稲刈りの真っ最中にバインダー(刈り取り機)が壊れた。イネをかき上げる羽が、固定してあるチェーンから外れたのが原因だった。カバーを外し修理をを試みるも、固定する爪が折れてしまっていて歯が立たず、農機屋さんを呼んで応急修理をしてもらい、とりあえずその場をしのいだ。これはすでにブログに書いた。
さて、その後日談。結局、稲刈り前半戦終了の時点で、機械は完全にダウン。部品を取り替えるしかないが、問題はその在庫があるかどうかってことになった。なんせ古い!中古品として我が家に来てからすでに10年以上、その前に20年近くは使い込んでいるはずだから、かれこれ30年前の機械だ。今時の家電製品なら製造中止はもちろん、部品の保存期間だってとっくに過ぎていて、新しい製品に買い代えてください、って言われるだろう。パソコンなんて、普及さえしてなかった。いくら耐久使用が前提の農機だって、部品なんて残していないかもしれない。
連休明けて数日後、部品、ありますよ、当然でしょって、何食わぬ顔で機械屋さんがやってきた。いやぁぁぁ!部品在庫あるんだ。素晴らしい!製造販売から30年以上、それでも顧客のために部品の製造を続けているなんて、なんて気配りのきく会社じゃないか。作ったものはどこまでも、ってわけではないだろうが、面倒を見る、責任をとる、この姿勢、最近の世の中には見られない誠実さ律儀さだ。もの作り屋の鏡だな。貧乏で使い古した機械を大切に使ってる零細農家にとっては、神様仏様の存在だ。
そのメーカーの名前は、クボタ!宣伝しちゃうよ。で、このクボタ、今、そのトラクターがタイで大売れに売れているって記事が載っていた。国内販売用とはがらりと変えて、電子制御関係は一切なし、もちろん、エアコン付きの運転室なんてない。逆に、ギヤや歯車を厚くして耐久性を増し、前部にはタイでの利用事情に応じてローダーを標準装備している。徹底的に現地ニーズに寄り添い、現地の経済状況を配慮してタイ仕様の機械を作った。安くて使いやすく丈夫!これが馬鹿当たりしているってことだった。
もちろん、メーカーは売れるものを作りたいから、現地仕様で勝負したんだろうけど、そればかりじゃないって感じる。売らんかなの姿勢ばかりではなく、買ってくれた人に喜んで末永く使ってもらいたい、そんな技術者マインドが支えになっているんじゃないだろうか。それは、30年以上経ち、すでに型番落ちどころか、そんな機械そのものが時代遅れになっている製品についても、いつあるかわからぬ要望に備えて部品を作り在庫して待っている姿に通じるものだと思う。
使い方の8割以上が実際の使用の際には使われない、新製品の数々。壊れれば買い換えるしかない精密設計。次から次と付け加えられる新機能。そんなもん、いるもんか、とまでは言わないが、使って安心!丈夫で長持ち!て品物が、機械の分野でも大切にしてくれ!とは思うよな。で、それは使う側の、つまりは人間の生き方、暮らし方が問われていることでもあるんだって思うんだよ。