映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ダウンサイズ

2018年03月16日 | 映画(た行)

ダウンサイズと人類の未来

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本作、体が小さくなってしまった主人公の身の回りのドタバタコメディかと思っていました。
だから見なくてもいいかと思っていたのですが、
上映のタイミング的にちょうどよかったので・・・。
がしかし、予想とはちょっと違っていました。
もっと社会的事象を描いた作品で、
予想はずれで逆に面白く感じてしまいました!

ノルウェーの科学者により、人間の身体を縮小する方法が発見されました。
この方法だと身長180cmの人なら、およそ13cmになります。
このことで人口増加による環境破壊や食糧問題を解決できるとされ、
縮小を希望する人々が増えていきます。
一度小さくなると二度ともとに戻ることはできません。
さて、ネブラスカ州にそんな縮小された人々が住む街があります。
少しの蓄えでもリッチに暮らすことができるということで、
妻とともに縮小化(ダウンサイズ)を決意したポール(マット・デイモン)。
しかし、土壇場で妻は怖気づいて逃げ出してしまい、
この見知らぬ街で一人寂しく暮らすことになってしまったポール。

街では住民全員が縮小化されていて、家も道路もすべてそのサイズに合わせてあるので、
そこにいる限りは、通常の生活と変わらないのです。
そして、住む人みなが豊かのように思われたのですが・・・
ところがやはりそこも格差社会。
ポールはベトナム人の清掃人・ノク・ランと知り合い、やがて彼女の住むスラムを訪れますが・・・。

ノク・ランはかつて祖国で反政府活動をしており、
その刑罰として強制的に縮小され、箱に入れられて海に流された、という悲惨な経験の持ち主。
ダウンサイズとは、こんな意図で使われてしまうこともある、
おそろしいテクノロジーでもあるわけです。
でもこのノク・ランのおそろしいまでの生活力が、
生きる意欲をなくしたポールをグイグイ引っ張っていきますね。
そして彼らはノルウェーの、ダウンサイズした人々の始めのコロニーを訪れることになります。
そこは言ってみれば平等な共同生活の場。
一種の理想郷となっているのですが・・・。



環境破壊で滅亡しかけている人類。
そんな場所で、人々はどう生き延びようとするのか。
不確実な未来を恐れ、のがれることを考えるよりも、
日々の生活を大事に生きていこうと、そんな考え方もあるということですよね。
私はポールの友人ドゥシャンテ(クリストフ・ワルツ)こそが、
生き延びようと必死になるのでは?と思ったのですが、そうではなかったのです。
こういう意外性もまた面白いんだなあ・・・。
仕事も、結婚も挫折ばかりのポール、
最後の試みはちゃんと成就するのか否や・・・?
面白かったです!


ところで、このようにミニサイズ人のコロニーでは彼らのミニサイズぶりはよくわからなくて、
そうそう、こんなふうに通常サイズの薔薇を抱えてみてはじめてわかるという感じ。

こういうちぐはぐがもっと表されていたら良かったのに、とは思いました。
本作では表されていなかったのですが、
このサイズでは犬や猫、ネズミ、もしかして虫なども
凄い驚異なのじゃないでしょうか。
それを出したら、ぜんぜんテーマの違う物語になってしまいそうですが、
そんなシーンがあっても良かったかも、などと思います。

<ディノスシネマズにて>
「ダウンサイズ」
2017年/アメリカ/135分
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:マット・デイモン、クリステン・ウィグ、クリストフ・ワルツ、ホン・チャウ

社会派物語度★★★★☆
満足度★★★★☆