祝 アカデミー作品賞受賞!!
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ちょうど、アカデミー賞授賞式の前日に見ました。
決まってから見ると、混むのでは・・・?などと思ったもので。
しかしなるほど、これはイケると思いました。
時代は1960年代。
米ソ冷戦下。
この時代は日本では「昭和」として懐かしがられる時代ですが、
それはアメリカでも似たような事情なのでしょう。
郷愁を呼ぶ少しレトロな時代背景がなんとも言えません。
政府の極秘研究所の清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は、
研究所に密かに運び込まれた不思議な生き物を目撃します。
アマゾンで神のように崇拝されていたというその生き物は
担当官ストリックランド(マイケル・シャノン)の指を食いちぎってしまうという凶暴性を見せるのですが、
イライザにはそんなようには思えないのです。
イライザはこっそりその生き物に会いに行くようになります。
言葉の話せないイライザは、時には手話を用いてコミュニケーションをとりますが、
彼とはそもそも言葉など必要ない。
互いにそばにいれば気持ちが通じるようなのでした。
水中でも空気中でも呼吸ができるその生き物。
その生物的謎の解明のために、生体解剖されてしまうことをイライザは知ります。
そして、彼の救出のための計画を立てる・・・。
その生き物とはつまりは半魚人とでも言うべきもの。
これだけでなんだかB級作品のように思えるのですが、
見るうちに、この極上のファンタジー感にすっかり魅せられてしまいます。
イライザは、
「彼は私を『欠けたところのあるもの』として見ない」、
と言います。
通常の人から見ればイライザは障害者。
でも、彼から見れはイライザは「完全」。
なるほど、そうしたところが、愛へとつながっていく。
でも、イライザも孤独ではないんですよ。
不遇な画家ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)や
同僚の清掃員ゼルダ(オクタビア・スペンサー)は、
いつも彼女を気遣って、この救出作戦に協力したりもする。
この研究所に忍び込んだロシアのスパイの存在もまた、興味深い。
しかし何と言っても強烈な個性を発揮するのが、ストリックランド。
上昇志向がタダモノではなく、精力も絶倫。
このギラギラした「力」への願望が凄い。
嫌悪を通り越して、唖然として魅入られてしまうような・・・。
けどね、これはこの頃のほとんど多くの人が目指した方向なのだと思う。
というか、今もやはりそうなのでしょうか。
そうして経済が高度成長を遂げていったのも確かでしょう・・・。
そのためにマイノリティーを踏みつけにして。
つまりまあ、本作はそうした時の流れに対しての、ほんの少しの抵抗といえなくもありません。
最後の駐車場のシーンで、これは危ない・・・と思ったのですが、
案の定、彼の新車の高級車はぶつけられてボコボコになってしまいました・・・。
特にクルマ好きではない私にしてもモッタイナイ!と思ってしまった。
さて、この謎の生き物には、ある特別な力があったのです。
それがラストシーンへとつながる。
残酷なシーンも多々あるのですが、全体にたゆたうゆるいファンタジー感とユーモア。
私達も光が揺らめく水中にいざなわれているようでもあります。
本作をB級ホラーでなくファンタジーに仕上げる力、
これぞ監督の力なのだなあ・・と、納得。
所々に見られるテレビの映像で、一つ私にも見覚えがあったのが、喋る馬が主人公の話。
・・・エドという名前だったように思いますが、題名を思い出せない。
子供の頃に見ていました・・・。
<シアターキノにて>
「シェイプ・オブ・ウォーター」
2017年/アメリカ/124分
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、オクタビア・スペンサー
友情度★★★★★
ファンタジック度★★★★☆
満足度★★★★★