これほど「ハッピーエンド」という言葉にそぐわない作品も珍しい・・・。
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フランスのカレー。
豪華な邸宅に3世帯で暮らすロラン一家。
家長ジョルジュ(ジャン・ルイ・トランティニャン)85歳は
高齢のため家業を長女アンヌ(イザベル・ユペール)にまかせて引退しています。
アンヌは息子ピエール(フランツ・ロゴスフキ)と事業にあたっていますが、彼は気弱でナイーブ・・・。
あまり経営に向くタイプではありません。
また、アンヌの弟トマ(マチュー・カソビッツ)は医師で、
初めの妻とは離婚し、現在二番目の妻と赤子の息子がいます。
さて、このトマの初めの妻との間にできた娘がエヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン)13歳。
母が倒れて入院してしまったために、このロラン家に来て、一緒に暮らすことになります。
ジョルジュは孫のエヴの様子になにか思うところがあり、
ある時重大な打ち明け話をするのですが・・・。
この一家は互いに無関心で、それぞれに秘密を抱えているようなのです。
中でもこの少女の闇は、本作の冒頭で映し出され、
私達は騙される間も何もなく、危うい気持ちを抱きながら、
ただ成り行きを見守る他ありません。
幼い頃に父に捨てられ、それを恨む母の声を聞き続け、
愛に飢えて死に取り憑かれているエヴ・・・。
そんな自身の映像をなんのためらいもなくSNSに流してしまう・・・。
というより、SNSに乗せるために行動しているのか?
SNSで匿名、顔のない人物になることで、
あるべき熱い感情をも喪失してしまっているかのよう・・・。
何でしょうこれは、心の闇というよりも、空虚。
なるほど、本作の雰囲気が重厚というのではなく、どこか淡々としているというのも、
この空虚感にマッチしているようにも思われます。
この少女が、85歳の老人と同様の空虚を抱えているということに、心は暗澹とせざるを得ません・・・。
ラストがまたショッキング・・・。
やりきれない・・・。
<シアターキノにて>
「ハッピーエンド」
2017年/フランス・ドイツ・オーストリア/107分
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:イザベル・ユペール、ジャン・ルイ・トランティニャン、マチュー・カソビッツ、ファンティーヌ・アルドゥアン、フランツ・ロゴスフキ
やりきれなさ★★★★★
満足度★★★☆☆