映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ミラノ、愛に生きる

2012年07月06日 | 映画(ま行)
妻であり、母であることからの開放



* * * * * * * * * 

イタリア、ミラノの上流社会。
富豪の婦人が息子の友人を愛してしまう・・・。
このように聞けばよくある情事の物語・・・と思えるのですが、
今作は肌触りが上質です。
見かけは美しい光沢のあるシルク。
でも実は質実なリネンが混ざっているという感じでしょうか。


この夫人エンマは、ロシア人。
若いころ夫に見初められミラノに来てから、
この名門の暮らしの中で、ロシア人の本当の自分の名前を思い出すこともなくなっていました。
そんな彼女が、ふと我にかえったのは、
シェフである息子の友人アントニオの料理を食べた時。
海老料理を口に含むティルダ・スウィントンの愉悦の表情が素晴らしい。
家でパーティーを開いても1人自室で刺繍をしていたりする、目立たないエンマ。
無理に心の底に押し込めていた何かが
その時目を覚ましたようです。
この官能的なまでの食事シーンには唸ってしまいます。


アントニオが作るスープで、母の情事を嗅ぎとってしまう息子。
彼は「裏切りだ」と母をなじりますが、
それは勝手に彼自身が作り上げた母親像が壊されてしまったことへの怒り。
いい奴なんですが、ナイーブに過ぎましたね・・・。
いえ、男子にとって“母”とはそういうもの。
しかたのない事でもあります。


ドラマは思いがけない方へ展開を見せますが、
これはつまり、エンマをその立場に縛り付けていた最も大きな力は、
最愛の息子に他ならない、ということなのかも知れません。
単なる情事というのではなく、自己の開放。
こういうところが光っています。



さて、それにしてもティルダ・スウィントン。
50歳くらいだと思うのですが、引き締まってたるみのない美しいボディ。
これなら脱がせ甲斐があるといいますか、
息子と同年代男子との情事も全然アリですよね。
あわわ・・・、
我が身とひき比べるなどと無謀なことはしないことにしましょう。

ミラノ、愛に生きる [DVD]
ティルダ・スウィントン,フラヴィオ・パレンティ,エドアルド・ガブリエリーニ,アルヴァ・ロルヴァケル,ピッポ・デルボーノ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


「ミラノ、愛に生きる」
2009年/イタリア/120分
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ティルダ・スウィントン、フラビオ・パレンティ、エドアルド・ガブリエリーニ、アルバ・ロルバケル、ピッポ・デルボーノ