女性が家庭の役割だけに幸福を見出していられた最後の日々
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アカデミー賞関連作品を、時々見ています。
本作は1983年第56回アカデミー賞作品賞受賞作品。
テキサス州、ヒューストン。
夫が早くに亡くなり、一人娘エマ(デブラ・ウィンガー)と
時には対立しながらも一心同体のようにして過ごしていた母オーロラ(シャーリー・マクレーン)。
エマは結婚して家を出、二人の息子と一人の娘ができます。
暮らす場所は離れていても、毎日のように電話で話をして、
絆はつながったままの母と娘。
ある時、エマの夫の浮気が発覚。
エマは一時実家に戻るのですが、やがて互いの気持ちを確かめあって元の鞘に戻る夫婦。
しかしそんな時、エマの体に癌が見つかるのです・・・。
1983年、つまり昭和58年作品か・・・。
私、本作の母娘のつながりの深さにちょっときみわるいものを感じてしまったのですが、
それはそこまでではなかった自分のやっかみなのかもしれません・・・。
でもまあ、普通母娘は反発するものなのではないか、という気もします。
この母は、娘の結婚に反対し、結婚式にも出なかったりするわけですが、
それは自分の気に入る婿ではないから、というだけで、
その後も娘とのやり取りは頻繁すぎるほどにあるのです。
それで、ちょっと思うことがありました。
作中で、エマがニューヨークの女性たちと話をするシーンがあります。
彼女たちは仕事のために妊娠を中絶したり、子どもを学校の寮に入れたり、離婚したり。
ちょうど女性の社会進出が始まった頃なんですね。
そういう女性たちに対して、エマは嫌悪を覚えるのです。
エマこそは若くして結婚し、家事と育児に生きがいを見出して暮らしてきたわけで・・・。
つまりは、本作、女性が家事や育児、夫との愛だけに生きがいを見出して生きていられた
終焉の時を描いているのです。
もちろん、私はそうした女性の生き方を否定するものではありませんよ。
でも、時代の波が恐ろしいほどのスピードで女性の自立、特に経済的自立を促す方へ変化してしまった。
(逆に昨今は、共働きでなければ経済が成り立たなくなってきた、という事情もあります。)
だからアメリカ映画はこの後、
離婚して子供との面会日を楽しみにする男ばかりが登場するようになる。
言ってみれば、本作は家庭にのみ生きがいを見出す女性への挽歌。
・・・だから、エマが早逝してしまうというのは宿命なんですね・・・。
この家の隣人は、土地柄らしく元宇宙飛行士(ジャック・ニコルソン)、というのがユニークでした。
夫役は、ジェフ・ダニエルズ。
え?
私の知っているジェフ・ダニエルズとはぜんぜん違う!
若い!
<WOWOW視聴にて>
「愛と追憶の日々」
1983年/アメリカ
監督・脚本:ジェームズ・L・ブルックス
原作:ラリー・マクマートリー
出演:デブラ・ウィンガー、シャーリー・マクレーン、ジャック・ニコルソン、ジェフ・ダニエルズ
家庭における女性の幸福度★★★☆☆
(結局夫の愛がすべてで、あまり幸福そうには見えなかった)
満足度★★☆☆☆
(アカデミー賞受賞作品も今となっては・・・)