映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ローマ法王の休日

2012年08月03日 | 映画(ら行)
広場の階段でアイスは食べないけど



                * * * * * * * * * 

今作は予告編を見て、絶対見ようと思いました。
大観衆の前で話すのが嫌で逃げ出すローマ法王の話とは・・・! 
しかも、題名が「ローマの休日」をもじって、「ローマ法王の休日」。
なんて洒落ているんでしょう。
期待が高まります。


さて、というわけで勇んで見たわけですが・・・
あれあれ・・・? 
う~ん、なんだか満足感には欠けます。



ローマ法王が亡くなり、次の法王を決めるため、
各国の枢機卿がバチカンに集まり、コンクラーベという会議を開きます。
法王は投票で決まりますが、決まるまでそのメンバーは外に出ることもできず、
延々と会議が続くという過酷なきまりがあるわけです。

今作では、みな
「神様、一生のお願いです。どうか私が選ばれませんように・・・」
そんな風に祈っています。
地位や名誉よりも、様々な面倒に縛られたくないと、そういう実際的な心情が強い。
そんな訳もあってか、最後に選ばれたのは、誰も予想しなかったメルビル。
ところが、いざ、彼が就任の挨拶のためバルコニーで大観衆を前に演説をするという直前、
そのあまりの重責にたえかねて、メルビルはローマの街に逃げ出してしまいます。
メルビルは、ローマの街で人々と触れ合いながら、
人生で大切なものや、法王の存在意義を見つめなおしていきます・・・。



少なくとも私が映画に求めるのは、非日常と心の安息、そして爽快感。
まあ、重いメッセージ性のある作品も見ますが、
基本的にはエンタテイメントなのかな?
そんな私は、そもそもはじめから勘違いをしていたのかもしれません。
今作はもう少し軽くて、ありきたりな結末なのだろうと思っていました。
それで十分と思っていたのです。
そんなところで、期待と現実とのギャップが開きすぎました。


結局この作品のテーマは何だったのか。
神聖であるべきローマ法王も、一介の人間である・・・、と。
そのへんはおそらく、私はキリスト教徒ではないのでピンと来ないのかも知れません。
わざわざ言われなくても当たり前と思っている。
でも多分、キリスト教徒の認識はもっと崇高なものなのでしょうね。
・・・かな?
ただ、人は周りの期待に応えるために何かをなすのではなく、
自分の欲求に従ってこそ、何かをなすことができるのではないかと、そういうふうにも思えます。
そういえば、メダルを期待されたオリンピック選手が、思うような結果を出せなかったときに、
「ご期待に添えなくて、申し訳ありません」
というようなコメントをよく聞きます。
けれど、どうもそれは違うのではないかと、私は思うのです。
周りの人のためにこれまで頑張ってきたわけではない。
やはり自分のために頑張ったはずなので、
何も遠慮なく自分を主体とした気持ちを話せばいいのに、と思います。
悔しい。
自分が不甲斐ない。
早く帰って布団かぶって寝て忘れてしまいたい。(←私が何か失敗したときはこんなふうに思います。)


自分に正直になろう。
どうしても無理だと思うならやめたっていい。
まあ、たしかに、何が何でも頑張れ、負けるな、イケイケドンドン。
ともすると世の中の風潮はそんなふうだから・・・
そうでなくてもアリ。
そういう考えも大事ですね。
と、そういうお話だったことにしておきましょう。



     ↑
ところでこの精神科医の役が監督のナンニ・モレッティ氏なのでした。

ローマ法王の休日 [DVD]
ミシェル・ピッコリ,イエルジー・スチュエル,レナート・スカルパ,ナンニ・モレッティ,マルゲリータ・ブイ
Happinet(SB)(D)


「ローマ法王の休日」
2011年/イタリア・フランス/104分
監督・脚本:ナンニ・モレッティ
出演:ミシェル・ピッコリ、ナンニ・モレッティ、イエルジー・スチュエル、レナード・スカルパ、マルゲリータ・ブイ