思春期の少年少女の葛藤
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公開時、興味はあったのですが、見逃していました。
小学校6年の石田将也のクラスに一人の女の子が転校してきます。
その子・西宮硝子は耳が聞こえず、
筆談で話さなければならなかったり、時々話す言葉も聞き取りにくかったりで、
次第にクラスの中では孤立した存在になっていきます。
そんな硝子にイラついた将也は彼女をいじめはじめ、クラスのみなも同調し始めます。
しかし、硝子の母がイジメに気づき、学校に抗議したことから、
将也はイジメの首謀者とされ、今度は逆に将也がクラスの中で孤立してしまうのです。
彼に加担していた級友も自分は関係ないという顔をして離れていきます。
硝子は再び転校してしまいました。
将也が中学生になっても噂はそのままつきまとい、変わらず彼は孤立。
将也は自分から心を閉ざすようになっていくのです。
そして5年が過ぎ将也は高校生。
やはりクラスの中では孤立し、人の顔を真っ直ぐ見ることも、言葉をきくこともできません。
毎日が苦しく、死ぬことすら考えた・・・。
そんなある日、彼は別の学校へ通う硝子のもとを訪ねてみました。
小学校6年の同級生だった皆の、再会と再びの葛藤の始まりです。
自分が何も考えずに取った行動が、後に大きな間違いであったと気付くこと。
それは大変つらいことです。
自分でも苦しいばかりか、それを周りの人々に常に非難され続けるとしたら・・・、
生きる意欲も失われて当然。
そう考えれば、それでも頑張って学校へ行き続け、
バイトをして母親にかけた迷惑を償おうとする将也はすごい奴!
しかも手話もマスターしてるんですよ。
そういうところがわかるから、
私達はいじめっ子ではあるけれども将也に同調し、応援せずにはいられません
さて本作、障害者の硝子の生き方がメインではないですね。
差別とかイジメは良くないということでもない。
(それはもう、言うまでもないことなので)
むしろ普遍的な思春期の少年少女の葛藤を描いている。
軽い気持ちで将也と一緒になってイジメをしていた友人たちは、
自分たちが将也を見捨ててしまったことにまた傷ついている。
嫌いな子だから親しくはしなかった、と確信的な子。
自分はイジメていないと、無自覚な子。
将也がはじめたことだから仕方ないと責任を逃れようとする子。
いろいろなのだけれど、本当は自分たちも良くないとわかっているのでしょう。
そんな気持ちをずっと抱えたままでいた・・・。
こうした葛藤の解決のために、
この時期の彼らの改めての出会いが必要だったということなのでしょう。
思春期の彼らの苦しいほどに繊細で刹那的な様子が、胸を締め付けます。
アニメはこういう表現もできるものだったんですね・・・
あまりにも切ないので、2度は見たくない作品・・・・。
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映画『聲の形』DVD |
入野自由,早見沙織,悠木碧,小野賢章,金子有希 | |
ポニーキャニオン |
<WOWOW視聴にて>
映画「聲の形」
2016年/日本/129分
監督:山田尚子
原作:大今良時
声:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章、金子有希
青春度★★★★★
せつなさ★★★★★
満足度★★★★.5