★★★★★