なに今さら10年近く前の映画の話ししてんだよ、って呆れらるよな。でも、何と言われようと、書いちまうぜ。インド映画『きっと、うまくいく』原題は「3idiots」3馬鹿だ。こんな超名作があったなんて全然知らなかった。まっ、ほとんど映画なんて見ないんだから、当ったり前だけど。Amazonのプライムビデオで見た。
金曜夜はZUMBAの日、帰ってくるのは9時過ぎ、とても仕事だとか勉強だとかの気力ないから、金曜夜はビデオの日ってこと。先週は民放で放映した『ミニオン』の録画を見た。さぁて、今日は何にすっかなぁ?たまにはAmazonプライムか、で、なに見る?ラインナップをスクロールしてたら、おっおっ!満点五つ星、しかも評価者なんと290人!こりゃなんじゃ?!『きっと、うまくいく』へぇぇぇ、そうかい、見れば、きっとうまくいく、だな、よしっ、これだ今夜は。視聴期限が9月23日までってことだし。
いやぁぁ、楽しめた!笑ったし、泣いた!途中休憩が入る2時間50分の大作、椅子の上に正座しながら講義を受けるように見通してしまった。ストーリーは、インドの1流工科大学、寮で同室となった3人が、その一人ランチャルにかき回され引きずりまわされて、おバカだけど痛快な学生生活を送るって話だ。テーマは親の過大な要求を振り切っていかに自分らしく生きるか、ってことで、当時のインドの社会問題、教育の加熱とか、若者の自殺なんかが下敷きになっているらしい。と、一応、概略は触れておくが、そんなもんは、映画を直に見てもらった方が良いにきまってる。
ここは、何に楽しめたのか?この作品から何を学んだのか?ってことだよ。
いろいろある、ほんと、いろいろ。突拍子もないエピソードの連打!腹を空かした3馬鹿が学長の娘の結婚式に潜り込む、とか、好きになった女の部屋に酒の勢いを刈りて忍び込む、とか、花嫁の略奪、なんてのは、まぁ、よくあるお話し。その結婚した娘の急な出産を男子大学生たちが、Skypeで女医、妊婦の妹だ、の指示を受けながら、やりきってしまう、しかも、豪雨で停電の中、車のバッテリーをつないで電源を確保し、掃除機を胎児の吸引器に仕立て変えて、苦心惨憺成功してしまう、とか、成績抜群、世間の常識にとらわれぬ主人公が、実は、地方の名家のお坊ちゃまの替え玉だったとか、と、なると、これはもう、作家の想像力の果ての無さにびっくりこん!だ。そんな、突拍子のないエピソードが、疾走するバイクのように次々と現れるんだからたまらない。
しかも、単にお話しとして面白いってだけじゃない。競争第一主義に凝り固まった学長とのせめぎあい、その学長の変わり者ぶり、例えば毎日7分半、クラシックを聴きながら髭をそらせるとか、気に入らない学生には自ら落第させるための試験問題を作るとか、危篤に陥った貧しい友人の父親を背中に背負ってバイクで病院に運ぶとか、お金亡者の娘の許嫁をへこます仕掛けとか、痛快無比ってやつだ。
笑いばっかじゃない。卒業研究の提出期限に間に合わなかった学生の代わりに主人公が撮影機能付きドローンを完成させ、驚かそうと窓の外に飛ばしてみたら、中で首を吊っている姿が映し出されたりとか、退学を迫られて飛び降り自殺した瀕死の友人を、彼の願う嘘を必死で語りかけて、ついには蘇生させてしまうとか。笑いつつも思わず涙を誘われるシーンも随所にある。いやぁ、映画の凄いシーン思い出してるともう切りがない。でも、そんなこたぁ、見てもらった方がいいんだ。
ここで、書いておきたいことは、いくらとんでもない、突き抜けた話しやシーンでも、上手につなげられると、そんなの嘘だろ、とか、あり得ねぇ、とか、子供騙し、とか、さっぱり感じないってことなんだ。ちょっとでも引いて見直してみりゃ、めちゃめちゃ嘘八百の荒唐無稽の連続なんだけど、それで白けるなんて全然ない。お話しの達人技ってことだ。もちろん、役者もめちゃめちゃいい。役年齢よりはるかに高齢な役者、主人公は実年齢44歳、友人二人も30代、を使ったことも深みを増している。あっ、音楽も良かった。もちろん、お定まりの集団ダンスも最高。
それと随所に伏線が引かれていて、それが巧みに回収されている点も、とても知的で見るものを納得させてくれている。タイトルの「きっと、うまくいく」これは原語の“Aal Izz Well”(アール・イーズ・ウェル)の邦訳で、この言葉があちこちで効果的に使われていたし、学長から授けられる宇宙に行ったボールペンも、ゲス男の許嫁をとっちめる時計エピソードも、ちびと呼ばれる寮の使い走りの少年も、女医の娘が乗り回すバイクも、もう出てくる品々、言葉、すべて後々につながっている。東京の地下鉄並みに複雑に張り巡らされて伏線、その見事さに、いいように引きずり回される心地よさ。
ラストシーンのバカバカしさ!とんでもないご都合主義のつじつま合わせだって、次つから次と心地よくワクワクと騙し続けられた後だと、許す!それ、あり得ないけど、あり!って叫んでしまうもの。
これが、物語の力!ってもんなんだ。人は騙されるのを待っている。昔の歌謡曲じゃないが、騙し通して欲しいのよ、だ。奇想天外のエピソード、それを面白く見せるギャグや仕掛け、そして、ありきたりでも心打つシーン、人が映画や芝居に求めているものはこれなんだ、って思った。
見終わってみれば、夜中の1時!おいおい、明後日ハーフマラソンなんだぜ、そんな夜更かししていいのかよ、なんてまるで思いもしなかった。満足、充実の週末の夜。