映画と本の『たんぽぽ館』

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星の旅人たち

2012年08月13日 | 映画(は行)
癒しの道



                  * * * * * * * * * 


以前大好きだった「サン・ジャックへの道」と同じ道をたどるこの作品、楽しみにしていました。


アメリカ人、眼科医のトムは、フランスの警察から
一人息子ダニエルがサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅の途中で、
事故死したとの知らせを受けます。
呆然として現地に赴くトム。
妻が亡くなって以来、息子とは疎遠になっており、
息子がなぜこんなところを旅しようと思ったのかも見当がつかない。
彼はふと思いついて息子が残したバックパックを背負い、
息子の遺灰を持って、息子が辿ろうとした旅をなぞっていきます。



今作はフランスとスペインの国境近く、すぐピレネー山脈に入る町からの出発で、
聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまではおよそ800㎞。
1日30㎞歩くとしても約一ヶ月。
60を過ぎたあなたなら2ヶ月くらいかかると、トムは現地の警官に言われていました。
ちなみに「サン・ジャックへの道」も同じ道ですが、
「サン・ジャック」という言い方はフランス語。
「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」がスペイン語。
この道は世界遺産に認定されていてとても人気があり、
映画でもかなり行き交う人は多かったですが、
近年特にこの道をたどる人は多くなっていて年間10万人くらいとか。
山間の小道や、なだらかな丘の連なる田園風景の道、
古い町並み、
毎日テクテク、テクテクひたすら歩む。
憧れずにはいられません。



さて、みな同じ道を行くわけですから、自然と顔なじみの人ができてきます。
トムは行きずりの3人と親しくなり、
4人チームで歩くようになってきます。

気のよさそうなオランダ人、ヨスト。
彼はメタボのお腹を気にして、ダイエットのために歩くのだと言っているのですが、
誰よりも美味しいものに目がなくて、どう見ても痩せそうにありません。

やや気むずかしげなサラは、カナダ人で、
禁煙のため旅をしているというのですが、こちらも毎日限りなくスパスパ・・・。
本気で禁煙したがっているようにも思えません。

作家のジャックはアイルランド人。
スランプに陥っており、この旅で何かを得ようと思っているのです。


寡黙なトムは、はじめのうちはいつも不機嫌そうな顔をして、風景も見ずに黙々と歩いくだけ。
ただ時折息子の遺灰を取り出して、道端に撒いているのです。
けれど長いこの旅の間に次第に心もほぐれ、
この道を息子ダニエルと共に歩んでいるような気がしてきます。



この道は、癒しの道。
悲しみも、苦しみも、ただひたすら歩くことで昇華していくかのようです。



たどり着いたサンティアゴの大聖堂も荘厳ですばらしいのですが、
トムはそこからまた更に歩いてスペインの最先端の岬、フィニステレヘ向かいます。
思いの外荒々しいその海の光景に、また心を奪われてみたり・・・。
この旅で神の祝福を受けたけれども、
でも明日から始まる人生は、やっぱり荒波の中だと、
そういわれたような気もしもします。
う~ん、素晴らしい作品でした。



ちなみに今作の監督、エミリオ・エステベスが
亡くなったダニエル役で時折登場します。
そしてトム役のマーティン・シーンが、監督の実父。
そういうことでも意義のある作品となっています。

こちらも是非どうぞ
サン・ジャックへの道

星の旅人たち [DVD]
エミリオ・エステヴェス,エミリオ・エステヴェス,フリオ・フェルナンデス,デヴィッド・アレクザニアン
アルバトロス


「星の旅人たち」
The Wey

監督・脚本:エミリオ・エステベス
出演:マーティン・シーン、エミリオ・エステベス、デボラ・カーラ・アンガー、ヨリック・バン・バーヘニンゲン、ジェームズ・ネスビット