映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

サラの鍵

2012年07月26日 | 映画(さ行)
真実を知るには代償がいる



                      * * * * * * * * * 

1942年。
ナチス占領下フランスでの出来事。
フランス警察がナチスに協力し、ユダヤ人を一斉検挙。
ベルディブ冬季競輪場に13000人ものユダヤ人が幽閉され、
更にはドイツやポーランドの収容所へ送られた事件です。
この事件については先に「黄色い星の子供たち」という作品で知りました。
フランス人にとっては慚愧に堪えない事件で、
でも決して忘れてはならないこととして記憶に留めておこうとしているのがよくわかります。
今作中でも、若い人が“ベルディブ”の名前も知らず、主人公が嘆くシーンが。


さて、サラというのはユダヤ人の少女。
フランス警官が彼女の家族を捕らえに来た日、
すぐ戻れると信じた彼女は、弟を納戸に隠しました。
その納戸の鍵を持ったまま、彼女は収容所へ送られてしまったのです。
弟のことが気がかりでならないサラは、ついに収容所を脱走するのですが・・・。



一方、それから時を隔てた現代。
ジャーナリストのジュリアがこのフランスでのユダヤ人迫害の出来事を調べ始めます。
そんな中で知った、サラのこと。
彼女はサラのその後の消息を尋ねていくのです。


ジュリアが知った真実は、決して誰を幸せにもしません。
むしろそのことで傷つく人も。
彼女は言います。
「真実を知るのには代償がいるのよ。」



オーストラリアに無理やり送られた子供たちの話も、そうでしたね。
真実を知ることは時には残酷でもあります。
けれども、そうしたことを一度受け入れることが、
やがて癒しにつながっていくのかも知れません。
今作でも、ある人物がラストシーンで流す涙が、
私達の心を浄化していくような気がしました。
運命にひたすら耐え、挑むかのような少女の眼差しが忘れられません。

サラの鍵 [DVD]
クリスティン・スコット・トーマス,メリュジーヌ・マヤンス,エイダン・クイン
東宝


「サラの鍵」
2010年/フランス/111分
監督:ジル・パケ=ブレネール
原作:タチアナ・ド・ロネ
出演:クリスティン・スコット・トーマス、メリシューヌ・マイヤンス、ニエル・アレストラップ、エイダン・クイン