お金があっても、愛があっても・・・
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ユアン・マクレガーの長編監督デビュー作。
第二次大戦後、景気が向上し活気づくアメリカ。
手袋製造会社を経営するユダヤ系アメリカ人のシーモア(ユアン・マクレガー)は、
高校時代はスポーツの花形選手。
元ミス・ニュージャージーの美しい女性ドーン(ジェニファー・コネリー)を妻に迎え、
可愛い一人娘が生まれます。
誰もが羨むような明るく笑みに溢れた家庭。
この幸せがいつまでもつづくのだろうと誰もが思いました。
ところが、1960年代。
娘・メリー(ダコタ・ファニング)は思春期を迎え、
ベトナム戦争反対を掲げる過激なグループに加入してしまいます。
そしてメリーが関わったと思われる爆破事件直後から彼女は行方をくらませてしまいます。
シーモアはその後何年も愛する娘を探し続けますが・・・。
幼い頃から吃音であったメリーの、成長した後の両親に対して過度とも思える反抗の仕方がタダモノではありません。
両親からはもちろん、祖父母からも一心に愛を受けて育ったことは間違いないのに、
どうしてこうなってしまったのか・・・というのが、テーマの一つではあります。
メリーがまだ幼い時、彼女の吃音に関して精神科医はこんなふうに言います。
「完璧な両親を持つ子どもは、それだけで大変なストレスを持つものです。
吃音はそのストレスから自分を守ろうとするものかも知れない。」
そのようなことを言われても全く納得できないシーモアとドーンだったのですが。
しかしそれはまるで予言のように、後に彼らに返ってくるのです。
爆破事件では死者も出て、お尋ね者のようになってしまうメリー。
ドーンは心を病み、この結婚自体が誤りだったと言い、
過去を忘れ他の男と情を交わすことでようやく自分を取り戻します。
もはやメリーを探すことには何の関心もありません。
でもシーモアは娘を忘れることなどできない。
もしやり直すとしたら、いったいどの時点からやり直せばいいのか・・・と自問します。
確かに、愛し合って幸せな結婚をした。
可愛い娘を最大に愛した。
自分たちが「完璧」過ぎたと言われても、一体どうすればよかったというのか・・・。
答えのない問いを繰り返すばかりの日々。
お金があっても、愛があっても、こんなことは起こるものですよね・・・。
生きていくことの、家族の、難しさが
大海原のように目の前に横たわっているような気がします。
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アメリカン・バーニング [DVD] |
ユアン・マクレガー,ジェニファー・コネリー,ダコタ・ファニング | |
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント |
<J-COMオンデマンドにて>
「アメリカン・バーニング」
2016年/香港・アメリカ/108分
監督:ユアン・マクレガー
原作:フィリップ・ロス
出演:ユアン・マクレガー、ジェニファー・コネリー、ダコタ・ファニング、ピーター・リーガート、ルパート・エバンス
家族を考える度★★★★★
満足度★★★.5